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7年前、僕らは名誉オークだった  作者: ▲■▲
第2.0章:ハッピーエンドにさよなら
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ゴミ漁り



■title:<繊一号>ネウロン旅団本部・懲罰房にて

■from:死にたがりのラート


「面会だ」


「…………?」


 懲罰房の看守の声を聞き、顔を上げる。


 看守が去って行き、それと入れ替わりに来た奴が「よう」と言ってきた。


「レンズ。それにバレットまで……」


「何とか生きてるみたいだな」


「ラート軍曹、お怪我の方は大丈夫ですか?」


「俺は大丈夫なんだが……」


 警備兵に逆らったからボコボコにされたが、死ぬほどじゃない。


 少し、手足の動きが鈍いが痛みはない。瀕死でも痛くないのが俺達(オーク)だが。


 それより、レンズ達がここに来たって事は――。


「第8に何か動きが――って、臭っ! お前ら、なんか生ゴミ臭いぞ」


「うるせえなぁ~……! んなことより、外の情報を教えてやる」


 レンズは「大した情報は掴めてないが――」と言いつつ、話し始めた。


 俺達が聞いた銃声は技術少尉が発砲したもの。ヴィオラが撃たれたが、命に別状はなく、ちゃんと医務室に運ばれたということ。


「久常中佐が助けたらしい。パイプが人づてに聞いた話によると」


「何で、中佐が……?」


「そこまではわからねえ。まあ、技術少尉が調子に乗ってたから躾けたんじゃね? 中佐は別に特別行動兵に恨みとか無いはずだし……」


「いや、逆恨みしているかもしれない」


 俺達が第8と出会った事件。


 ニイヤドでの一件。


 アレは久常中佐が護衛をケチった落ち度のはずだが、中佐はあれを「巫術師達が何かした所為だ」として、ウチの隊長に証拠集めを命じていた。


 第8が何か企んでいないか調べるよう言っていたらしい。


 実際は何も無かった。それどころか久常中佐も更迭されなかった。


「逆恨み云々はともかく……中佐はマジで巫術師部隊を作り直すつもりらしい」


 第8以外にも実験部隊が集められ、繊一号に集められている。


 繊一号の基地ではなく、<曙>艦内に巫術師を連れ込んでいる。


 そこまでは俺も聞いていたが――。


「中佐、大抵は基地の執務室にいるらしいが……最近は<曙>艦内ばっかりいるんだとよ。噂では、そこで巫術師達の様子を見て回っているんだとか」


「巫術師の新しい部隊、<曙>を中心に運用するつもりなのか?」


「わからん。実際、曙にいくつか兵器を運び込んでいるらしいが……」


「らしいが……何だよ」


「そもそも、部隊として機能するか怪しい状況みたいです……」


 黙り込んだレンズに代わり、バレットが言葉を継いでくれた。


 ただ、そのバレットも顔色が悪い。


「集められた巫術師、殆どが負傷しているようです」


「なんでだよ」


「第8はともかく、他は相当無茶をさせられていたみたいで――」


 ヤドリギのある第8と違い、他の実験部隊は流体甲冑で戦っていた。


 あんなのでタルタリカ相手に戦っていたら、負傷者どころか死者が出てもおかしくない。曙艦内には相当な数の負傷者が運び込まれているらしい。


 バレットはその負傷者の噂を教えてくれた。


 鎮痛剤の打ち過ぎで、日常生活に支障が出ている巫術師。


 骨折ならまだいい方で、手足を失った巫術師もいるらしい。


「手足を失っても、『流体甲冑使う分には支障無し』とされて戦場に駆り出された子もいたみたいです……」


「そ……そんなの、機械の部品扱いじゃねえか!」


 人間扱いじゃない。


 アル達から明星隊にいた時の話は少し聞いていた。


 明星隊でもろくでもない目にあったと聞いていた。ただ、余所の部隊は第8以上に酷い状態らしい。大怪我を負っても戦場に投入され続けていたらしい。


 ネウロンは、余所ほど逼迫した戦場じゃない。


 魔物事件の生き残りは可能な限り保護して、今はタルタリカからネウロンの大地を奪還中。奪還を急いだところで……生存者が増えるわけでもない。


 ネウロン解放戦線が暴れた事で、ネウロン旅団の戦力は大幅に減ったが……それでも守りに徹していれば問題なかったはず。実際、俺達が休暇に行っている間は都市が陥落していないらしい。


「何で、巫術師がそこまで酷使されなきゃいけないんだよ……!」


「ネウロンの戦いは、<赤の雷光(テロリスト)>と巫術師(ドルイド)が発端となって始まった。魔物が生まれたのがそもそもの始まり。巫術師は危険な存在だから……って話だろ?」


 レンズが口を開く。


 上から散々聞かされてきた巫術師の事情。


 何の説明にもなっていない罪状。


「第8が何とか無事なのは、アイツら自身が頑張ったのと……ラート、お前が奔走した結果でもあるんだろう。けど、他の奴らはそうじゃない」


「納得できねえよ……」


「オレもバレットも、お前と同じ気持ちだ。……久常中佐だろうが、余所の部隊だろうが、他の奴らにガキ共を預けてたら大変な事になる」


 このままじゃ皆が危ない。


 フェルグスは真っ先に食ってかかって殴られているかもしれない。


 アルも勇気を振り絞って頑張っているだろうが、殴られるかも……。


 グローニャはいっぱい泣いているだろう。


 ロッカも黙ってないだろうし、何されるかわかったもんじゃない。


 ……そんな子供達を守るためにヴィオラも無理をしているだろう。


 実際、もうヴィオラが撃たれているらしい。最悪の状況だ。


「くそッ……! なんでこんな事に……!」


「落ち着け。今のところはまだ、悲観しなくてもいいかもしれない」


「ヴィオラが撃たれてんだぞ!?」


 看守の咳払いが聞こえる。


 それを聞き、レンズが声を潜めながら話しかけてきた。


「集められた巫術師は、治療が優先されているみたいだ……。軍医達が曙艦内に集められて、ずっと治療してんだってさ……」


「でも、それは久常中佐の指示だろ?」


「ああ。それでも、何もしてもらってないよりマシだろ」


「久常中佐は巫術師の惨状を見かねて、助けようとしているのかもしれませんよ」


 バレットがそう言ったが、とてもそうは思えない。


 あの人が善意でそんな事をするだろうか?


 レンズも同じ気持ちらしく、呆れ顔を浮かべながら「オレらを繊三号に特攻させた中佐だぞ。んなこと考えるかよ」と言った。


「ですが治療の指示を出しているのは中佐です。技術少尉を罰してヴァイオレットを守ったのも久常中佐です。……何か考えがあるのでは?」


「中佐がぁ……?」


 わからない。


 自分の目で確かめたい。


「何とか……第8の皆と面会できないか?」


「無理だった。アイツらが他の巫術師共々、曙艦内にいるのは間違いない。けど、オレらの権限じゃ艦内への立ち入りは……さすがに」


「ゴミを漁るのが精一杯でした」


「だから臭かったのか。……いや、ゴミ漁ってどうすんだよ?」


「2つ、収穫があった」


 1つは「ろくでもないこと」だったが、もう1つは朗報と言っていいらしい。


 ゴミ捨て場には大量の医療廃棄物があった。曙艦内でキチンとした治療が行われている証拠だ、とレンズは言った。


 それだけではとても安心できない。あの技術少尉と久常中佐が絡んでいる事や、ヴィオラが撃たれた事を考えると……楽観できない。


 久常中佐達は、本当に本格的な巫術師部隊を作る気なのか?


 今更? 久常中佐だって、実験部隊を疑ったり、雑な扱いしてただろ。


 レンズ達から情報を得ても、ワケがわからない。


 混乱しつつ考えていると、看守が面会終了を告げてきた。時間切れらしい。


「とにかく、今は大人しくしとけ。アイツらは大丈夫――」


 レンズとバレットの携帯端末が着信を知らせてきた。


 副長から緊急招集がかかったらしい。


「何か事件があったのか?」


繊一号(ここ)に、タルタリカの大群が近づいてるってよ」


「はあ……!?」


「オレらも出撃命令が出てる。ちと行ってくるわ」


 そう言い、レンズ達は去って行った。


 タルタリカの大群まで来るなんて。……状況の変化についていけない。


 俺の知らないところで、何かとんでもない事が起きてるんじゃ……?





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