歩く死体達
■title:港湾都市<黒水>の交国軍保養所にて
■from:歩く死体・ヴァイオレット
「ロイさんもマウさんも、本当は無事なのかもしれない」
手紙を書いているのは別人。あるいは人ですらない。
けど、ひょっとしたら手紙のやりとりさせてくれないだけで、まだ生きているかもしれない。どこかに捕まっているだけの可能性も……まだある、はず。
遺体はまだ見つかっていない。
2人が生きている可能性は「低い」だけで、ゼロじゃないはず……。
アル君が観たものを踏まえて考えると、かなり厳しいけど……。
「普通に逃げると、皆の家族が危うくなるかもしれない」
「もしも母ちゃん達が生きていたとしたら……オレらが逃げたら人質にされる?」
「そう」
もしも無事だったとしても、人質として利用される。
大人しく投降するよう言いつつ、皆の家族を殺そうとするかもしれない。
それで私達を脅し、戻ってくるよう言うかもしれない。
「それは避けたい。だから、表向き死んだ事にして逃げよう」
私達の死を偽装する。
交国軍に私達が「死んだ」と誤認させる。その隙に逃げて、どこかに潜伏する。落ち着いたら戻ってきて、なんとか……所在も生死も不明の家族を探す。
「このまま交国軍で戦っていても、いいように使われるだけ。それどころかもっと酷い状況になるかもしれない。皆が散り散りになる可能性だってある」
「けど、どうやって死を偽装して――」
口を開いたラートさんが、ハッとした様子で口を手で覆った。
あたふたしながら「悪い。交国軍人の俺が聞かない方がいいよな……?」と言ってきたけど、首を横に振って「大丈夫です」と返す。
「ラートさん相手に隠すなら、ここまでの事は言いません。心配させたくないですし……。ただ、黙っててもらうだけで大丈夫です」
正規兵だろうと特別行動兵だろうと、脱走は重罪。
その場で銃殺になってもおかしくない。
そんな危ない橋を、立場のあるラートさんに渡ってもらうのは――。
「バカ言え。ここまで来たらもう、最後まで付き合うよ」
「ダメです。ラートさんには交国で暮らすご家族がいるんですから……」
私がそう言うと、ラートさんは少し迷う様子を見せたけど――。
「俺はお前らを守る。そう誓った。家族のことは大丈夫だよっ。要は……バレなきゃいいんだろ? お前らの死を偽装するなら、俺が関わっていることも上手く偽装すればいいだけの話だ」
「ですが――」
「ここまで来て、除け者は無しだぜ」
ラートさんはニッと笑って、「アルもフェルグスもヴィオラのことも、グローニャとロッカの事も守ってみせる」と言ってくれた。
「俺が脱走についていくのは無理だが……手伝いは出来る」
「うーん……」
「交国に残る人間に、協力者がいた方が都合が良いだろ? 死体を上手く偽装するとか、後処理とか……色々とやるやつが必要だ」
「それは、そうですが……」
「それに、俺は今後もネウロン旅団で戦う予定だ。ネウロンで戦っていたら、お前らの家族に関する情報が掴めるかもしれない」
ラートさんは「任せてくれ」と言った。
ラートさん自身の家族がいる以上、交国から離れられない。
それに、ラートさんは交国軍で戦う事を望んでいる。
「交国は確かに、どこかが腐ってる。けど、それでも対プレーローマ戦線を支えている人類国家の1つなんだ。俺は家族やお前らを守るために、今後も人類のために戦い続けたい」
「「…………」」
「お前らは逃げろ。でも、俺は今後も交国軍で戦う」
フェルグス君と顔を見合わせた後、ラートさんに遠慮気味に問う。
人類のために戦っているラートさん達を置いて逃げるのは、裏切り行為なのでは――と聞いたけど、ラートさんは笑って「そんなことない」と言った。
「俺とお前らじゃ立場が違う。俺は全て納得して軍に入った。けど、お前らは交国の都合で戦わされているだけだろ?」
「それは……そうですけど……」
子供達は巫術師というだけで罪人扱い。
特別行動兵にされ、無理矢理戦わされている。
星屑隊の皆さんと出会えた事で、かなり環境が改善されたけど……皆さんとずっと一緒にいられるとは限らない。
子供達の命は、ずっと交国の手のひらの上に置かれている。
「交国がお前らを騙しているのは確かなんだ。先に裏切ったのは交国だ。お前らは何も負い目を感じる必要はない」
「お前は大丈夫なのかよ……」
フェルグス君が少し表情を歪め、ラートさんに問いかけた。
「お前、本当に交国で戦い続けてて大丈夫なのか……? ネウロン旅団のナントカ中佐みたいなクソ指揮官がいて、無茶な命令で戦わされてるお前らも……オレらみたいに危ないじゃん」
「いやぁ……さすがに久常中佐みたいなのは例外中の例外だよ。むしろ、何であの人が中佐やれてるのかよくわからんというか……」
ラートさんは苦笑し、「ともかく、俺は大丈夫だ」と言った。
「それで、俺は何をすればいい? どうやって死を偽装して逃げて、交国軍の監視下から逃れるんだ? 交国領に潜伏するのは難しいぞ」
「それは、そのぅ……まだ考え中でして……」
脱走しないと、交国の無茶振りでいつ死んでもおかしくない。
単に脱走すると――もしも家族が生きていた場合――家族が危なくなる。
だから、逃げるなら死を偽装する。
そしたら家族を守れる……はず。
死を偽装した方が私達も追っ手を差し向けられずに済む。
身近な追っ手は、星屑隊。
星屑隊の皆さんは優しい人達だけど、それでも私達の脱走を知ったら連れ戻さないといけないはず。……ラートさん達と戦いたくない。
グローニャちゃんが懐いているレンズ軍曹さんと戦うのも、ダメ。
ロッカ君が懐いているバレットさんに銃を向けるなんて、絶対にダメ。
ラートさんをこれ以上、苦しい立場に置くなんて……出来ない。私達と星屑隊の間で板挟みになって、苦しめるのは絶対にダメ。
「交国軍から逃げた後の事も……考え中です。交国と敵対関係にある国家に逃げたら……交国の追跡の目も完全に躱せると思うんですが……」
「交国と敵対関係…………。竜国とかか」
ラートさんは交国が戦争中の人類国家の名を口にした。
人類国家といっても、竜国は「竜」が治める国らしいけど――。
「いや、さすがに竜国に行くのは自殺行為だ。あそこは……多分、数年のうちに滅びる。交国どころか人類連盟と敵対して戦争中だからな……」
「でも、竜国以外にも交国の敵はいますよね?」
「残念ながら、わりといる」
逃げる先は確かにある。
問題はどうやって逃げるか、ということ。
「まだ決まっていないとこは、今後考えていくしかねえ。こっそりとな……!」
ラートさんは周りを気にして、コソコソと声を出した。
周りと言っても、この部屋にいるのは私達だけだけど。
……いや、さっきのことを考えると正しい行動か。
フェルグス君に頼まれた件、ラートさんにも後で説明しておかないと。
「死を偽装する方法を見つける。交国の外に逃げる方法を見つける。その後のことは……まあ、とりあえず逃げた後に考えても遅くないはずだ」
「……はい」
「ある程度の目星は、つけた方がいいかもだけどな」
脱走成功がゴールじゃない。
その後も、子供達の人生は続いていく。
子供達の安全が完全に確保されるまで……頑張らないと。命がけで。
「脱走するなら、戦闘のドサクサに紛れるのがいいと思うんですけど――」
「例えば、タルタリカに食われた事にする……とか?」
私達は休暇を終えたらネウロンに戻る。
そして、再びタルタリカと戦う日々に戻る。
タルタリカは人間や天使の兵士と違って、言葉が通じない。交渉は通じないけど、交国軍もタルタリカに尋問して情報を引き出す事も出来ない。
いつもは怖いタルタリカも、今回は頼りになるはず。
「けど、ネウロンで逃げたら詰むぞ。ネウロンには未だ沢山のタルタリカがウヨウヨしているんだ。装備無しで逃げ続けるのは不可能だ」
「例えば機兵を奪取できても、偵察衛星で発見されちゃいますかね……」
「オレやアルなら混沌機関で機兵が作れるけど、それも見つかるよな……?」
フェルグス君の言葉に「多分ね」と返す。
機兵を作ったところで、逆に見つかりやすくなるはず。
「でも……死を偽装するなら、ネウロンの方がやりやすいはずです」
ネウロンならタルタリカを偽装に使える。
巫術師による機兵運用実験をしているから、子供達は船で待機しているけど……そこは「流体甲冑のテストもしたいので~……」と誤魔化して出撃できるはず。
子供達が死んだ事になったら、星屑隊の皆さんも心配するだろうけど……。
バレットさんやレンズ軍曹さんが……必死に探しに来るかもしれない。子供達が死んだはずないって、そう信じながら……。
それでも、ネウロンなら……逃げやすいはず。
問題は逃げた後。
逃げた後もタルタリカという驚異がウジャウジャいる。
そもそも、逃げて界外にどうやって逃れるか――。
「オレの巫術なら方舟も奪える。テキトーな方舟を盗むのは?」
「方舟がなくなったら、交国も警戒するはず。方舟を追ってきて、私達が死を偽装した事もバレちゃうかも」
「あ、そっか……。混沌の海を爆弾で荒らして、それで死んだ事にするのは?」
「上手くいけば、それもアリだけど――」
「さすがにやめとけ。混沌の海で上手くやるのは、ほぼ不可能だよ」
ラートさんはそう言い、止めてきた。
実際、その言葉は正しい。混沌の海はマッチの火にすら反応し、殺到してくる。爆弾で意図的に海を荒らし、それに紛れて逃げるのは非常に難しい。
方舟があったとしても、荒れた混沌に押しつぶされ、圧壊する可能性がある。素人の私達にそういう偽装は……ハードルが高すぎる。
「ネウロンで逃げて、どっかで方舟作れねえの? タルタリカも交国軍もあんま来ない場所で……隠れて方舟作って、それでコソコソ逃げれば……」
「うーん……」
「ヴィオラ姉なら方舟ぐらい作れるんじゃね?」
「カレー作るのとはワケが違うんだぞ」
フェルグス君の発言を聞いたラートさんが、フェルグス君を肘で軽く突きつつそう言った。呆れ顔でそう言った。
「方舟には混沌機関が必要だ。混沌機関は大半の人類国家が自力で作れないんだ」
「あれ? でもヴィオラ姉って確か……混沌機関イジれるだろ?」
「そりゃあ……あくまで整備知識持ってるだけだろ? 作るのはさすがに――」
「多分、作れます」
「なっ? さすがに作れな――作れるのかよっ……!?」
前は無理だった。
けど、逃げる方法を考えている時……頭の中にジンワリと湧き出してきた。
混沌機関の作り方。それを理解した。
ヤドリギの作り方を知った時と、似た感覚だった。
思い出した……と、言うべきなのかな?
「作成の知識はあります。ですが、設備や材料がありません。設備に関してはアテがありますけど……それは交国軍の管理下にある場所なので……」
「まあ、そうだよなぁ……。作れるだけでかなりスゴいけど」
「ネウロンのどこかに、交国軍すら知らない秘密の地下造船所があって……そこに都合よく混沌機関の材料が無いと無理かな……」
「そっかぁ……」
「いや、でも良い情報が共有できた。フェルグス、その調子で色々言ってくれ」
「んだよっ、オレを慰めてるつもりか~?」
ラートさんとフェルグス君がじゃれるのを見つつ、考える。
秘密の地下造船所。
ひょっとしたら……ある可能性も、あるかもしれない。
ラプラスさんの話だと、ネウロンには魔神がいた。
ネウロンでは<叡智神>と呼ばれる<真白の魔神>がいた。
真白の魔神がネウロンにいた当時、どこかに基地なり造船所を作っていてもおかしくない……はず。ネウロン人より先進的な技術を持っていたはずだし。
ああ、でも……1000年前にネウロン出て行ったんだし……仮に都合のいい施設が隠されていても、もう使えなくなってるよね……?
「…………」
真白の魔神の使徒と思われる存在。
羊飼いなら、何か知っていたのかな……?
あの人は混沌の海で死んじゃったはずだけど……。というか私が殺して……。
「あっ、でも、混沌機関作れても海門はどうするよ?」
「海門の制御装置も作れます」
「お前、マジで何でも作れるな……」
「ただ、そっちも材料の問題が……」
方舟ほどハードルの高いモノじゃないけど、やっぱり材料問題がある。
工具や設備は、どこかで混沌機関を確保できたら……流体装甲を使って代用する事もできる。巫術師の皆の力を借りたら、そこはクリアできるはず。
でも、流体装甲じゃ全ての代用はできない。
流体装甲だけじゃ全ては解決できない。
「死を偽装したうえで、密航した方がまだ現実的かな……? ただ、密航するのも簡単ではありませんし……」
「巫術師が、途中で方舟奪うのはダメなの?」
「ダメではないけど……。奪った時点で事件になっちゃうから、交国が黙ってないと思う。追跡が怖いかな~……」
正体不明のまま逃げ切れればいいけど、強奪事件を起こす時点でリスクがある。
ひっそりこっそり逃げるのがベスト。
言うは易しだけどね……。
脱走は重大な罪。大きな事である以上……多少のリスクは、覚悟する必要がある。けど、子供達を危険に晒すのは……。
「……密航なら、いっそのこと隊長達に相談して……」
「さ、さすがに手伝ってくれないでしょう……」
隊長さん達は何だかんだで優しいけど、脱走を手伝ってくれるとは思えない。
バレたら脱走の協力者として裁かれる。隊長さん達には何の利益もない。
「ただなぁ……俺らがコソコソしているのは隊長達にもバレているんだ。これからどうすればいいかの相談ぐらいは……してみても……」
「オレも、相談いいと思う。副長とかに言ったらオレ達叱られるだろうけど……それでも『じゃあ、どうすればいいか?』の助言くれるかもだぜ?」
「私は反対かな……」
脱走の相談した時点で、さらに警戒されると思う。
本当にどうしようもない時は相談するのもアリ……かもしれない。
あくまで私からの相談。責任は私だけが取る形で。
「……ネウロンへの帰路で逃げるのは、どうでしょうか?」
「うーん……。まあそれならネウロンからの界外脱出の手間は省けるな」
「タルタリカを使った死の偽装は出来ませんが、混沌の海は利用できるかと」
海難事故で行方不明になれば、交国軍も私達を探さないはず。
混沌の海での捜索活動はかなり難しいから、上手く行方をくらませれば追跡もされない。……と、思う。
「混沌の海で意図的に事故を起こして、その隙に乗じて行方不明になるんです」
「いや、だからそりゃ危ないって……」
ラートさんが心配そうな顔でそう言った。
「事故起こすのは不可能じゃない。例えば、海で爆発物を弾けさせれば近海が一気に荒れるからな。けど、それやったら、お前らも逃げるの難しいだろ」
「うーん……それはそうですけど……」
「星屑隊だって壊滅しちゃうぜ。混沌の海に押しつぶされてさ」
ラートさんは軽く右手を上げつつ、「それはさすがに勘弁な」と言った。
私も星屑隊の皆さんに迷惑かけたくない。
3人でその後も提案しあったけど、妙案は出なかった。
ただ、「脱走」の方向で考えていく事になった。
……他に手はない。交国と戦っても勝てっこないんだから。
交国に従順になったところで、報われるとも思えない。
となると、もう脱走しか……。
「4人でしっかり考えよう。大丈夫、これからはフェルグスにも頼れるしな」
ラートさんが笑みを浮かべ、前向きな事を言ってくれた。
その通りですね、と言って一緒に笑う。
フェルグス君も「任せろ」と言って、大げさに胸を張ってくれた。
「けど、ラートはいつ下りてもいいからな。もちろん、ヴィオラ姉も」
胸を張っていたフェルグス君が、私達を交互に見つめた。
「ラートは交国に家族がいるし、ヴィオラ姉は……そもそも巫術師じゃない」
「「…………」」
「2人共、オレ達のために危ない橋を渡る必要ないんだ。だから――」
「嫌がられても手伝うぜ、オレは」
「私も。ついていくよ、どこまでも」
私はフェルグス君とロイさん、マウさんに命を救われた。
そして、ロイさん達に頼まれた。フェルグス君達の事を。
……どうせ私は行く当てもないしね。
「じゃあ、まだ頼らせてもらうけど……」
フェルグス君は困り顔を浮かべつつ、言葉を続けた。
「ロッカとグローニャも一緒に逃げるって事でいいんだよな?」
「私はそのつもり。2人も、交国にいたらきっと危ない」
2人の家族に関しては、まだ安否を確かめる材料がない。
手紙は出せるけど、フェルグス君達みたいに偽装されている可能性もある。
特別行動兵として戦わされている以上、とりあえずは逃がした方がいいと思う。
私達の死さえ偽装すれば……家族も……守れるはず。
「ただ、とりあえず……この話は私達だけに留めた方がいいかな? グローニャちゃんはうっかり言っちゃいそうだし。ロッカ君も不必要に心配させたくない」
「そっか。まあ、2人ならわかってくれると思うけどなー……」
「グローニャは『レンズちゃん離れたくないっ』って言うかもだけどな」
「えっ、あの2人、そこまで仲良しになってたのか……?」
とりあえずは私達だけの話に留める。
もし、バレた時も……ロッカ君とグローニャちゃんは責任を問われないように。
相談するのは、もうちょっと目処が立ってからかな。
「2人がいてくれて良かった。……兄弟だけじゃ、危なかった」
フェルグス君は再び私達の顔を見てきた。そして微笑んだ。
「2人がいてくれるから、『まだ大丈夫かも』って信じられる」
「フェルグス君……」
「父ちゃんと母ちゃんが死んでいたとしても……希望は、まだある」
フェルグス君がベッドに視線を移した。
そこで眠っている希望を、優しい目で見つめてる。
「…………」
この子達を守りたい。
どんな手を使ってでも……私の命を使ってでも……守らなきゃ。
■title:港湾都市<黒水>の交国軍保養所にて
■from:弟が大好きなフェルグス
アルはずっと、1人で頑張ってきた。
途中でラートとヴィオラ姉も助けてくれたけど……1人で抱え込んでいた。
きっとつらかったはずだ。
生き残ったことを負い目に思って、苦しんでいたはずだ。
それなのに、今も生きてくれている。今も戦っている。
強い奴だ。強くなったよ、アルは。
昔は……ずっと、オレの背中に隠れていたのに……。
いつの間にか、自分だけで歩き始めたんだな。
もうオレがいなくなっても大丈夫なぐらい……強くなったんだなぁ。
まだ不安でいっぱいだけど、少しだけ安心した。
オレだけ地獄に行ったとしても、アルはきっと大丈夫だ。
1人でも戦えるし、1人じゃない。
ヴィオラ姉とラートがいる。
ロッカとグローニャもいる。
だからもう、大丈夫。
■title:港湾都市<黒水>の交国軍保養所にて
■from:憲兵
「…………」
部屋にいるのは4人。
ラート、ヴァイオレットさん、フェルグス君、スアルタウ君。
カトー特佐を「師匠」と呼ぶ少年と、ラートが密談している。
ラートも彼らの協力者。
「キミは、そういう男だよな」
残念だよ。
交国軍人としては、とても残念だ。




