覚書:シオン教の謎
【覚書:シオン教の謎】
■執筆者:華麗で可憐な美少女史書官:ラプラス
□基本事項なのに誰も知らない
多くのネウロン人に信仰され、交国によって解体されたシオン教。ネウロンにおけるシオン教の影響力は未だ密かに残り続けています。
そのシオン教ですが、基本的な部分に謎が残っているのです。
その謎とは「シオン」とは何か? です。
シオン教は「叡智神」を――推定<真白の魔神>を神として崇める宗教です。だから「シオン教」ではなく、「叡智神教」とか「叡智教」と名乗るものでしょう。
しかし、シオン教はあくまで「シオン教」です。
この「シオン」とは何なのか私の方でも色々調べてみましたが、明確な答えは出ませんでした。シオン教の信徒も聖職者も知らない謎なのです。
シオン教団内部でも「シオンとは何か」について論じた事があるそうですが、経典から明確な答えを得る事はできませんでした。
最終的に「シオンとはシオン教の『理念』を表現する言葉」という結論が出されたそうです。ただ、そう結論づけるだけの明確な根拠は無いようですね。
当時の聖職者達が自分達の考えに酔い、それっぽい答えにしただけのようです。それはそれで面白いと思いますけどね。
□人名説
一説には「叡智神の真名が『シオン』だから、そこから『シオン教』という名前がつけられた」と言われています。
これもそれっぽく見えますが、叡智神の真名が「シオン」という証拠は一切見つかっていません。
この仮説を推している方の話をまとめると、「だって『シオン教』って名前なんだから、逆に考えれば叡智神の真名だろ」って考えのようです。
X=9だから、「Xは9だろ!」って理屈ですね。いやちょっと違いますか。
明確な根拠が無いことを除けばそれっぽいんですよね。信仰対象の真名を使った方がより一層、信仰している感が出るというか……。
私達の仮説では「叡智神=真白の魔神」なので、「真白の魔神の真名が『シオン』」なんて話は一度も見つかってないんですよねー。
真白の魔神の真名は別にあります。まあ、彼の魔神の性質的にアレを真名と言っていいのかはともかく。
□植物説
シオン教は象徴的な花があります。その花の意匠はシオン教関連の建物によく見受けられ、実際に教団で栽培されていました。
私はその花を「紫苑」だと考え、「これが『シオン』の由来では?」と思いました! まあ実際全然違って赤っ恥かいたのですが。
シオン教関連の各所で見られる花の名は、「菫」だそうです。
カナ言葉だと「ヴァイオレット」ですね。
どこかの誰かさんと同じ名前ですね?
菫の花はシオン教関連でちょくちょく出てくるお花ですが、「そもそも何故、菫がシオン教の象徴的な花になったか?」もわかっていないそうです。
1000年近く前の建物でも菫の意匠が刻まれていたそうです。何者かの意志で推されていたものが、教団全体に広まったのかもしれませんね。
その「何者か」は叡智神、あるいはその関係者……例えば使徒でしょう。
それと、「スミレ」と言えばシオン教で「神を冒涜する偽書」と言われた「とある少女の日記」が存在していました。その日記を書いたのが「スミレ」という少女だったようです。
偶然の一致? どうなんでしょうね? まあ、いまは「シオン」についての話なので、その辺の話は脇に置いておくとしましょう。
□結論:由来不明
シオン教の「シオン」にしても、「菫の花」にしても「何故そう呼ばれているか?」「何故使われているか?」については不明です。
いくつかの推測があっても、確たる根拠があるものは1つもありません。魔物事件や交国の所為でネウロンの文化は失われる一方ですから調べるのも大変です!
でも、当事者に話を聞けばわかるはずなんですよねぇ。
その候補としてウチのエノクもいるのですが、エノクはネウロン関係は硬く口を閉ざしているので教えてくれません。「何でもいいから教えてくださいよ」と言ったら、「さすがにその件までは知らん」と誤魔化されました。
あの顔は心当たりある顔でしたけどねー。




