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7年前、僕らは名誉オークだった  作者: ▲■▲
第2.0章:ハッピーエンドにさよなら
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TIPS:混沌溜について



【TIPS:混沌溜について】

■概要

 多次元世界は多くの世界が存在している。


 基本的に世界と世界の間には、大量の混沌によって「海」が存在している。


 この海を<混沌の海>と言う。


 世界の内側に入れば、混沌の海の影響を受けずに生活できる。ただ、世界の内側でも混沌の海が影響してくる場所もある。


 それが<混沌溜>である。海穴(ホール)と呼ばれる事もある。


 混沌溜は全ての世界にあるわけではないが、「世界の内外を隔てる<世界壁>が薄い場所」「<世界壁>が破損している場所」には高確率で存在する。


 前述した場所では「混沌の海から大量の混沌が漏れ出してくる」という現象が時折、あるいは常時発生している。


 混沌が湧き、溜まる場所ゆえに<混沌溜>と呼ばれている。


 混沌の海の混沌は「高濃度」かつ「大量」に存在しているため、そんなものが界内にしみ出してくる場所は危険地帯である。


 混沌溜の影響で世界が滅ぶ事もあるが、上手く扱えば世界を豊かにする事も出来る。今回はそんな混沌溜の「悪影響」「好影響」について紹介する。



■悪影響:世界を滅ぼす混沌溜

 混沌は扱いが難しいエネルギーである。混沌の海にある高濃度の混沌は特に扱いが難しく、混沌の海でマッチ一本擦ろうものなら、マッチの火に反応して混沌が殺到し、マッチやその周囲を押しつぶすほどの反応を見せる。


 これが恐ろしいからこそ、混沌の海は人の居住に適さない。


 混沌溜は界内ですら、混沌の海と同じ状況に変える危険性がある。


 大規模な混沌溜は大量の混沌を界内に流し込むため、世界の内側が大量の混沌に飲まれてしまった事例もある。そうなるとその世界は事実上、混沌の海の一部と化してしまう。


 高濃度の混沌は太陽光にも強い反応を示すため、その世界の太陽や星々を押しつぶすまで、界内の混沌が荒れ狂う事もある。


 そうなってしまうと界外の混沌の海より一層、人類の生存が困難な場所となる。


 大規模な混沌溜が出来た事が原因で、滅びた世界はいくつもある。そこから逃げ出して流民になる者もいれば、界内で荒れ狂う混沌の海に押しつぶされ、死んでいった者もいる。



■悪影響:魔物発生

 混沌は混沌機関のエネルギーとして使えるだけではなく、流体装甲の材料として「一時的な物質化」も可能となっている。


 それは人工的な混沌のコントロールだが、混沌溜では自然現象として混沌が「物質化」を行う事がある。


 その「自然現象としての物質化」によって<魔物>が生まれる事例がある。


 混沌溜から生まれた魔物達は理から外れた怪物として大暴れする事がある。その対処は一般人では難しく、文明の水準次第では軍隊でも蹴散らされかねない危険な存在だ。


 混沌溜から魔物が頻繁に発生している世界の中には、魔物の群れに滅ぼされた世界もあれば、魔物を狩って何とか人類の文明圏を守っている世界もある。


 後者の世界は「魔物のいる生活」に慣れ、魔物狩り専門の職業が根付いた独特な文明になった事例もある。


 ネウロンも「魔物に脅かされた世界」だが、ネウロンの魔物こと<タルタリカ>は混沌溜から発生したタイプの魔物ではない。


 別の人為的な異常により、発生した魔物である。



■悪影響:侵略を受けやすくなる

 混沌溜があるという事は、<世界壁>が薄いあるいは破損している状況である。だからこそ、混沌の海から混沌が流入してきやすくなっている。


 これはつまり「混沌の海から入りやすい」という事で、これによって「異世界から来た侵略軍が世界内に侵入しやすい」という悪影響に繋がる事もある。


 異世界からの侵略者を強く警戒している国家は混沌溜の周囲に要塞を築き、異世界から来た軍勢に対処しやすい状況を作っている。


 ただ、「混沌の海から入りやすい」という事に関しては悪影響ばかりではなく、好影響になる可能性もある。


 世界に侵入しやすいという事は、「混沌の海に繋がる港としては使いやすい」という事である。


 混沌溜がある場所に港を築いた結果、大規模な海門も開きやすくなり、良港として成長していった場所も少なくない。


 交国本土の黒水も混沌溜を活かし、貿易港として利用され始め、遠くない未来には交国本土一の貿易港として成長する見込みである。



■好影響:エネルギー利用

 混沌溜から混沌が漏れやすいという事は、それを上手く使えば「大量の混沌(エネルギー)を確保しやすくなる」という事である。


 混沌溜から漏れる混沌を混沌機関に吸収させ、それによって発電。傍に大規模工場を作る事で大量のエネルギーを消費し、混沌溜が起こす悪影響を打ち消しつつ、金属製造等に活かす事が出来る。


 製造に大量の電気が必要となるアルミニウムの製造工場が混沌溜の近辺に作られるのは、多次元世界ではよくある事。それ以外の工場も作成され、混沌溜近辺は巨大な工場地帯が築かれる事も少なくない。


 前項で説明した通り、混沌溜がある場所は「港として利用しやすい」ため、混沌溜近辺で作成された金属や工業製品をそのまま混沌の海経由で輸送可能。


 こう聞くと「混沌溜は上手く使えば良いことづくしやんけ!」と思うかもしれないが、その「上手く使う」のが難しい。


 中には混沌溜から湧き出す混沌を扱い損ね、大爆発や大規模な魔物被害に発展させてしまい、一帯が壊滅してしまった事例もある。


 高度な技術を持つ国家・組織ですら、大量の混沌を扱い損ねる事はある。他勢力からの攻撃や工作によって、大事件に発展してしまう事もある。


 交国は混沌溜を上手く使っている方だが、それでも交国本土の黒水は長年に渡って利用しきれないほど、扱いに窮していた。



■混沌溜が出来る原因

 混沌溜が出来る原因はいくつかある。代表例としては「最初から世界壁が薄い」「破壊工作の影響」「戦闘の影響」の3種がある。


 破壊工作というのは主にプレーローマによるものである。


 新暦1年、源の魔神(アイオーン)が死亡した影響でプレーローマは混乱期に突入した。それにより、多次元世界の広範囲を放棄せざるを得なくなった。


 支配している世界を放棄する際、プレーローマは意図的に混沌溜を作り、その影響でその世界の人類を抹殺しようとした。


 その破壊工作によって滅びた世界もあれば、混沌溜の悪影響に苦しみながらも何とか生き延びている世界もある。


 中には混沌溜を異世界の先進国の技術により克服した世界もある。その手の「克服」には「異世界の先進国による支配」がセットなのが定番だが――。



■黒水の混沌溜について

 交国本土にある<黒水>は長年、混沌溜の悪影響で危険地帯となっていた。


 黒水の地名は「高濃度の混沌は黒く、それが大量に湧き出す地」という由来がある。その名がつく前は別の呼び名が使われていた。


 黒水の混沌溜は交国の技術でも扱いきれないもので、交国本土が滅びないように対処するのが精一杯の状態だった。


 しかし、交国に来た1人の神器使い――加藤睦月(かとうむつき)が自身の神器を振るい、黒水の混沌溜に干渉した事である程度の沈静化に成功。


 黒水は人が住める場所どころか、貿易港として利用できる状態に回復した。



□ビフロスト自由落下大会予選敗退・美少女史書官・ラプラスの覚書

 混沌溜は上手く扱えば大きな経済効果を生みますが、扱い損ねると大惨事に繋がる危険なものです。


 比較的高度な技術を持つ交国ですら、交国本土の黒水を長年に渡って扱い損ねるほど、混沌溜は難しい存在なのです。


 扱いきれない混沌溜がある世界なら、そこに重要施設を置かない方がいいでしょう。そのくせ交国は長年に渡って本土から首都を動かしていないんですよねぇ。


 遷都自体は行っています。


 あくまで本土内での遷都に済んでいますけどね。


 ただ、記録を消されている遷都もあるのです。


 それも交国建国後の最初期。当時の都の名残は、一部の史跡と資料でしか確認できません。そのどちらも交国は大っぴらに公開しないようにしています。


 まるで遷都した事実が不都合であるかのように。


 隠したいなら史跡は完全に破壊しておくべきなのですが、玉帝はそれはやっていないようです。昔を懐かしむためなのか、時折、お忍びでその史跡を訪れている様子があります。


 遷都した原因は、一応、調べがついています。


 今は存在しない交国最初の都。そこは混沌溜の影響で人の居住が困難になり、放棄されたようです。遷都の原因とはつまり「扱いきれない混沌溜」です。


 その遷都前の都があったのが、実は現在の「黒水」なのです!


 一度は放棄され、人の住まない地になっていた場所で再開発が進んでいる。


 技術と人の進化を感じます。素晴らしい事ですね。


 でもでもでも、雪の眼の史書官の私としては「現在の黒水」であり「旧交国首都」に「何で混沌溜が発生したのか?」が気になります!


 気になったので調べました! 交国政府にはメチャクチャ睨まれましたが、それでも面白い事がわかりましたよ!


 旧交国首都の混沌溜は、人為的に作られたものです。


 交国建国初期、旧交国首都で発生した「激しい戦闘」によって世界壁が傷つき、混沌溜が出来てしまったようです。いやー、これ調べるの苦労しましたよ。


 最初、私は「プレーローマの工作」によって生まれた混沌溜だと思っていたのですが……エノクに頼んで照会してもらったところ、そのような事実は無いそうです。プレーローマは一切関知していないモノのようです。


 では、誰が戦った事によって生まれた混沌溜なんでしょうね?


 混沌溜は戦闘によって出来てしまう事もありますが、普通の戦闘じゃ無理です。かなり強力な神器使いとか、強力な権能使いによる戦闘でも簡単には混沌溜なんて作れません。世界の壁を傷つけるのは容易ではないのです。


 戦闘によって出来た混沌溜ってことは、「建国初期の交国」と「何者か」の戦闘が旧交国首都で――現在の黒水で起きたってことなのでしょうね。


 謎が明らかになったと思えば、また新たな謎が浮上してきたわけです。


 でも、私はいつかこの謎も解き明かしてみせますよ。


 当時を知っているであろう玉帝様が教えてくれればいいのですが……あの堅物支配者様は全然教えてくれないんですよね~。


 よほど言いたくないことなんでしょうね。


 そのくせ、証拠となる史跡と資料を完全抹消していない。


 効率重視の支配者様らしくない差配です。




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