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7年前、僕らは名誉オークだった  作者: ▲■▲
第2.0章:ハッピーエンドにさよなら
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番外編:多次元世界のオーク史 前編



■多次元世界の社交界事情

□ゲスト:玉帝


 私は<雪の眼>の史書官・ラプラスです。


 どこにでも出没する天才美少女史書官です!


「まるでゴキブリ」


 おっと玉帝様! 私相手にそんなこと言って良いのですか!?


「…………?」


 私は石守回路(かいじ)様の友人ですよ~?


 自分の息子! それも特に頼りにしていた回路様の友達をぞんざいに扱っていいんですか? そんな事をしたら回路様が悲しみますよ?


「回路は一応、人間です。ゴキブリの友人がいるわけ無いでしょう?」


 おっぱいソムリエ、という言葉をご存知ですか?


「…………!!」


 おっぱいソムリエ。それは人体の神秘……人類を慰める母なる部位! おっぱいを崇め、愛好する者達の名称です! ハァ~!! オッパイイッパイ!!


 私は雪の眼の史書官として仕事をする傍ら、おっぱいソムリエとしての活動も続けてきました。史書官として築いたコネより、ソムリエとして築いたコネの方が各国・各組織の中枢とガッチリと通じているほどです! パイパイパイッ!!


「……それが、どうかしたのですか」


 石守回路。


 彼も我が同好の士! おっぱいソムリエなのですよ!!


 つまり、私と回路様は公私共に親しい間柄だったのですっ! マブパァイッ!


「……ウチの回路は、あなたのような下劣な趣味は持っていません」


「回路の趣味は、もっと高尚なものでした。政治談義や金融、ピアノやヴァイオリンの演奏もたしなみ、月に一度は後進国家から利権を巻き上げ――」


 これ、回路様も参加したおっぱいソムリエの会合の集合写真です。


 ホラホラホラ、回路様も結構真ん中に写っているでしょう? 皆と一緒に「イエーイ!」とピースしている姿が写っているでしょう?


「か……回路が、そんな、ゴキブリの集いに参加するわけが……!」


 するに決まってるじゃないですか! あの方、手段を選ばない方ですから!?


 おっぱいソムリエって多次元世界の色んなとこに潜んでいるのですよ?


 ほら、この会合の集合写真に写っている方々、玉帝様も見覚えがある方が多いでしょう? 各国の首脳陣、財界の中心人物達にもソムリエは沢山いるのです。


 おっぱいにそこまで興味なくても、こういう集まりに参加しておくと便利な交友関係が広がるのです。回路様はそういうの大いに活用しますからねぇ。


 要するに、ソムリエは偉い人達の社交手段になっていまして――。


「いやらしい……。つまり、私を脅したいのですね?」


 はい?


「回路が、このような集まりに参加していた……。そのスキャンダルで玉帝(わたし)を脅そうとしているのですね? 下劣なゴキブリめ……」


 ぱい~?


 いや、単に回路様と結構仲良くしてましたよ、って言いたいだけで――。


「ビフロストの出歯亀。要求を言いなさい」


「回路と国家の名誉を守るためなら、ゲストでも何でも勤めます」


「それとも私の胸を揉みたいのですか? いやらしい……」


 ウヒョー! 助かります! では、今回のゲストをお願いしますよ!


 今回は『多次元世界のオーク史』について説明したいのです。


「いやらしい……」


 交国はオークと関わりが深いので、交国の支配者である玉帝様にも色々とご意見やご感想をうかがいたかったのです。よろしくお願いしますね!


「いやらしい……」




■オークは「人類の敵」だった

□ゲスト:玉帝


 オークはプレーローマで生まれました。


 オークも人類の一員ですが、「人類の敵」だった時期があるのです。


「彼らが『プレーローマの尖兵』として使われていた時期ですね」


 源の魔神(アイオーン)が健在の時、プレーローマは多次元世界中を支配していました。それが可能なだけの力がありました。


 ただ、多次元世界も広いので……源の魔神と配下の天使達だけでは手が回らなくなっていきました。


 そこでプレーローマは自分達の手先として、人類を使い始めました。


 その代表例として運用されていたのが「オーク」の皆さんです。


「他の種族も運用されていましたが……オークは特に重宝されていました」


「源の魔神はオークを好んで使うほど、いやらしい存在だったのです」


「オークがプレーローマで担っていた仕事は、大抵荒事だったようです」


 そのようですね。


 プレーローマはオーク達に武器や方舟を与え、色んな世界に派遣しました。


 そして、色んな世界で「人類虐殺」や「人類虐待」に荷担させました。


「便利な歩兵扱いです。それも、かなり下劣な目的で運用されていました」


「オークは基本的に、男しか生まれません。他種族の(はら)を借りなければ子孫を増やせません。だから彼らは他種族を襲いました」


「いや、正確には『襲うよう命令された』と言うべきですね」


「オークは略奪と暴行を繰り返し、様々な世界を渡り歩きました。行く先々で新しいオークの種を撒き、世界に騒乱を起こしていきました」


「プレーローマは、オークをそのような存在として設計・運用する事で、人類文明に大きな混乱を引き起こしたのです。天使達は下劣畜生と言っていいでしょう」


 その手の問題は、今でも色んな世界で禍根を残していますねー。


「当時の習慣を現代でも引き継いでいるオーク達もいます。それは彼ら自身の罪でもありますが、プレーローマによって決められてしまった生き方を中々変えられずにいるという意味では被害者と言っていいでしょう」




■オークの大帝国誕生!

□ゲスト:玉帝


 オークの皆さんは、源の魔神健在の時はイケイケでした。


 プレーローマに扇動され、色んな世界で大暴れしていました。


 大暴れしつつ、「オークの巨大軍事国家」を建国しました。


 その国家が「ブロセリアンド帝国」です!


「建国した、と言うより……建国させられた(・・・・・)と言うべきでしょう」


「オークの巨大国家が出来たのは、プレーローマがオーク達を効率的に管理するためです。オークの集団を『国家』という枠組みに押し込み、指揮系統を確立することで対人類用の戦力として効率よく運用する目的があったのです」


「オーク達は、プレーローマの目論見など理解していなかったかもしれませんが」


 大多数は上から命じられるがままに「ヒャッハー!」してたようですね。


 ただ、疑問を抱いた人達もいましたよ。


「そういうのは大抵、プレーローマに消されたでしょう」


 そのようですね。


 ともかく、ブロセリアンド帝国は大暴れしました。


 当時の人類国家の中では最強クラスと言っていい勢力でした。


「実質、プレーローマ陣営の国家ですからね」


「ブロセリアンド帝国は『国家』としては非常に未熟でした。国家運営は実質、プレーローマが担っていましたからね」


「国家として未熟でも、彼らはプレーローマの支援により、強大な武力を持っていました。多数の方舟による艦隊と、多数の兵器。多数のオーク兵団による暴力に抗える人類国家なんて、ほぼ存在していなかったでしょう」


 要は「機械化された狩猟民族」です。


 プレーローマが色んな武器を与えてくれるので、戦闘能力は非常に高い。


 ただし、1年中人類狩りに勤しんでいるので、国家としては未熟。


 未熟でチグハグですが、プレーローマの支援で大帝国を維持していた。


 プレーローマは大帝国をあえて「歪な国家」の枠に押し込めました。


 彼らが自分達の支援無しじゃ破綻するよう、管理しました。


 大半のオークさん達は「自分達が最高の時代にいる」と勘違いしていました。プレーローマに逆らわなければ何やっても許されていましたからね。暴力で。


 ある意味、黄金時代です。


 紛い物の黄金ですが――。


「他の人類にとっては、悪夢のような時代でしょうね」


「オークの大軍団に対処出来たとしても、後ろには天使達が控えている」


「天使達は有象無象のオーク達より、ずっと強力な存在でした。その天使達の背後には『多次元世界最強』と謳われた源の魔神までいた」


「当時の人類の手に負える相手ではありません」


 しかし、その暗黒時代にも終わりがやってきました。


 源の魔神の死。


 それは、多次元世界中に大きな影響を与えました。


 その影響はもちろん、ブロセリアンド帝国にも及びました。




■ブロセリアンド帝国、終了のお知らせ

□ゲスト:玉帝


 プレーローマの支配者、源の魔神の死。


 それは多次元世界の勢力図を大きく塗り替えました。


 プレーローマは源の魔神を失った事によって戦力低下。


 跡目争いによって混乱期に突入しました。


「大変喜ばしい事です」


「そのおかげで、プレーローマは多次元世界中を支配出来なくなりました」


「どこの誰が源の魔神を殺ったわかりませんが、良い仕事をしましたね……」


 ともかく、源の魔神は死にました。


 死んだと言われています。


「どこかで生きている、と思っている馬鹿な死司天(てんし)もいるそうですけどね。飼い主が死んだ事で多次元世界中をウロウロと探し回っているとか……」


 彼なら最近は交国の支配地域に潜んでいますよ。


「は?」


 混乱期に入ったプレーローマは多次元世界各地から兵を引き上げざるを得なくなり、対人類に注力出来なくなりました。


「ちょっと、いま聞き捨てならない事を――」


 話を戻しましょう!


 源の魔神の死により、プレーローマは混乱期に突入。


 プレーローマはブロセリアンド帝国を管理する余力も無くしました。


 プレーローマによるブロセリアンド帝国への支援は打ち切られました!


 ブロセリアンド帝国は超巨大軍事国家でしたが、かなり歪な国家でした。プレーローマのバックアップ無しでは、国家の体裁すら整えられなくなりました。


 結果、瓦解していきました。


 プレーローマ製の兵器補充が出来なくなり、補給線も崩壊。帝国のオーク達はそこらの人類国家相手でも負けるぐらい弱くなっていきました。


 オーク達はプレーローマに対し、支援再開を求めましたが、プレーローマ側は要求を拒否。それどころではないので、オーク達を捨て置きました。


「そして新暦55年。ブロセリアンド帝国はついに崩壊しました」


「プレーローマの支援がなくなって弱体化していたうえに、帝国内で大きな内乱が発生。その混乱の中で皇帝暗殺事件まで発生しました」


「帝国は28の国家に分裂し、元帝国のオーク同士でも争い、殺し合う事態に発展していきました。ブロセリアンド帝国時代の終焉です」


 人類にとって「悪の帝国」が倒れた!


 万事解決……なんて事にはなりませんでした。


「むしろ、ここからが本番ですね」


「ブロセリアンド帝国は、プレーローマに言われるがまま、多次元世界各地で暴れ回りました。そして同時にオークの『種』を撒きました」


 有り体に言うと、現地住民を襲ってオークの子孫を作ったのです。


 その子孫達は帝国が面倒を見る事なく、あちこちに捨て置かれました。


「この『種』が新たな騒乱を引き起こしました」


「公式の場では言わない言葉ですが……オークという種は非常に難しい存在です」


「彼ら自身も被害者なのですが、全人類がそれを理解し、歩み寄ってくれるほど多次元世界(せかい)は優しくないのです」





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