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7年前、僕らは名誉オークだった  作者: ▲■▲
第1.2章:寄る辺なき者達【新暦1192年】
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TIPS:深人



【TIPS:深人(ふかびと)

■概要

 人類の一種。水棲生物のような特徴を持つ人間達。身体に魚のような鱗が生えるものもいれば、蛸のような触手が生えるものもいる。鯨の身体に人間の手足を生やしたような異形の者達もいる。


 深人には「先天的な深人」と「後天的な深人」の2種類がいる。


 親が深人の場合、その子供は生まれながらの深人になる可能性が多い。それが「先天的な深人」と呼ばれる存在である。


 元々は別の人間種だったのに、後から深人としての特徴を持つようになった者達は「後天的な深人」に分類される。


 只人種、エルフ、オーク、ドワーフといった種族でも、後天的に深人と化す危険性を持っている。深人は元々の種族の特徴も引き継いでいるため、例えばエルフの血に連なる深人は、只人種より遙かに寿命が長くなる。


 深人の多くは<流民>である。流民というだけでも差別されがちなのに、深人となると、もはや人間扱いされない事すらある。だが、深人も人類の一種である。



■差別対象としての深人化

 多くの者が深人化を一種の疾患、不治の病と考えている。


 一度、深人化が始まってしまうと、元の「普通の人間」には戻れない。子孫まで深人化が引き継がれてしまう。


 深人は「半魚人」と蔑まれ、差別対象になっている世界が多い、深人化による肉体的、あるいは社会的な変化に耐えられず、自殺する者もいる。


 深人になっても死ぬわけではなく、メリットもあるのだが、深人化は多くの者が恐れている。深人化を「呪い」として考える者もいる。



■祝福としての深人化

 流民達は深人化を「祝福」「海に愛された証」と言っている。これは差別に対する強がり的なニュアンスも含む言葉だが、深人化にもメリットがある。


 個人差もあるが、深人化すると「身体能力・肺活量の強化」や「混沌の海への適応」などの「元の種族より強くなる」というメリットも見込める。


 稀少例だが「再生能力」や「特異能力」に目覚める者達もいる。


 触手を持つ深人などは、その触手を第三の腕として器用に扱う。常人より混沌の海を見通せるようになり、混沌の海で自由自在に泳ぐ深人もいる。


 <ロレンス>の海賊達は泳ぎに長けた深人達で部隊を作り、自分達の能力をフル活用している。混沌の海を自力で泳いで輸送船や軍船に白兵戦を仕掛けてくる深人達は、敵対者にとって大きな脅威になっている。


 界内から追いやられ、混沌の海で暮らさざるを得ない流民にとって、深人化は「生きていくために必要な適応」と言えない事もない。


 深人化すると差別がより一層厳しくなるため、喜んでばかりいられないのだが、メリットも確かに存在している。


 交国軍などは意図的に深人化した軍人を作り、混沌の海等での戦闘に活用している。深人化による「強化」をコントロールするための研究も行われている。



■深人化の原因?

 深人化の原因は「混沌の海で長期間生活すること」「流民と接するだけで深人化が感染してしまう」と言われているが、それらは迷信である。


 深人化の原因はハッキリしており、そこをキチンと対策しておけば深人化せずに済む。また、原因に関わったところで簡単に深人化するわけではない。


 神器使いなどは常人とは身体の作りが違うため、深人化しづらい。神器使いに限らず、深人化には個々人で耐性が異なる。



■深人化の原因:海獣

 深人化の原因は<守要の魔神>が作った<海獣>が関わっている。


 守要の魔神――<根の国>という世界を治めていた魔神は、酷い差別を受けている流民達のことを哀れんでいた。


 暗い海の中で怯え、飢え、時には少ない食物を奪い合う流民達を哀れんでいた。だからこそ流民達のために善意で動いた。


 守要の魔神は<海獣>という存在を作り出した。海獣は<タルタリカ>のような魔物の一種だが、タルタリカと違って比較的温厚な神造生物である。


 海獣達はタルタリカほどではないが再生能力を持っており、混沌を与えているだけで多少、切り刻んでも翌日には元通りになっている。自分達の身を刻まれてもケロリとしており、牛の乳搾り感覚で血肉を提供してくれる。


 混沌の海には大量の混沌が流れているため、海獣達の餌には事欠かない。


 海獣の血は流民達の喉を潤し、海獣の肉は流民達の腹を膨らませた。海獣の血肉の味は特別良いものではないが、流民達から餓死を遠ざけた。


 流民達は守要の魔神に深く感謝し、海獣を「神が遣わした獣」として大事に育てた。海獣が子を産み、その子が大きくなれば養える流民も増やせるようになった。


 大型の海獣は方舟代わりに使用出来るため、「移動手段」や「家」としても重宝された。海獣は流民達にとって欠かせない存在になっている。


 ただ、海獣の存在が「深人」という差別を生み出した。



■副作用

 海獣の血肉を作った料理<(へぐい)>を食べていると、身体が海獣由来の成分に侵され、改造されていく。


 これが深人化の原因となっている。


 この副作用は海獣の作成者である守要の魔神ですら把握できておらず、最初に深人化が始まった時は流民の間でも大きな混乱と争いが発生した。


 <夢葬の魔神>が流民達をなだめ、認識操作した事により、その混乱も落ち着いていった。だが、深人化という副作用は流民達を悩ませるものとなった。


 守要の魔神は「絶対に副作用を解決する」と言っていたが、根の国の政変によって七分割されてしまい、流民どころではなくなってしまった。


 流民達は副作用に怯えつつも、他に飲み食いするものがないため、海獣に頼った。頼っているうちに慣れ、諦め、深人化を「祝福」と言うようになった。


 だが、陸の人間達は違う。


 彼らは深人達を「半魚人」と言って差別し、遠ざけた。その差別が争いの原因となっている。それでも流民達は海獣と共に生き、死んでいくしかない。



■副作用の利用

 流民の中には、自分達を人間扱いしてくれない「陸の人間」に強い恨みを抱き、海獣の肉を「魚の肉」「人工肉」と偽り、界内に販売している者達もいる。


 それによって流民以外の深人化が発生し、大きな騒動になった事もある。


 そのため先進国では海獣の存在自体が忌み嫌われている。ただ、食べ過ぎなければ深人化する事はないため、珍味として食べる者達もいる。


 食料に困っている世界などでは、海獣を使って食糧自給率改善を目指したところもある。ただ、海獣は基本的に混沌の海でなければ長生きできないため、陸の生活にはあまり馴染めていない。



■野良の海獣

 多次元世界には「野良の海獣」も存在している。


 野良の海獣は一応、意図的に生まれたものではない。


 海獣が作成されていた根の国の近海は常に荒れ狂っているため、運送中の事故で海獣が脱走する事案が頻発していた。


 事故が発生しようが「流民に海獣を送るのが最優先」となり、守要の魔神は長きに渡って問題解決を後回しにした。


 後に根の国以外での海獣生産場の作成にも着手したが、その時にはもう相当な数の海獣が混沌の海を好き勝手に泳ぎ回り始めていた。


 脱走した海獣達は野良で生きていくうちに凶暴化していき、飼育されている海獣と違い、人を襲う存在になっていった。


 中には全長数キロに渡る巨体を持つ<大海獣>もおり、大海獣や野良海獣の群れが輸送船を襲い、沈没させてしまう事もある。


 そういった海獣達を狩猟し、交易航路の安全性を保つために活動している者達も多次元世界には存在している。




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