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77.近代化改革の成れの果て

「まあ座り給え。私の事は『アーリ』で良い」造船所の応接間に案内された我々は、まず現状を確認する。


 先程の代表がこのアーリ様である。この国は大臣ではなく、官僚達が主体となって政治・経済を進めているようだ。そして、人事異動でご破算になると。


 近代化の進む方向自体は良い。但し、それに注力しすぎると国力が弱まる。これまでに『奴隷制廃止』『特権階級からの権力奪取』『税制改革』『人権宣言』『教育改革』『人口調査』など、基本的な改革は既に完了している。


 ……結局のところ、お金が必要と言う事実だけが残る。他人の財布で、何とかしようとしても駄目なのだ。


 何と言うか、もどかしい限りだ。今の皇帝陛下は兄の突然の死により、繰上りで即位した。その為、改革に積極的ではない。


 アーリ様は、前皇帝陛下の元で『改革勅令』を公布して、積極的な西洋化改革『タンジマート』を推し進めてきた。特に教育や人権に関わる政策を行った。そして、皇帝の代替わりで人事異動があり、今に至ると。


 ……まあ、良くある話である。朝三暮四という言葉もある。問題は、政策の結果が『アラブのIBM』だったという事。


「そうは言っても、教育など一朝一夕に進むものではない。そう諫言したのだがね」

「まあ、今は出来る事をして、実績を積むしかないですね。幸い、千鶴ちゃんはそう言うのが得意です。船の上で寝言を言う奴は、海に叩き落しますので」

「そうですね。実際『アッラーの教えがなんぼのもんじゃい、こちとら浄土真宗じゃボケぇ!』で解決出来ます」


 ……何と言うか、まあそういう解釈もあるよね。頼もしいやら、恐ろしいやら。


 千鶴ちゃん曰く『宗教関係は、内部分裂が酷すぎてどうにもならなかった』らしい。リアル江戸時代の感想である。何で両隣で東西に分けた……との事。



「僕達も、そっち方面で役に立ちそうですね。メルは……その、あんまり」

「何よ、ホルス! 私が役立たずみたいじゃない!」


 皆まで言うな、ホルス君よ。メルちゃんは、こっちで手伝いして貰うから。


「メルちゃんは、文字をお願い。流石にアラビア語迄、対応していられないから」

「はぁい! 師匠の所で特訓したので、文章は得意です! 魔法の呪文と似たようなものだし!」


 ……この子も実際頼もしいよね、宜しくね。


「そういう訳で、アーリ様。私達については、特に高給はいりません。テキトーにご飯と住む所と、臣民の手続きをお願いします」

「……そうか。それならイギリス人達を解雇すれば、随分と助かる」

「あぁ、大体どいつがサボっていたかはチェック済なので、役に立ちそうなのは残しましょう」


 ……時間が無いのだ。あと数年もすれば、イギリスとの関係が悪化する。それで詰みだ。


「イギリスに食いつかれているのさえ、何とかなれば……正直に言って『最悪』と言っておきます」

「今の皇帝陛下は西洋寄りなのだ。あちらに訪問するとさえ言っている。困った事だ」


 可及的速やかにイギリスの借款を返済せねばならない。まあ、悪徳高利貸しが裸足で逃げ出す、と言った風情である。  


 実際借款しているのは、五百万リラ。日本円に換算して千五百億円になる。頭が痛くなる金額だ。……放っておくとどんどん増えるのだ。一刻も早く、何とかしなければ。



「しかしまあ、急いで作った官製工場はこの有様で、浪費と賄賂か……。笑えないね、まったく」ジェームスが言うのも尤もだ。急激な改革には反対も大きい。

「それでも、西洋化するには技術を見せるのが一番よ。この海軍を何とかすれば、突破口になるわ」

「成程。君達は仕事が欲しい訳ではなく、この国を何とかしようとしているのか……。であれば、知合いを紹介した方が良いかもしれないな」

「知り合い……ですか?」


 まあ、この世界に知り合いもいないし、話が分かる人が居ればやり易い。


「ミドハトと言う、私の同僚がいる。彼は憲法を学んでいてな。西洋の法律を導入しようとしている」

「憲法ですか……。ジェームス、どう?」

「ああ、ダルイム族で存分にやった。アドバイス出来ると思うぜ」


 あのスパルタ道場には、お爺ちゃん苦戦していたからなぁ……。懐かしいわね、まったく。


「アーリ様。私共は、その辺も経験があります。ご紹介頂いても宜しいかしら?」

「ほほう、それは良いな。準備が出来れば、会談の日程を決めるとしよう」

「……それはもう、嫌という程教えて差し上げます。『権力の移譲』とか『議会制』『主権』なんてのも有りますよ」私とジェームスは、ニヤリと笑う。


 憲法なんて国によって異なるのだ。サイズが合わないスーツの様に、借りてきても役には立たない。


 結局、ダルイム族は現行の掟に幾つかの条文を追加して、色々と試行錯誤をしている。オスマン帝国位大きければ頭を抱える程、課題がある筈だ。


「……成程な。西洋が一番ではない、という事か」

「そうですね。風土や環境、その土地に合わせないと無理が出ます。その辺りは話し合いが必要ですよ」

「どうにも、その辺が悩みの種なのだ。……青年改革派の声が大きくてね。反乱一歩手前と言った状況だ」

 

 やっている事は素晴らしい。理想と現実、と言うのが問題なのだ。



 ……やる事は山盛りだなぁ。まずはこの造船所の掃除からだ。


 これでも最短ルートで進めている自覚はある。それでも間に合わない、それが『オスマン帝国』の実情なのだ。……やりがいがあり過ぎて、涙が出そうだわ。


 ともかく、財政を正常化するには細かな所を見直すしかない。赤字を垂れ流す工場を改善し、収入となる商品を輸出しない事には話にならないのだ。


 幸い、南北戦争のおかげで軍需物資に関しての需要は高い。いずれこの造船所から輸出する事でも利益は上がる。そうして、皇帝陛下に実績を突き付けた上で、この国の商業をコントロールする必要があるのだ。


 それらを借款や税金で賄おうとすると、物凄いペナルティがある訳だ。


「やる事は大体決まったようだ。それでは、宜しく頼む」

「こちらも全力でやりますよ。……皆、遅れないようにね!」

『おう!』総員全身全霊を以て、各自の担当役を果たしましょうか。


 まずは人員整理と在庫の管理である。どうにも型落ち品や老朽艦が大量に余っている。改修計画を立てつつ、不要な物は廃棄しよう。帆船主体のため、人員も多すぎる。千鶴ちゃんに訓練して貰う分だけ残して、一旦解雇しよう。


 イギリス人技術者の類も不要だ。丁寧にご退場願うとしよう……。徹底的にスリムアップしたらジェームスにドックを任せて、ガンガン帆船を改修していく。


 ……まずは初動が整った。イギリスとの交渉は私がやるしかない。なあに、勝手知ったるイギリス海軍ロイヤル・ネイビーである。あの頃よりも難儀ではあるが、電波を拾って来る奴が居ないだけましだ。


 さて、オスマンの海軍司令との連携も必要だ。この造船所が稼働するだけでも大喜びだろう。


 色々とやる事もある。工夫次第では、結構な利益にもなるし商人的には大喜びだ。


 まるで、打ち出の小づちの様に、お金を吐き出すようにするのは心が躍る。まったく、これだから異世界は面白いのだ。


 ……さてと、結果が出るのは一ヵ月後位だろうか。メルちゃんにサポートをお願いして、あちこちに顔を出さなければ。いやあ、楽しいねぇ。


 私は、いよいよエンジンが掛かって来て、思う存分手を出せる環境にウズウズしながら走り回るのだった。

オスマン編。


まずははじめの一歩から。この辺は、ざっくりと進めて行きます。


目標がはっきりするだけで話が進みます。


元ネタは『Victoria3』です。


結構法律は通っているので、後は赤字を何とか、と言う状態ですね、

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