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76.ドキッ!借金だらけのオスマン帝国

「いやあ、はるばる来たね。イスタンブール!」私達は『ストーンヘンジ』経由で1860年のデリーに到着し、そのまま西に向けてイスタンブールにやって来た。


 馬は使えるし、お酒以外の交易品も万全。そういう訳で『ぶらり異世界探訪』と、言う事になる。


 事前に調べてみたが、一通りの近代化に手を付けてはいるのだ……。問題はそのための費用ね。


 ぶっちゃけ、イギリスに居ると分からないが、異国から見たイギリスと言う国は『銭ゲバ』と呼ぶのが相応しい、としか言いようがない。


 ハゲタカも斯くや、と言わんばかりの毟りっぷりである。オスマン帝国『ヨーロッパの瀕死の病人』と言う呼び名は伊達ではない。


 借款の返済で美味しい所を存分に吸い取られ、残りっカスをロシアと争い第一次世界大戦に突入、と言う流れである。


 最終的に『ケマル・パシャ』と言うトルコ建国の父が居なければ、爆発四散は免れなかっただろう。


 ……それはさておき、この現状ではまだそこまで酷いという訳でも無い。あちこちで無理は生じているが、挽回可能と踏んだ。


「アキラ。いくら何でも、無位無官で改革というのは、無理があるだろうが!」まあまあ慌てない。

「……こういう時は自分達の得意分野を狙うのよ」

「どういう事だ?」

「『オスマン帝国海軍』って言うのがある。……と言うか『あった』のよ」


 クリミア戦争中、ロシアと黒海の制海権を争った。結局、帆船主体の『オスマン帝国海軍』は敗れ、イギリスの援助で何とか、と言った体である。


「……つまり、旧態依然の海軍から改革していくと」

「そうね、イギリスへの借款も詰まるところ、無理な海軍維持費用と押し付けられた中古品、と言う点に尽きるしね」


 ジェームスは溜息を吐く。まあ、こういう事は身近な物から始めるのだ。


 それにしても、我々は海と船に随分と因縁がある。結局そこに行き着くのだ。


 良く見れば、港には戦争の生傷が絶えない、老朽艦があちこちにある。どうやら、まともに修復もしていない様だ。そこに付け入る隙があると見たわ。



「お姉様、あそこが造船所らしいですよ」

「手っ取り早く、蒸気船の導入がしたいわねぇ」


「おう、お嬢ちゃん。ここは部外者立ち入り禁止だぜ。とっとと帰んな」


 どう見てもトルコ人ではない人に止められた。つまり、この辺までどっぷりとイギリスの紐付きなのだ。


「ふうん、まともに修理の音もしない造船所に、何の意味があるのかしらねぇ?」私は皮肉を口にする。


アラブ社会には、「アラブのIBM」と言う言葉がある。まあ、ただの悪口なのだが。


それぞれ「神の思し召しがあれば」「明日」「気にするな」と言う意味だ。つまり、日本人から見て全く許せない、それらの言い訳がこの辺の常識となっている、という事である。


 ……要するにテキトーにサボる癖がある、とだけ理解出来れば良い。


 つまりどういう事かと言えば、テキトーな理由を付けて休むアラブ人と、国から貰える給料さえあれば、テキトーにサボるイギリス人、と言う組み合わせだ。どう考えても最悪の組合せ。


 いくら、近代化しようとこれがどうにもならない限り、改革なぞ無理だ。


「アンタみたいな門番に用は無いの。良いから、偉い人の所に連れて行きなさい!」

「……何だお前は。帰れ帰れ、ここは遊び場じゃないんだよ」

「こっちだって、ただの見物じゃないわ。私は商人、こいつは技師。この子が海の専門家よ。イギリスで最先端の技術を学んだのよ。勝手に通らせて貰うわね」

「アキラ、無茶するなよ!」


 良いのよ、こんな所で時間を潰す訳には行かないの。荒事にぴったりの三人組もいるじゃないの。


「レイ、抑えておけ。なあに、ちょっと力を入れてやるだけで良いぞ」ホルス君が意図を汲んでくれる。

「そうそう、それでいいわ。少ししたら戻るから」と、手をひらひらさせた。

「……全く、乱暴にも程があるぜ!」

「ウチのやり方らしいとは思いますよ。怪我人出さないだけマシです」千鶴ちゃん分かっているねぇ。


 突如乱入した我々を警戒する面々。流石にやり過ぎたかな?


「ここの責任者は居る? 私達の能力を買って欲しいのだけど」

「お嬢さん、突然入って来てそれは……」

「貴方たち、港にぼろぼろの船があるじゃないの。どうして修理しない訳?」

「それは……予算の関係で」


 ふん、良い訳なんか聞きたくないわね。


「随分と荒っぽいお嬢さんだ。まあ、この造船所がまともに働いていない、というのは確かじゃな」

「貴方が責任者? 私達は、イギリスで学んできた船の専門家よ。ここは酷い状態の様に見えるけど」

「……儂が代表という事になるな。それで、お前さん方に何が出来るのかね?」


 やっと話の分かりそうな人が来たじゃないの。


「そうね、一番ボロい船で良いわ。それを『蒸気船』にしてあげる」

「……そんな事が信用出来るとでも?」

「別に使っていない造船所でしょ。何とでもなる筈よ?これだけ雁首揃えて、国産化していない『蒸気船』。私達なら、一週間で改造をやって見せるわ」


 こういう事は実力行使だ。有無を言わせない、実績を積むのが手っ取り早いのだ。ちまちま交渉からしていたんじゃ、いくら時間があっても何も出来ない。


「面白い事を言うな。……確かにそれが出来れば、利益になる。お嬢さん、名前は?」

「私はアキラ。商人をやっているわ。こっちが蒸気技師のジェームス。この子が操船担当の千鶴ね」

「アキラよ。私はここの代表、アーリー・パシャと言う。まあ、何の実権も無い政治家だ。皇帝に諫言し過ぎて、ここに放り込まれただけでな。……そういう訳で、お前さんの力を見たい」

「えっ、こいつの言う事を信じるんですか?」周りの人間が騒ぐ。


 成程、そういう事なら話が早い。面白い事になって来たわね。


「ええ、出来るわ。何なら大西洋横断しても良いわよ。もうやった事があるし」

「ははは、それは面白い冗談だな。まあいい、一番古い船を任そう。好きに使いなさい。どうせ、まともに修理する予算も無い。それ位なら問題無い」

「ええ。機会を頂き、ありがとうございます。きっちり改造して見せますわ」


 まあ、船を作るのならともかく、改造なら問題無い。


 あの変人共とやった、造船と『蒸気機関』の技術を見せてやろう。


「お姉様、外輪船で良いですよね?」

「そうね、手っ取り早く改造出来そうね。それで行きましょう」

「じゃあ、俺は『蒸気機関』だな。特に性能に注文は無いな?」

「ええ、高圧にする必要は無いわ。それは後に取っておきましょう」


 ……三人共、この辺り慣れているのだ。サクサク進めるとしよう。


「お姉様、ドックに船を固定しました」

「分かったわ。千鶴ちゃんはサイズを測って、外輪の用意をお願い!」

「そこら辺の材料は使わせて貰いますね」

「はい、アーリー・パシャ様。そこら辺の材料だけ頂けるかしら?」


 全長三十m程のフリゲート艦だ。まあ、手短に済ませるとしよう。


「……本当に出来るのか。構わん、好きに使いなさい」

「ええ、早く出来る分には構わないのでしょう?」

「……随分と慣れているようだが?」

「ええ、この手の経験はテムズ川でやっています」まったく、あの時は『高圧蒸気機関』の試験機だ。


 それに比べれば……ねえ? ジェームスも鉄板と鉄の棒を組み合わせ始めたか、順調である。


 ここは、タイムアタックと行きましょうか。


「三人共、手伝って頂戴。とにかく人手が欲しいわ。荷物運びを千鶴ちゃんが指示して!」

「はい、お姉様。マストは、そのままでいいですか?」

「そうねえ、とりあえず付けてても良いわ」


 そうして、作業を分担する。私は基本眺めながら、色々と説明したり了解を取ったり。


 造船所全体がずっと、こっちの作業を見ている。別にいいけど、役立たずはそのうちリストラする予定なのだ。サボっている奴は、あらかじめチェックしておく。



 そうして、三日後。まあ、多少の無茶はしたが……問題は無い。きっちりと、それぞれの仕事が完了した。


「どうでしょうか、アーリー・パシャ様。ここの技術者にこれが出来て?」私はにっこりと微笑む。

「……これは見事だ! 文句は無いな。改めて宜しく頼む」と握手をして、まずは実績作りが終わった。

「まあ、突貫工事だったので。多少性能は低いです。ちゃんと、予算と人手があれば装甲艦も作れますね」


 その言葉で、アーリー・パシャ様が絶句している。一体、イギリスはどの位の費用で船を売っていたのだろう。ちょっと気になる。


 私達は、説得よりも現物とばかりに、造船所でやらかした。まあ、もう少し時間があればもっといいものが出来るのだが。


 本題はそこでは無い。まずは、ここの役立たずを追い出すところから始めよう、と私は考えたのだった。

と言う訳で、オスマン編スタートです。


……何と言うか、そこ等辺は、慣れた主人公達ですので。


問題は山積み。借金は膨大。意外な所から取り掛かります。


実際問題、ゲームでは二十年以内に達成する必要のあるイベントです。


まずは、金食い虫の陸海軍の縮小が初手安定になりますね。

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