66.アイツと私の関係
決戦はクリスマス。そう決めた。
随分と、『乙女心』も慣れたと思う。思い切って期限を決めて、一線を越えようと決意する。またズルズルと先延ばしにする、自分の性格を鑑みて退路を断つ事にしたのだ。
……とはいえ、如何したものか。流石に、千鶴ちゃんのアドバイスのようにする訳にも行かない。はしたない真似はしたくない。だが、普通に迫って拒否されるのも怖い。
そうはならない様、事前にスキンシップを意識的に増やしている。アイツの様子もおかしいというか、何か感づいている。
もう、後戻りは出来ない。思えば、勢いだけで突っ走って来た私。暴走するのはいつもの事だ。
だが、今回ばかりはノリと勢いという訳にも行かない。……その、乙女の一大事である。
出来るならば、思い出に残るような行動にしたいのだ。ロマンチックな成分多めである。
日頃ロマンだ何だと言ってはいるが、事ここに至っては絶対に失敗したくない。あと、ジェームスに主導権を握られたくない。複雑な『乙女心』だ。
だから、クリスマスイブの夜に突撃しよう。もちろん裸では行かない。恥ずかしくてとても無理だ。お母さん、やっぱり肉食系だよね。
突然行って気まずくならない様、事前に手紙を書いて渡す事にした。
「今夜、あなたの部屋に行きます」それだけ。
それだけでいい。色々な想いを伝えるのは、手紙ではない。
そして、夕食を食べた後で皆に気付かれない様にこっそりと手渡した。恐らくその中身を見たのだろう。
ジェームスは椅子からずり落ちそうになっていた。やめてよ、バレるじゃないの。
皆が寝静まった頃、私は覚悟を決めた。お風呂には入った。身支度もよし。
……女は度胸だ。私らしく突っ込んでいく事にした。
ドアを小さな音でノックする。心臓が張り裂けそうだ。
「開いているよ」
「こんばんは、通りすがりのサンタです。貴方へのプレゼントをお届けに参りました」
考え付く限り、一番良いと思う台詞を言い切った。
「ああ、貰おう。……で、プレゼントは何だ?」
「……私です」
少しの間、沈黙が続く。
「……来いよ」
「はい」
「あの、ジェームス。私は……」
「こういう事は言葉じゃない。行動で示せよ」
「あっ、あの……」
その後、私達はゆっくりとお互いの気持ちを確かめあった。具体的には言わないでおこう。
……黙って心に留めておく。そういう時もあるのだ。
「……昨夜はお楽しみでしたね」千鶴ちゃんが呆れながら言う。
……あれ、心に留めておくのは? せっかく良い感じにまとめたのよ。
「そりゃ、部屋が隣なんですから聞こえるでしょう。しかもニ回戦まで……」
うん、そうだね。ここ壁薄かったしね。
……ハッと気づいて反対を見ると、ホルス君は顔を真っ赤にして、目を合わせようとしない。
ああ、そっちにも筒抜けでしたか……。
「出来るだけ耳を塞いであげましたけど、限界がありますよ」
「ごめんなさい、皆には内緒で……」
「いえいえ、今更皆に伝えても『……やっとかよ!』程度の反応で終わりますから。どんだけ長引かせたと思っているんですか」千鶴ちゃんは辛辣だ。
ジェームスはずっと笑っている。どうにも何か吹っ切れたらしい。こんな陽気なジェームスは初めて見るかもしれない。
「まあ、正式にお付き合いというか、もう結婚しているのな。……こうなりゃ皆を招いて、式でも挙げるか?」
「……駄目押ししないでよ、もう」
なんと言うか、思い切って暴走した割にはおかしな関係になったような気がする……。いや、既に手遅れだったかも。
「まあ、そういう訳で俺はアキラと、一緒に並んで歩んでいくつもりだ。もう、暴走させないからな」と言いながら、ジェームスは笑った。……少し気恥しい。
こんな世間話というか、惚気話をしている場合ではない。今日からは営業を停止して、大掃除を始めないといけない……。
まあ、自分の暴走の結果ではある。自覚はしています。すみませんでした。
出来れば早めに本部を訪れたいのだ。友人のレイ君の捜索だ。長引く事も考慮してニ月中頃までは、ホテルを休止する事にした。
そして、各自の部屋を片付けるのだが、私はジェームスの部屋も片付けた。……物凄い事になっていたのは、見なかった事にしよう。
「まあ、とにかく本部に行こう。ホルス君の紹介もあるし、お婆さんに占って貰わなくちゃ」
「……あの婆さんの占い、当たるのかよ」ジェームス、そういう事は思ってても言わないものよ。
「皆さんには、ご迷惑を掛けます」ホルス君が恐縮する。
「仲間じゃないの、こういう時は頼って貰わないと」
ホテルに鍵を掛け、出かける事にする。留守番は安藤さん一家にお任せした、
「こんなに簡単に『門』が開くんですか……」
「そうね、私だけしか出来ないけど、素早く動くのには丁度良いのよ」何か緊急時に駆けずり回る事になる訳だけどね。
本部の前に着いた。普通にリズさんが出てきた。
「ラヴの香りがしたのよ~。随分と待たされたわ~」あんた、それが言いたかっただけか。
「はい、こちらが新メンバーのホルス君です。こちらがリズさん。『魔導師』同士仲良くしてくださいね」
「はいは~い、よろしく~」
「あ、宜しくお願いします。……凄い魔力ですね。全く歯が立たないと思いますよ」
そう言うのは直ぐに分かるのか。私達には縁遠い世界だ。
「それで、彼のお友達が行方不明なので、お婆さんに占って貰おうかと」
「じゃあ、団長の所に行く前に~ちょっと寄り道しましょ~」
「お婆さん、生きてますかー? それとも死にましたかー?」
「何で、お前さんは死ぬ事を前提にしておるんじゃ?」
「……何となくです」
「まあ、ええわい。探し人じゃな?」それも占いで分かったのかな?
友人の姿絵とペンダントを渡して、お婆さんに占いをお願いした。
「……生きてはおるようだが、特に迷っておる訳ではない。「兵馬俑」の隣の世界で暮らしておるよ」
「その『門』の場所は? 詳しい場所を教えて下さい」
「日本じゃな。奈良という場所に『門』がある様じゃ」
つまり、兵馬俑の『門』を出て、そこから日本へ。奈良にある『門』の先。そこに友人が暮らしている……。ええと、迷っている訳ではないのか。
「婆さん、何でそいつは戻る方法を調べずに、その場所で暮らしているんだ?」
「恐らくじゃが、記憶を失っておるのではないかな?詳しくは分からん」
「……とにかく、急いで探しましょう。俺も日本に『門』があるとは思わなかった」
「えっと、遠いの?」
もしかして、『魔族』が住み着いているとか……。
「いえ、俺達は日本に住んでいたので……あまりに近すぎて気が付きませんでした」
ああ、条件が複雑なタイプだろう。数十年間隔で開く条件の『門』を通った事がある。本当に偶然に落ちてしまったのだろう。普通では見つけられない筈。
「よし、何とか場所を特定出来たし、何とか見つかりそうだね」
「ありがとうございます、なんてお礼を言ったら」
「まあ、魔法が得意なんじゃろぅ。この子達を助けてやってくれ」
団長にも経緯や横浜の話は、しておかなければ……。ジェームスとの事は秘密にしておこう、何となく。
『……仲間が見つかったのか。その友人も参加するかもしれないな』
「ああ、そうですね。無事に見つかったら協力して貰います」魔法剣士って、強そうだけどどうなんだろう。
「楽しい仲間が~、芋づる式~」リズさん、もう少し言い方があるでしょうに。オマケみたいじゃないですか。まったく。
「……その、記憶喪失というのが気になりますが。会って確かめないと」
記憶を戻す、っていう魔道具は無かった筈。仲の良い友人と会って、記憶が戻ると良いのだけど。
「一旦、俺たちの住む村に行ってから、奈良に向かった方が良いですね」
「……よし、急いで「兵馬俑」に向かいます!」
久しぶりに大人数で、新しい世界を調査する事になりそうだ。私は、未知なる世界に思いを馳せた。
恋愛回でした。……疲れた。これは慣れない。
番外編はR18です、当然です。直接的な表現が無くても駄目でしょうし。
投稿しました。【番外】彼氏彼女の情事『https://novel18.syosetu.com/n9475ic/』
……夜中に真面目な顔をしながら、誤字チェックする事じゃない。何をやっているのやら。
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