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65.それは流石に卑怯じゃないの?

「じゃあ、俺の魔法を説明します。千鶴さん、魔法を受けて貰えますか?」

「はい、じゃあ行きまーす」


 ホルス君の魔法のお披露目。千鶴ちゃんが神に祈り破邪の力を貰い受けた。何というか、事務的である。


 今は十一月。結構外は風が冷たい。こういう時はとっておきの技を使う。


「ジェームス―。さーむーい!」

「へいへい」と言って、ジェームスがコートを広げる。私はタックルするように抱き着き、コートに包まれる。暖かいのは体温なのか、恥ずかしさなのか。


「ふん、全く……」ジェームスは呆れたようなセリフを吐き、黙る。


 これが私の半年間の成果。思い切って『乙女心』をレベルアップし、私は甘える事を覚えた。


 私とジェームスの関係。普通の恋愛とは違うのだ。今まで、世間の常識に合わせて怖がっていた。だが、ジェームスは拒まない。私との関係は普通じゃない、私が拾ってアイツが付いて来る。そんな関係。


 だから、突撃する事にした。裸でないだけマシだと思う。実際、周りの目を気にせず突っ込むのは私らしい。甘えるだけ甘えて、距離感を詰める事にした。仮とはいえ夫婦だ、と言い訳をして。


 結果、ジェームスは呆れながらも、受け入れてくれている。少しずつ、寄せて行っているのだ。


 千鶴ちゃんが呆れながら「良くやった!」と応援してくれている。皆の意見を私なりに解釈した結果だ。


 ククク、ジェームス。逃さんお前だけは。思うままにゴロゴロ甘えて、逃げ場を無くしてやるー。


「仲がいい夫婦ですね、あの二人」

「ああ、偽装結婚なんですよ、あれでも」千鶴ちゃん、もう少し言い方を!

「……ええ? 何でですか」ホルス君、ドン引きしてるじゃないのよ。

「外人がうろうろするのは不自然だから、らしいですよ。強引ですよね」


 もう、こっちの事は無視していいから、さっさと見世物になりなさいな。


「うーん。この組織、入るの早まったかなあ……」ホルス君、もう遅いのだ。

「はい、何時でも魔法をかけて構わないですよ」

「では、纏めて行きますね、シェープエア、サウザンドエッジ、スクリューウインド!」


 まとめて、三種類の魔法が一度に発動した。ええ? 何それ、早すぎない?


 一つは大きな矢のような風が一カ所に、もう一つは細かい爪のような風がいくつも纏めて、最後のは竜巻みたいな風がそれぞれ流れた。それぞれ結構な威力がありそう。千鶴ちゃんは無敵だけど。


「ああ、俺の魔法はスロット方式で、詠唱を事前に心の中で唱えるだけで十音節迄溜めておけるんです。今のは全部三音節だから、一度に発動出来るんです」


 何と言うか卑怯だ。魔導師という奴は、基本的にビックリ人間みたいな事しかしないのだろうか?


「リズさんは、三音節か四音節位だったよね。封印の奴は十音節位あったと思うけど」

「音節の数と威力は大体比例しますからね。三音節でこの威力は上級者だと思います」


 千鶴ちゃん、解説ありがとう。魔法は守備範囲外だから実際助かる。


「俺の場合『オド』が少なすぎて、四音節以上は唱えても失敗するんです。だから攻撃対象に合わせた魔法で威力を嵩増ししてます」

「頭を使いそうですね、それ。私は肉体強化一本なので、考えるより先に動きます」


 千鶴ちゃんは脳筋タイプだからなあ。そうは言ってもスピードも凄いので、戦争屋ウォーモンガーとか破壊者デストロイヤーと言った方が良いと思う。


「これでも、器用貧乏と言う自覚はありますよ。回復魔法なら、複数人纏めてとか状態異常回復付きとか色々パターンが違います」


 そう言いながら、徐々に回復するタイプと一時的に回復量がアップする魔法を同時に使う。

 それはそれで、卑怯な忍者タイプではないかー。ズルい。あくどい。


「まあ、回復は特に複雑ですね。それぞれの世界でも、何種類かのパターンの組合せですし」

「……とにかく、ホルス君が手数優先で、状況に合わせる技巧派、と言うのはわかったわ」

「ああ、リズさんや千鶴ちゃんは、力こそ正義みたいな感じだから意外だ」ジェームスも酷い。


 やはりホルス君も魔導師としての力と知識が高い。魔道具ではこうはいかないのだ。


「便利そうというか、実際組合せ次第で絶対回避不能、みたいな状況になりそうですね」千鶴ちゃんもべた褒めだ。

「ところで……そろそろ部屋に戻らないか。アキラがずっと引っ付いて来てて……」ジェームス、文句は言わせないわよ。

「それはそれ。たっぷりとイチャイチャして下さい」千鶴ちゃんも、言い方!


「俺の方は大体説明出来ました。特に魔法の覚え方にも偏りはありませんし、バランス型だと思ってください」ホルス君、弱点みたいなものは魔力量だけか。きっちり理論派だし、隙が無い。


「魔導師特有のビックリ能力、みたいなものはあんまりないけど。どんな魔法も覚えるってのが一番ヤバいと思う」

「そうですね。いつの間にか魔法の数が増えて、みたいな感じは珍しいと思います」

「覚えた魔法を使い慣れないと、魔力の変換効率が上がらないので、そこまで便利という訳でも無いんです」


 ああ、そりゃ面倒くさい。魔力が少ないのに、使わないと上がらないのは弱点だな。


「良い事を教えて貰ったわ。じゃあ、千鶴ちゃんとホルス君は毎日訓練をする事になりそうね」

「ええ。飯を食ったら『オド』も回復するので、飯さえ食えれば何とかなります」

「ホルス君、可哀想に……。その発言だけで、どれだけ苦労したか解かるよ……。ちゃんと食わせてあげるからね」時々出てくる貧乏発言に、私はもうこいつは家で預からなければ、と捨て猫を拾った気分だった。



 話は脱線したが、親友を探すにしても手掛かりが無さすぎる。かといって、ホテルの管理で手を離せない。


 年末位までは営業が止められないので、新年辺りに休業を入れよう。本部とリスボン辺りを廻りたい。

 事前に案内を出しておけば、一ヵ月位休みにしても問題無い筈だ。


「解かりました。えっと……それまでは、新しい魔法の慣熟運転をします」ホルス君もマイペースで何より。

「年末の大掃除が忙しくなりますね。準備しておきます」千鶴ちゃんの順応性は高い。


 千鶴ちゃんに関しては、ホテルなんて客商売でまともに働けるか心配だったが、杞憂だったようだ。大変頼もしい限りである。


 お婆さんの占いで、親友の人の足取りが掴めないものか。もしくは諜報チームに捜査を依頼するとか。


「ホルス君。親友の事、詳しく教えてくれる? 特徴とか、性格とか。占いが得意な人が居るから、手掛かりが欲しいの」

「解かりました。姿絵があるので持ってきます」

 

 全員、貿易会社の応接室に戻る。抱き着いた私は、ジェームスに引き剝がされた。むう、生意気だぞ。


「これです、こいつが親友のレイになります」随分と小さいような……まあ、見覚えは無い。ひょっとしたら知り合いが、などと言う良くあるパターンを想定していたが。

「随分、小柄だけど……何歳なの?」

「十五歳の時の写真です。二年前だから……多分、今はもう少し成長していると思います」

「あと、手掛かりになる物でペンダント以外は?」

「痣が……おでこに痣があります。それ位かな?」


 全く、雲をつかむような話だ。一人で生き延びられる位には丈夫そうだが。


「……まあ、地道に探すしかないね。聞き取りすれば、噂位は有りそうだし」私も良い方法が思いつかない。

「少なくとも、ダルイムの街に近い場所だとは思う。『門』の数は限られている」


 成程、ホルス君が来たという事はその辺りしかないか……。「兵馬俑」の可能性もあるなあ。


「ホルス君。君のいた世界に『魔族』は居なかった?」

「ええ、居ます。俺の世界は『魔族』との争いがありました」


 確定で「兵馬俑」周辺かも知れない。「兵馬俑」に入って、他の『門』を探す方が早いかもしれない。


「分かったわ。そこで調査してる人たちもいるし、一度本部で聞いてみる方が良いと思うわ」


 どちらにせよ、そろそろ本部への定期報告をしようと思っていた所だ。


 顔見せついでに、調査を依頼して「兵馬俑」に向かうのも面白そうだ。最近は、こちらの世界が安定して暇が多くなったし、『冒険狂トラベラー』がウズウズしていた。


「本部と兵馬俑、両方探すスケジュールでどうかしら?」

「良いんじゃないか。このホテルも長期休養しても良いだろう」ジェームスは賛成、っと。

「そろそろ、別の世界も行きたかったですし丁度良いですね」千鶴ちゃんもOK。

「……戻れるんですか? 俺の世界に」

「ええ、私と一緒ならすぐにでも戻れるわ。そこでちょっと調査した方が良さそうだし、案内をお願いね」


 やれやれ、来年から暫く休養にする段取りが必要になる。安藤さんやアルバイトの人にも伝えないと。


 私は、久しぶりの探索に心躍らせて、未知の世界を訪れる事に胸を躍らせるのだった。

恋愛系の話を進める事にしました。ちょっとおかしな関係ですが、そういう事だってあるでしょう。


ある程度、やり切ってしまわないとズルズルと伸びてしまうので、恋愛ジャンルでもないので、放置でも良いのですが、流石にねぇ……。もやっとします。


なので、次回には恋愛面に関して、決着させます。

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