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47.航海の成功報酬と建国

「1隻当たりの香辛料の販売価格は、概ね三百万レアルです」と、エリオが査定する。合計五千万レアル、日本円で千億は下らない。随分ぼろ儲けしたものだ。


 私達は両替商に集まり、航海の利益を纏めていた。支援した商人には千二百万、提督に四百万、乗組員全員合わせて六百万という処だ。


 その他会社設立に掛かる、もろもろの費用を含めても二千万レアルは利益が残っている。乗組員の給料を考えても『クルシマ東インド会社』の資金は、数年間は問題なさそうだ。

 

 提督は、前回支援してくれた商人に利子を付けて、前の不足分を支払ったらしい。


「小さい方のマジックバックは、提督に譲るわね。借金返済は、新会社からして貰う事にしましょう。インドに遠征しない間は、適当に交易をしてね」

「そうですな、乗組員の訓練にもなる。アフリカとの往復である程度稼げるでしょう」


 アフリカから金やダイヤを購入して、売りさばく事になるだろう。


 両替商と保険業務も順調だ。各国の両替所も増員した職員で対応するとの事。私の仕事が少なくなって何よりだ。『東インド諸島』の噂であちこち盛り上がっているようだ。


 他国が例のルートを航海するつもりのようだが、まず無理だろう。来島流の操船技術は、今や注目の的である。


 私は、といえば航海中の食料と調理について、保存食開発に忙しい。各船の調理担当と、もう少し便利な保存食を検討中である。


 栄養があって、日持ちする食べ物をあちこちから輸入したり、所属メンバーからの聞き取りで日々会議を繰り返している。


 一カ月程は、その辺の手続きや書類整備とそれなりに忙しい。マリアちゃんの算盤教室は盛況だ。


 スペインの活動も気になる所だ。新大陸の探検と植民地拡大に邁進しているらしい。


 ヴェネチアやイスラム商人達は、香辛料の市場を荒らされて大変な事になっているようだ。


 一通り、リスボンでの問題は解決した事になる。そろそろ、他の世界へ出発する事にしよう。


 エリオやマリアちゃんのお見送りで、リスボンから遊牧民の街へ移動する。千鶴ちゃんとの二人旅になる。


 特に問題は起きていない。随分と久しぶりの陸上の旅は、やはり落ち着くものだ。



 遊牧民の街が見える。相変わらず活気に満ちているようだ。どうやら中国や西の部族との人の出入りが活発になっており、私達の他にも敦煌からの旅人や商人がやって来る。


「お爺さん、ただいま。みんな元気にしてた?」と、大ハーンのゲルで挨拶する。どうやら会議中のようだ。

「お嬢も元気そうだな。遠くへ旅に出たと聞いていたが『海』と言うのはどうじゃった?」


 お爺さん達には『海』の説明はしたが、多分あまり分かっていないと思う。水平線なんて概念がないもの。


「地球の反対側迄、半年間航海をしていたわ。色々な街があって、とても面白かったわ」

「それは良かった。今な、今度のクリルタイの話をしておった」

「何か問題がありましたか?」

「いや、本格的な建国の宣言と、周辺国への外交を纏める予定じゃ。交易の話もあるしのぅ」


 とうとう建国か。随分と時間は掛かったが、ようやくその時が来た。


「それぞれの仕事の責任者を決め、クリルタイに参加する事にした。若い者も出る事になるし、以前のような愚痴ではなく、将来に向けての話し合いになるじゃろうな」お爺さんは嬉しそうに笑った。


 あの時は切羽詰まっていたからなあ。時期が来たら、純粋に催し物を楽しみたい。


「店長、無茶な計画だと思ったが、無事終わったのか。あの銃は役に立ったか?」と、ジェームスが質問する。いつも見ていた顔なのに、何だか久しぶりで顔を合わせるのが少し恥ずかしい。


「そりゃもう。睨みつけるイスラム商人達の顔を見せてあげたい位よ」

「交易の方は、もう引継ぎを済ませて責任者の顔見せも終わった。上海ではお互いの魔道具の知識を書面にして、それぞれ研究を進めるようになったぞ」


 良かった。遊牧民の街は順調そうだ。いずれは、中国の『門』を調べる時間を作りたいものだ。


「魔道具工房も順調に進んでいてな。出来の良い奴を西安に常駐させて、魔道具屋を開く予定になっている。もう『浄水の魔道具』以外も作り始めた」

「こっちの魔道具屋は順調みたいね。ロンドンの方は、すっかり食料品店になっているわ」と、私は苦笑する。自分の蒔いた種とはいえ、そっちがメインになろうとは。


 ともあれ、この分ならジェームスも連れて本部へ行く事にしよう。色々と報告しておく事が多そうだ。


「俺はロンドンに戻る事にする。こっちでする事、殆ど済ませたからな」流石にロンドンを放置出来ないらしい。三人で本部を経由してロンドンに行くとするか。


 フランスの事も気になる。あれから随分と魔道具の入荷量を増やしたらしい。不良品については「そういう物」と判断したようだ。恐らく複製品もそれ位の歩留まりなのだろう。


 私達は、お爺さん達に別れを告げ本部へと向かう。この組み合わせ、中国の旅を思い出して懐かしい。


 本部の呼び鈴を普通にならすと、リズさんが出迎える。


「あら~アキラちゃん。随分と久しぶりねぇ~。航海は大変だった?」

「苦労した分、良い結果になりましたよ。リスボンのお店も順調。新しく貿易会社も作りました」

「へえ~、やっぱりアキラちゃんに投資して正解だったわね~」

「あ、ロンドンのお店の事ですか。無利子・無担保はやっぱり懸念点だったんですか?」


 思えば、あの借金があるから今の活動に繋がったのだ。返済のために駆けずり回っていなければ、両替商も貿易会社も無く、ロンドンでカレー屋だけをのんびりと開いていただろう。


「そうねぇ~、長い付き合いだし。発想と人付き合いの良さはあったから~、お金についての考え方がしっかりしてたし、団長に無断でやっちゃった~」


 え、あの借金リズさんの独断だったの? 無茶するなぁ。


「まあ、幹部皆で『アキラなら息をするように金儲けの話をするから。絶対に返済するだろう』って納得したわ~」

「酷い偏見ですよ。私だって人助けをするのが目的であって、お金儲けはオマケなんですよ」

「だって~。アキラちゃん、お金儲け大好きじゃない。いっつも目を輝かせている癖に~」


 まあ、確かにお金儲けは趣味という事になるだろう。良く目的を見失って、金儲けと言う手段が優先する事もある。だが、偉そうな奴から金を絞って、貧しい人に還元する。経済を回すのは、重要な事なのである。


「ともかく、団長達に一通り報告しますよ」

「はいは~い、いらっしゃい~」


 お婆さんも連れて、団長の部屋に向かう。


『……アキラ、リスボンは順調そうだな。サンダースから都度報告を受けている』

「はい、ヴァスコ・ダ・ガマ提督を副社長にして、利益を貿易会社設立に使う事にしました」

「史実とは少し異なるが、それ自体は問題ないぞ。オランダが植民地を持てずに苦労するが、歴史の修正力の範囲内じゃ」


 歴史と言うのは意外に柔軟性があり、少しのずれなら結果は収束する、らしい。例によって私には難しすぎる。まあ、無茶をしなければ問題は無いという事だ。


『……どちらかと言うと、インドのムガル帝国が成立する時期とイスラムの弱体化が進みやすくなる。だが、多少の時期が前後するだけで大勢に影響はしないだろう』


 まあ、あの銃次第では影響を与えすぎる事になるのは必然だから、提供する量は抑え目にしなければいけない位か。インドとは長く付き合いたいので、そこら辺さえ気を付けておけば問題ない。


「『兵馬俑』の先の世界は、多少情報が入っておる。恐らくじゃが『外れ』との報告があった」

「『外れ』ですか……。残念ですね。でも、機会があれば行ってみたいですが」


「お前さんなら『冒険者魂』とやらが、満足するのじゃろう」と、お婆さんが苦笑する。


「後、残りは遊牧民の村近くと紫禁城ですが……今の仕事量的に後回しになってしまいますね」

「まあ、そう焦るものではない。じっくりと足場を固めるのも必要じゃろう」


 『商人』としての私と『冒険者』としての私。どちらも自分のスタイルである。


 私は、いつの日か世界の果てや自分の居た世界を見つける事を夢に、今まで出会った人達を守る事との天秤で心が揺れ動きながらも、久しぶりのロンドンに向かって出発するのだった。

 香辛料貿易、リアルではこんなもんではないそうです。25倍の利益率とかそんなの。


 大航海時代、恐るべしです。そりゃ一攫千金にもなるだろうさ。


 ロンドン編は蒸気船による産業革命を中心とした商売系のお話です。


 マイナーな偉人達(全員変人)を交えたコメディー系のお話になります。


 なるほど、面白いと気になった方は、評価☆やブックマークを付けて頂けないでしょうか。また、感想などもお待ちしています。

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