25.イベント完了の報酬は
「さてと……無事『呪いの魔道具』を止めたというが」と、お爺ちゃんからの質問。
「これが例の『魔導石』です。多分この『魔導石』自体にも呪いが掛かっているらしくって……」
そうなのだ、こいつの処分に困っている。因みに計ったら2.1インチあった。馬鹿じゃねーの?
古来より大きな宝石には、そういった呪いが掛かるらしい。有名な物だと『ホープダイヤ』がある。嘘か誠かマリーアントワネットを呪い殺したとか何とか。
今はスミソニアン博物館にあるが、アメリカが所有して戦争に負けたとか……一種のロマンではある。
という訳で可及的速やかにこの『魔導石』を封印する、つまり本部のリズさんに丸投げしたい。本部の周りには人が居ないので、そういう意味でも安全だろう。
……そこまで行く間に私に呪いが掛かりそうなので、困っている訳だ。
「ふぅむ、ちょうど良い。わし等にとってはそれほど必要ではないし、これをやろう」と、お爺さんがバッグを取り出した。二人でそれを見て固まった。
『マジックバック』である。しかも四十個の倉庫に繋がっている。国宝じゃなくて世界遺産に入りそうな貴重品だ。中を覗いてみる。
……様々な大きさの『魔導石』に各種魔道具。果てはカシミヤ生地から織物まで、ガッチリ物が詰め込まれている。
「……お、お爺さん。こんな貴重な物貰えませんよ。お返ししますっ」と、言って突き返そうとした私に、
「『墓所』に埋葬されておった物が殆どじゃ。どちらにしろ、わし等には不要じゃ。……そうじゃなあ『救って頂いたお礼としては、ショボいですけど』じゃったかな?」
ぐっ、それは最初に会った時の私の言葉だ。その言葉を出されて、断る事など出来まい。
「分かりました。ここをしっかり建国するまで、放しませんからね。私は商人ですから、対価を払う義務があります!」
「そうじゃのう、わし等の縁はそう簡単に切れそうもないか……老い先短い老人には厳しいのぅ」
その言葉に思わず皆が笑った。
『マジックバックに入れれば良い』という発想はなかった。
そういう訳で大きな『魔導石』をバックに入れた。因みにジェームスは、東西の設計思想の違う魔道具に夢中だ。まともな返事は無理だろう。
「それで清との講和も決まりましたし、そのうち交易隊を出したいと思います」
「ふむ、バックに入れた商品では足らんかのう?」
「いえ。そうではなくて、看板商品を作りたくて」と、私が提案する。
清は人口大国である。河川は流れているが、綺麗な水が手に入りにくいだろう。
「『浄水の魔道具』ここで作りませんか?」
「はあ?」と、ジェームスとお爺さんが同じ反応をする。
「あの魔道具は結構構造が単純で、製品の質が少し低くはなりますが、問題なく使える筈です」
「ああ、なるほどな。俺が少し作り方を教えてやれば、内職出来るな」
そういう事。私が本部に行っている間に進めて欲しいのだ。
「OK、店長。それなら何とかなる。まあ、三人位手先の器用な奴が居れば大丈夫だ。爺さん手配してくれ」
「なるほど。まだこちらに来て間もない者から、希望者を募るとしよう」
という事で、次来る時は中国方面に交易とぶらり旅だ。準備を進めておこう。先に本部に寄って、例の『魔導石』を封印して貰おう。
「リーズさーん、遊びましょ!」と、本部の玄関で叫んでみる。
「は~ぁ~い~」と、打てば響く太鼓の様にリズさんが現れる。
「という訳で、この『魔導石』を封印して下さい。絶対使っちゃ駄目ですよ」と説明した。
なんというか「押すなよ、押すなよ」のコント並みにフラグが経ちそう。
「ふ~ん、確かに良くない気配がするわね~。じゃあ、其処の机の引き出しに入れて~」
私が準備OKと言うと、呪文が始まる。この前より若干短めの詠唱後、小さな輪が出来た。
「小さい物なら、この位で良いのよ~」との事。ともかくこれで一安心。
「あ、それでですね。遊牧民の村から、交易隊を出そうと思っているんですが」
「私は店番やりたくないわ~」何かトラウマでもあったのかな?
「グレッグさんに、三カ月ほどお任せしようかと思います」
「分かったわ~。じゃあ、商品を多めに渡しておいて~」という事で、こちらの要件は終了。
リズさんに挨拶して、ロンドンに向かう。
「すみませんが、延長でお願いします」と、私は店番中のグレッグさんにお願いした。
「……どうせそんな事じゃないかとは思っていたさ」と、少し諦め顔で了承してくれた。
「三カ月もあれば、中国方面の交易も終わります。ジェームスが魔道具を見たいらしくて」
グレッグさんが口を開く。
「随分とアイツと仲が良いみたいじゃないか。そんなに二人きりになりたいか?」
「そ、そんな理由じゃなくてですね」と、否定しようとすると
「俺はどちらかと言うと、お前らが一緒になる方が面白いと思ってな」
グレッグさんは続けて「あの『墓所』で、店長がジェームスの事を良く理解しているなあ、と皆で呆れていたんだぜ」と言う。えっ、あれってジェームスに呆れたんじゃなかったの? 解せぬ。
「……まだ、そういう方面は考えてなくてですね。えーっと」としどろもどろになる。
「すまん、別に無理強いする訳じゃない。ジェームスの奴、結構悩んでいてな。『最近店長がよそよそしい』だったか?」
「えっ、そんな話していたんですか?」
「ああ、フランスとの交渉頃かな。『いつも一定の距離を取られる』とか言っていたぞ」とグレッグさんが笑う。
恥ずかしい……いままでの、そういう風に見られてたんだ。まあ、ちょっと意識しよう。流石に告白するつもりはないが……。そんなこんなで、心のどこかに、もやっとしたものを残したまま、遊牧民の村へ向かう。
無意識にやらかしていたらしい。少し心の整理が必要だろう。
しかし、全員から「もう結婚しちゃえよ」オーラが出ていたとは……。どちらにしろ……とっても恥ずかしいなあ、と思った。
遊牧民の村では、ジェームスを中心に輪になって魔道具の作り方を教えているようだ。
そのうち、この村に『青い鳥工房 アジア支店』が出来そうだな、と私は思いを馳せた。
お決まりのお宝タイムです。後は、恋愛方面を少し。
段々と、リズさんと主人公のタガが外れて来たようです。ギャグパートなので致し方なし。
あと、グレッグさんは良いキャラしてきました。
恋愛関係は、思い出したように進めます。結構後々まで続くイベントですね。




