表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/158

24.誰がローマを殺したの?

 ロンドンに帰還した私を皆でお出迎え。成果を報告しつつ、皆と雑談を始める。


「よくもまあ、あれだけ問題抱えてて無事解決したな……」と、ジェームスが苦笑する。

「まあまあ、皆が支えていたおかげという事なのだろう」と、グレッグさんが言ってくれた。

「それで……これからどうする?」と、誰ともなく言った。多分、皆同じことを考えている。


「……とりあえずだけど、本部だよね?」

「そうねぇ~。アキラちゃんも書類の手伝い、お願いね~」と、リズさんは相変わらずマイペースだ。


 確かに、今回の件は申し訳なかった。ここまで拘束する事になろうとは。ちゃんと手伝うとするか。


「じゃあ、とりあえずグレッグさん。店番をお願いしてもいいかな?」

「そんな事だろうとは思っていたよ。団長によろしくな」


 という事で、皆で本部へと向かう。誰か忘れてない? 大丈夫だよね。

「……まあ、そこまで急ぐ事態はないはずさ」と、サンダースさんが言った。

 さて、本部で、鬼が出るか蛇が出るか……何にも無いと良いなあ。



 ゆっくりと移動を繰り返し数日。本部に到着した。誰も出迎えは居ないはずなので、ベルは押さずに入っていく。


 まずは『お婆さん』の所へ。「こんにちはー。お婆さん、生きてますか?」といつもの挨拶。


「ふぉっふぉっふぉ、アキラか。お主も無事の様じゃの」とお婆さんは笑う。さすがに今回は、いつもの挨拶ではない様だ。

「とりあえず、今の所わしの占いには、何も出ておらん」


 良かったー、私は胸を撫で下ろす。


「だが書類が一杯に溢れておる事は、よう分かっておるじゃろう?」


 お婆さんは笑いながら「では、行くかの。団長も戻っておるよ」と言い、全員で会議室へ向かう。


 リズさんは自室が壊滅的になっている事を確認し、とぼとぼと歩く。まあ、そうなるな。


「団長、ただいま戻りました。フランスの件については、無事解決しました」と報告する。

『……それは良かった。さぞナポレオンは悔しがっただろう』


「あれは多分長くないですね……。裏切られるか、何処かに逃げるんじゃないかと思います」

「天下のナポレオンも、ひどい扱いになったもんだ」と、ジェームスが苦笑し、皆で笑う。


『……さて、ジェームス君のスケッチは確認した。恐らくだが、こいつは過激派の仕業だと思う』

「過激派と言うと『世界を制圧して、支配する』とかいう、あれですか?」


『……恐らく、その生き残りだろう。強大な古代ローマを倒す為に遊牧民を訪れ、彼らに協力し魔道具を作った。遊牧民の力を使って、古代ローマを弱体化させた。そして、あの魔道具を使って遊牧民ごと滅ぼすつもりだったのだろう』


「そこまでして……古代ローマを倒したかったんでしょうか」

『……分からん。虐殺された仲間の復讐かも知れん。分かる事は、過激派の活動が一カ所だとは思えん』


「大昔の出来事とは言え、他にも隠されている可能性はある。サンダース、皆に通達を。可能な限り調査せい」と、お婆さんが指示する。



『……さて、ジェームス君の発明は古代ローマでも解明されていなかった。あの方法以外で解除する事は出来ないと思う。例の原理については、きちんと記録しておくように』との指示に、ジェームスが感動している。

「店長。俺は、あの古代ローマの技術に勝ったという事でいいか?」

「馬鹿ね、ジェームス。そういう事は、終わらせてから言うものよ」と、私は微笑む。

「……ははっ、違いねえ」と、ジェームスも笑う。


 どこもかしこも綱渡りだったが、ようやく終わりが見えてきたようだ。全てを解決するような、万能の能力や攻略法なんてなかった。


 皆が苦しみ、考え抜いて。足掻いた先にあるもの。其処までして届いた、たった一握りの『偶然』と『運命』だったのだと思う。


 それまでの経験や様々な苦労、人との出会いは、自分達の心の中に残るのだ。レベルアップなんてしなくても、私達は強くなれる。明日の我々は、更に逞しくなるのだろう。


「まあ、終わってみればよかったと、言えるような結末にしましょう!」と、私の言葉で会議は終了。


 全員が『おう!』と言って、各自がそれぞれの役割についた。


「リズさん、ちゃんと書類を片付けますよ。もう溜めないで下さいね」

「アキラちゃん、やさし~い。次もお願いね~」「もう手伝わないですよ」と、軽口を叩きあう。


 十日間、拘束された。

 


「じゃあ、私とジェームスで遊牧民の村に向かいます」と団長たちにご挨拶。

「気を付けてね~」リズさんも書類溜めないでね。


 既に要塞建築費用については、返済分を天引きして清算済だ。ちょっと赤字。


 その後は、何事も無く終了……と言いたいんだけど。ジェームスと二人きりって最近なかった。凄いドキドキする。そういう行為が無いのは分かっているのよ。


 ただ、あまりにもアイツは無反応で逆に「色気が無い」ために放置されているのでは、と言う疑念が残る。


 なんというか『乙女心』は複雑だ。


「色気が無い」と言うのは、ジェームスに私の無防備な生活態度を見せているせいだと思う。今まで気にせずに結構やらかしている。寝顔を見せたり、ぼっさぼさの髪でふらふらしたり……。


 おわ、急に恥ずかしくなってきた。ジェームスのくせに生意気だ。

 過剰に気にしても仕方が無いので、とりあえず少し離れて寝る事にした。


 要塞に残った各種物資を二人で協力して片づけた。いざと言う時のための最低限だけ残した。



「おお、お嬢。よう来たのう」と、大ハーン様自らお出迎えだ。

「……今日は『呪いの魔道具』の件だけですよ」毎回魔改造してたしなあ。

「そうか。最近他の村から越してきた者も多くてのぅ。少しずつではあるが、狩りやら放牧やらをやって貰っておる」ふぉっふぉ、とお爺さんはご機嫌だ。


「何か足りない物があったら、言ってくださいね」

「お嬢に恩を返すまでは出来るだけ頼る事は止めようと、皆と相談して決めた。じゃから、よっぽどの事がなけれは頼らんよ」お爺さんも大変だなあ。


 金が無くては生きていけないが、誇りが無くては生きている意味が無い、と言った感じか。まあ、元々自給自足してたしね。それもまたよし。


 という事で、お爺さんと一緒に『墓所』へ向かう。ジェームスは、既に『呪いの魔道具』用の部品を組み立てている。


 『中型魔導石』×四に『大型魔導石』を二十四セット。一体いくらになるのか、想像もつかない。

 四個単位で少しづつ『魔力の変換効率』を変えてある。六パターン分だ。


 取り付けと調整はジェームス。私は下から位置を指示するよう、担当分けをした。


「あ、もう少し上に……行き過ぎなのよ。少し下げて……うん、そこで固定して!」と、結構難しい。


 それぞれの組合せから、無力化出来るかどうか一つ一つ試していく。地味な作業だ。ともあれ、仕事に集中できるのは良い。顔は見えるが意識する程は近くない。心の堤防、今日は平和です。


 

 5パターン目を調整したところで『呪いの魔道具』の様子が変わった。


 お願い。これで停止して、と祈り続ける。結果、何とか『呪いの魔道具』は停止したらしい。呪いの力も少しずつ抜けていくだろう。


「やったー」「よし、完全攻略だ!」と、手を取り合って喜び合う。……あ。私の顔は、一気にレッドゾーンへ。しまった、油断した。


「店長、顔色が……大丈夫か! もしかして『魔法焼け』を?」


 ちゃうんや、あんたのせいなんやで、と心の中で突っ込み。なぜかエセ関西弁である。


「大丈夫だって言ってるでしょ! それより、どの位で無害化される?」

「うーん、実験の時は簡単に止まったが、呪い付きは初めてだからなあ。このまま、完全に停止するまで要観察って所か?」


 まあ三日は掛からないだろう。


「お二人とも、今までわしらの為に力を貸して頂きありがとうございます。これでこの村も平和になりましょう」と、芝居がかった挨拶をする。


 まるで、一昔前のゲームのイベント完了の挨拶みたいだ、と心の中でツボに入った。


「あっはっは。お爺さん、そのセリフはなんなのよ。丁寧な言葉遣いなんて、いらないでしょ。あー可笑しい」と笑いを堪えきれず、大爆笑する。


 今まで我慢していた分、一気に込み上げてきた。2人とも大笑いだ。



 そんな訳で、それまでの間お爺さんと息子さんを交えて『第二回 建国協議会』を行った。たいそうな名前だが、井戸端会議と変わらない。だって権力なんて持ってないもの。


「とりあえず、今までと同じ『十分の一税』とします。あとは……その、土地ですね」と息子さんが弁明する。つまり、部族長が持っている土地があるため、色々とややこしいのだ。もうクリルタイは勘弁して。


「うーん。こうなったら、法律でも決めます?」と、私は慎重に考えながら提案する。

「ふむ、法律とな?」

「そうです、揉め事があった時や重要な事を決める時の基準を作るんです」


 部族長は「貴族」扱いのようだ。警察権や徴税権、軍事権など、あらゆる権力を持っている。将来の為に、中央集権化と立憲君主制。官僚に裁判官、直属兵などなど……、あらゆる権力を奪取するのだ。


 まあ、今の状況で大鉈を振るう余裕があるか……と言う問題はあるが、基本クリルタイをベースにしてこれを導入したいものだ。


 あまり世界の介入を行うと碌でもない事になるが、私はあの元部族長を認めていない。出来れば指揮権と納税だけでも中央集権化しないと。


 やれクーデターだ、やれ部族間の争いだ、などと要らぬ問題を抱え込む事になる。


 ともかく、概念だけでもお爺さんと息子さんに伝授せねば……さあ、お勉強の時間よ!


 ……長く苦しい戦いだった。ようやっと、二人とも『権力』の怖さを実感したようだ。


 国を造るなら、この三倍は理解しないと。

 

 私は、補習が必要そうな『偉大なる大ハーン様』に微笑んだ。

イベント&建国&恋愛回。初期の大体のイベントが終了しました。


次の回で、遊牧民の村編は一旦終了です。


やはり非文明国からのステップアップは、法律でしょう。


建国は、ロマン成分。この物語の主軸は「ロマン」と「変人」なのです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ