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16.悪事を企む時は、密やかに大胆に徹底的に

「……うーん」


 三人とも悩んでいる。流石に列強フランスへ喧嘩を吹っ掛けるというのは、躊躇しているようだ。


「ふふっ、いいのよ。これはイギリスに売られた喧嘩なの。最初にイギリスから殴らせるわ。まず、その模倣品と一緒に特許庁へ報告書を出しなさい。正式な手順で訴えさせるのよ」


「……それでは、フランスは『国は関与していない』と、突っぱねるだけでしょう」と、サンダースさんは答えた。

「そうね。でもそれで、こちらは自由に動けるわ。それにイギリスには貸しを作る事にもなる」


「なるほど。それで此方からは、どのように動く?」と、質問するグレッグさん。


「まず、イギリスの交渉中は、ウチからの納品は全て停止させるわ。当然でしょう」私は微笑む。


「なるほど、ウチから横流しをしている商人からの魔道具は、フランスに届かない、と」気が付いたのか、にやりと笑うジェームス。


 やはりこいつの本性は『クズ』である。この手の思考は得意だろう。非常に悪そうで、頼もしい限りだ。


「……フランスから、いえ貿易商からは抗議が来るでしょうね。『でっち上げだ』と言ってくる。私はそう思うわ」


 いかん、思わず顔が歪む。今は鏡を見たくない。


「無視しますか?」

「いいえ、直接殴り込みに行くわ。それで、三倍の値上げをするか取引を停止するか選ばせるのよ」


 本当なら五倍は吹っ掛けたい所だが、抑えておこう。


「いや、まったく酷い事をしますねー」と、言うジェームスは嬉しそうだ。

「あら、私達は商人よ。儲けを出すのは当たり前じゃない」一応反論しておく。


「……後はそうね。あら、三倍にしたら横流ししていた商人達は買ってくれなくなるわ。残念ねー、余った魔道具はイギリス海軍に売る事にしましょう、安値で。もう赤字が出て困るわねー」と付け加えた。


 もう全員、私の意図を把握したようだ。まったく悪い奴らだ。


「それに『何故か』フランスに売った魔道具には、不良品や暴発する物があるかもしれないわね」


「そうだな。俺も『何故か』は分からないが、不良品や誤作動する魔道具を作ってしまうだろうな。さてどれくらいの割合で?」と、聞くジェームス。うんうん、頼もしいよ。その『クズ』さ。


「そうねえ、三割が不発、二割が暴発。……戦争したら、どうなるのか楽しみねぇ」


 こちらの怒りは限度を超えている。フランスには悪いが、国庫が空になるまで搾り取ってやろうと思う。


「よし。俺は店長に賭けるぜ。フランスの奴らを黙らせて、笑って店長が帰ってくるのに、百ポンドだ」ジェームスのいつもの口癖。


「馬鹿ね、ジェームス」私は微笑んだ。


「……それじゃ、賭けにならないでしょう」と言って、皆で笑い合った。



「……しかし、相手は、あの『ナポレオン』だ。正面切って勝てますかね?」と、グレッグさんが言う。


「そうねぇ。『全国民から支持された大英雄のナポレオン』に勝てる相手なんて居ないわね。私だって無理よ。でもね、今のナポレオンに味方なんて居やしないわ。『たった一人のナポレオン』なのよ」


「……確かに、私は弱いわ。此処に居る皆、ジェームスやグレッグさん達。それだけじゃない。私はいつも、皆に助けられてきた。本部の人達にロンドンの住人。……皆が居なかったら、私はこの場所にさえ立つ事も出来なかった。……私の後ろには、いつも沢山の仲間が居たのよ」


 私は、全員の目を見て言い切った。


「だから勝てるの。『たった一人のナポレオン』と『皆と一緒に、戦って来た私』絶対に圧勝できるわ、当然よ」


 全員、嬉しそうに笑っていた。



「……さてと、楽しい楽しい『フランス虐め』はこれ位にして」


 お爺さんからもらった『魔導石』を机に置いた。皆の視線がその一点に集中する。


「……いや、店長。悪い事は言いません。素直に自首しましょう」


 おい、何処の世界に店長を警察に突き出す従業員が居るのか。盗んでないってば。


「どこから入手したんですか?」と、グレッグさんが質問する。

「遊牧民の村ね。あそこに『魔導石』の産出地があるの、それも凄い量の……」


 三人は、その意味を理解する。


「いや、不味いですよ。あそこは大国に挟まれた緩衝地帯ですよ。そんな物があったら、何時戦争になるか……」サンダースさんが動揺する。


 私もそう思うのだが、あるのだから仕方がない。


「だから、皆で考えているんじゃない。どうすれば、この問題を解決できるのか。……これだけじゃ無いわよ。もっと凄いのもあるんだからね!」


 ……酷い話だ、全く理不尽である。


「やはり……団長の所に行くしかないかと」と、グレッグさんは言う。

「……だよね」私もそう思う。


 そういう事で難しい事は後に回して、さっさとフランスを虐める準備をするのだ。


 そして、全員に指示を出した私は、ベットにも戻らずソファーで寝た、と言うか……疲れで意識が飛んだ。


 気が付いたのは、次の日の朝。誰だか毛布を掛けてくれたようだ。とりあえず、頭がすっきりとしたのを確認して皆で本部に雪崩れ込む事にした。



『……うむ』団長は一通りの話を聞いたのち、固まった。


 そりゃそうだ、一度に問題が起き過ぎなのだ。もう少し何とかならなかったのか、と私が思っていると意見を出す人が居た。


「とりあえず『門』がある敦煌を取られる訳にはいかない。そうなると、補給も帰還も出来なくなるからな」ジェームスが先陣を切った。


 ……確かに、そこは不味い。だが清を相手にどうすればと考える。


『……確かに言うとおりだ。敦煌に砦を築いて、魔導師を中心にして防衛戦を行う』


「しかし、そうすると時間稼ぎは出来ても、いずれ押しつぶされるぞ」お婆さんは反論する。


『……ロシア側を、まず片付ける。騎馬隊を二つに分け、中央アジアの他の反ロシア部族と手を結ぶ』


 確かに味方が多くて、困る事は無い。あの辺の国は、何処もロシアの攻撃に晒されている。手を組むのは容易だろう。


『その上で、騎馬部隊を編成して首都に向かわせる。恐らくロシアは、それを防ごうとする筈だ。もう一方の騎馬隊で、遊牧民の村から一気に側面を突く。ロシア軍が撤退したら、反転して敦煌に向かう』


 それは確かに可能かもしれないが、騎馬隊の移動距離はどうするのか……。千キロを何日で、と考える。


 いや、マール君を育てる程の遊牧民の村なら可能なのか? と悩む。


『……これは電撃戦だ。普通ならまず不可能だが、これしか勝つ望みは少ないだろう』皆を見回す団長。


 多分、皆不安に思っている。実際これは、連携がかなり厳しくなる。どこかで、情報のやり取りを間違うと全滅する可能性があると思う。しかし……。


「後は、遊牧民同士がどこまで協力できるかに掛かっている。『クリルタイ』の結果次第だ」と、グレッグさんが言う。


 そして、私がその『クリルタイ』で確実に矢面に立たされるのですが。


『……私も行く。他に行く者は?』団長のサポートで何とか。


 ……正直、誰でもいいから来てください。お願いします。


「アタシもいきま~す。例の『墓所』で、力になれるかもしれないし~」リズさんが手を挙げてくれた。


「同じく。魔道具関連なら、何とか出来るかもしれないし、その魔道具も見たい」ジェームス。いや君は強制参加枠だぞ、実際。


 という事で、情報・連絡関係でサンダースさんが参加。お婆ちゃんとグレッグさんは、フランスとの交渉のバックアップと、敦煌防衛部隊の編成を担当する事になった。


 とにもかくにも、我が『青い鳥』の総力戦だ。これで失敗したら、引き籠るしかない。


 ああ、私は大人しく穏やかに、お金が溜まっていくのを眺めて居たいだけなのに……。


 これが終わったらガンガン稼ごうそうしよう、と心に誓った。


 いつ終わるのかなぁ……。

 わるだくみ、たのしいれす。


「主人公が強いっ!」ではなく、「仲間がいるから強いんだっ!」と言う方向で。


 強いて言うなら、「相棒バディ系」を目指して物語を進めます。


 スキルなんてなくても強い奴は強い。経験を積めばそうなります。人生ってそういう物でしょ。


< 史実商人紹介 >

実際、そこまでエピソード持ちの商人と言うのも居ないので、有名人でエピソード持ちの人物を商人目線で見るといういい加減諦めればいいのに、と言うこのコーナー。戦国時代から2名を紹介。


北条 早雲(1456-1519)

 室町・戦国時代の大名。後北条家の初代である。あまりゲームには登場しないが、下剋上の代表とされる。どうやら、家系的に室町幕府の政治を司る伊勢氏の一族なので、内政が得意というのは当たり前かもしれない。

 北条家と言うと、いまいちメジャーではない印象もあるが十分チートである。四公六民とか、他の国からしたら絶対に無理な税金の取り方だし。それだけ内政重視と言える。かなり商人力が高い。後は、子供や孫にハズレ無しと言うのも好ポイントだろう。


武田 信玄(1521-1573)

 戦国時代の大名。何故かゲームに出ては過剰評価される代表である。一説では、こいつをMAX基準にして能力を査定している疑惑がある。統率や武勇はともかく、知略や内政が高いのは何故なのか?

 絶対脳筋である。そもそも死後三年は情報を伏せよと言っておきながら、すぐバレているエピソードは無視ですか?都合の悪い事が、全て息子に回ってくるシステムは都合が良すぎる。良い時期に死んだよね、と言う感想しか浮かばない。

 信玄堤がどうとかこうとかいう奴もいるが、そんな事は誰でもやっているのである。徳川家康に勝ったからと言う理由で、江戸時代に過大評価された代表だろう。

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