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136-1.いかさま博打と、トゥルーエンドへの道

「バカバカバカ、ホルスの馬鹿っ! 何よ、無茶ばっかりして!」

「……生きて帰って来たんだ、約束守ったろ」

「レイがいなきゃ、死んでたじゃないのよ。男って馬鹿ばっかり!!」


 事の顛末は、色々と聞いた。……破壊神と因縁があるのは、知っていたけどね。


 何も、自爆覚悟でブラックホールを作るんじゃないわよ。私だって、素手でやった事は無い。


 オメガに積んだ大砲で打ち上げるから上手く使えるんであって、間違っても手で投げるものじゃない。


「男って本当に馬鹿よねぇ……。ジェームスといい、ホルス君にレイ君も……」


 破壊神の欠片を手に入れる為に最前線に潜り込み、ナノマシンの性能を確かめようとはしゃいでいたジェームス。今は、口もきいてやらない罰を実施中。


 ……そもそも、ピンチではあったけどそこまで無理する必要無かったよね?


 最終決戦だ! と焚き付けたこっちにも責任はあるかもしれない。だけどねぇ……。



 ……しかしまあ、あっけないものね。あれほど恐れていた破壊神も作業の一環で倒されてしまった。要するに我々はやり過ぎてしまった訳だ。


 こちらの動揺と悲壮感を返して欲しい。破壊神本体が七体出て来た時は、本当に終わりだと思ったのに。


「お母様、お疲れさまでした。無事に破壊神を倒す事が出来て、安心と判断します」


「アルファ、また来たの? こっちも立て込んでいるから後にして欲しいんだけど……」


「そうもいきません、この世界を封印する必要があります。今、リズさんに神々が加護を与えて準備中です」


 ナノマシンが思ったよりも増え、誰かさんが無茶をしたせいで予定よりもマナが枯渇している。あと一時間もしないうちに、この場は完全にマナが枯渇するだろう。


「……そうね。とりあえず皆も無事だし、さっさと城に戻るとしましょう」


「はい、お姉様。思う存分ムラトさんと無事に終わった事を喜びます!」


 ……おお、お熱い事で。まったく、新婚さんは良いわねぇ。こっちは、依然コミュニケーション不可で絶交中なのだ。メルちゃんも泣きじゃくっているし、他のメンバーは酷い有り様なのに。


「それじゃあ、皆で凱旋するわよ! 胸を張って『俺達は世界を救った』って自慢するわよ!!」


『おうっ!』


 とにもかくにも、やるだけやったのだ。一刻も早く成果を知らせてあげよう。一時は死に別れるかと苦悩したのも過去の話。ボロボロだけど、死人が出なくて良かったわ。


 そう、ボロボロなのだ。……オメガもほぼ全損。ホルス君は、左腕を失った上で魔法も使えなくなった。レイ君もあちこち傷やら欠損やらで酷い有り様。


 私はと言えば一応無事なのだが、戦争前に貰っていた身代わりの魔道具は全て壊れていた。……今になって無茶をしていたと実感する。


「人の事は言えないわねぇ……。むしろ、ジェームスには感謝しなきゃ」


「そうですよ、お姉様。無事に生き残った事を喜んでください! ついに『見知らぬ明日』が訪れるんですよ」


「『明日』ねぇ……とにかく疲れたわ。ゆっくりと寝たいわね」


 もう、精神的に一杯一杯だった。これ以上はもう耐えられない。随分と長い間、空元気だけで踏ん張っていた反動だろう。


「ふぅ……やっと終わるのね」


「そうもいきません、お母様。やらないといけない事は山積みなのです!」


「アルファ、流石に今は駄目! ちょっとは休ませなさい!!」


 もう、破壊神はいない……。いつ世界が滅びるか、ビクビク怯える事も無くなるのだ。それだけでも安心出来る。


「……では、改めてお伺いする事にしましょう。その『明日』に向けての後始末ですから」


「後始末、って……何か嫌な予感がするわねぇ」


「お母様にとっても、悪い話ではありませんよ」


 その言い方が気になる……気になるのだが、もう無理だ。


 ……私は、千鶴ちゃんに全体重を任せて目を閉じる事にした。今は何も考えたくはない。ゆっくりと眠るのは、何時ぶりだろうか。


 こうやって休んでも、世界は破滅しない。……今はそれだけで良い。体の力が抜けて、ゆっくりと夢の世界に誘われたのだった。



「お母様、良い機会なので説明します!」


 夢の中でアルファがやって来る。……またこのパターンか。


「いい加減にしなさいよ! 別に夢に出なくても会えるでしょうが!!」


「確かにそうなのですが……お母様にはお伝えしないといけない事があると判断しました」


 このポンコツ女神には「プライベート」などと言う概念は無い様だ。どうにも、ポンコツなのは相変わらずだ。こいつは、早くどうにかしないと。


「破壊神本体は滅び、あの世界も封印されました……ですが、輪廻し続けた世界を改竄する必要があるのです」


「……改竄? どういう事よ」放っておいても良いんじゃないの?


「本来、世界は一つだったのですよ。輪廻する事で世界が増殖してしまったのです」


「つまり、私がやり直しをする度に別の世界が出来た、って事かしら?」


「そうです。創造主様の力も借りて、元の状態に戻す必要があります」


 創造主って誰なんだろう? 行方不明じゃなかったんだ……。


「もう一つ、重要な事が。私の管理する『集合精神体アガスティア』には、繰り返した分のお母様の魂が残っています」


「それって、つまり六万体分の私が溜まっているって事?」


「そうなのです。仮初とはいえ、一回分の人生です。放っておいては、均衡が破れます」


 今まで、そんな酷い状態だったのか。……非常事態とはいえ、無茶をした結果とすれば納得は出来る。


「そういう訳で創造主様との話し合いが必要なのです。創造主様は、自らが作った世界に介入する事を好みません。ただ『あるがままに有れ』と。そう言うお方なのです」


「……ふぅん。良くは知らないけど、良い心がけじゃない。どっかのポンコツ女神に聞かせたいわね」


 本当に、こいつは無茶な介入ばっかりするし。ちょっと、教育が必要かしらね?


「どちらにせよ、私としては『地には平和を。人には愛を。どうか、願わくば幸せな記憶を』という望みがあります。その為に尽力するつもりですので、宜しくお願いします」


「ねえ、アルファ……詳しく教えて欲しいんだけど……鎖の中の私って、本当に前回の事? 断言していなかったわよね?」


 アルファは、少し悩んだ後に決意を決めて、言い放った。


「仕方ありませんね……お母様には敵いません。そうです、私の名前も鎖のお母様も、前々回のお話です……見破られるとは、思いませんでした」


 そうなのだ……過去の私である事は分かったが、『宝玉』を誰が造ったのか? それが分からなかった。


 今ならわかる……あれはきっと前回の私が作る事になったし、あの中にも私がいる。


 ……鎖の暴走で二人の私が出来た事で、タイムリープした私は確信した筈だ。


 もう一回やれる、と……。


「ここからは、私のお願い……もう一度、私を元の時間軸に戻しなさい、アルファ。出来るんでしょう?」


「えぇ、そう言うと思っていました。ホルスさんやメルさん達を無茶させない為ですよね……」


「そうよ、鎖と大太刀の扱いに慣れた今ならやれる……私一人でも、破壊神達を倒せる!!」


 例え、それが何十体に増えたとしても、鎖があれば幾らでも対処できる、と自信を持って言える。


 だから、最良の未来を迎えるために……過去の私の努力を、無駄にしないために。


「お覚悟は良いですか? 辛い旅になりますよ……」


「ふん、どうせアルファの事ですもの……そいつもまとめて、幸せにさせるつもりでしょ?」


 ……私とアルファは、にっこりと笑う。


 例え、どんなに険しくとも私は負けない。迷いなく最善の道を突き進む!!


 それが『冒険狂(トラベラー)』という生き物なのだ!!

という訳で、二週目に突入します。


タイムリープものの醍醐味です。もちろん史実が前倒しになりますし、ちょっとだけ変わります。


ホルス君達もスッキリとしましたし、主人公も覚悟を決めました。


あらゆるものを使って、『運命』から逃れる。


そんな二周目を行う予定となっております。

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