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135.みんなの力をひとつに合わせて

 マズイ、どうにも手詰まりだ。鎖を編み込んで強度を持たせて、破壊神に巻き付ける。鎖がマナを吸い取るには、もう少しダメージが必要なので抑え込むので手一杯だ。


 何とか一体には鎖をぶち込んで倒せたようだが、残り四体を完全に押し留める事が出来ない。


 流石に五体を相手にどうする事も出来ない。先程から二体を鎖で拘束して、残り二体を何とかしようとするが、破壊神の動きは素早い。


「あんな巨体で何で高速移動が出来るのよ! ズルいわ、もう嫌っ!」


 愚痴をこぼしても、どうにもならない。とにかく、こちらの死角になる様にあちこちに動き回るのが困る。


 一気に倒すにも火力が足りない。……何とか、皆が来るまで時間を稼がないといけないのに。


 あっ、今ならいける! チャンスだ!


 ……こちらから距離を取ろうとした一体の足を鎖で封じ込める事が出来た。だが残り一体の処理はどうしようか?



 向こうの方でも派手な破壊音が続いている……。こっちで足止めするのにも限界がある。それぞれの破壊神が、鎖を引き千切ろうと引っ張り続ける。既にオメガの手足が伸び切っている。


 お互いギリギリの状態でこちらも動けない。もうオメガの出力は、限度一杯まで届いている。指一本動かせない状態だ。


 いずれは、関節部分や装甲がやられるのは時間の問題だろう……やっぱり、五体相手は無理があったかもしれない。


 味方を殺させないために無茶をし過ぎた。後は、残り二体を倒して貰ってこちらのサポートをして貰うしか手が無い。


「くっそー、何だって破壊神がこんなにもいるのよ。卑怯だわ!!」


 文句を言っても始まらないのだが、残り一体があちらに向かわない様に必死なのだ。


「皆、大丈夫かな? いざとなったら近距離でブラックホールで吸い込むしかないかも……」


 破壊神を確実に倒せる手段となると、限られてくる。鎖の魔道具も引き千切られない様に全力で魔力を込めている。魔導石に魔力を込める時間も取れないので、オメガが壊れる前提で自爆覚悟の方法しかないか?


「……考えろ、何か……何か良い手は? 上手い鎖の使い方を考えないと」


 鎖の操作は手足を動かす位には慣れている。多少オメガが壊れても良い。巨大な破壊神に一撃入れる方法は……。



 ガチガチに編み込んだ鎖に刀を持たせる事にした。……こんな使い方はやった事が無い。頭の中で、自分の手の様に鎖を操り、イメージするのは巨大になった私が大太刀を構える姿。


 オメガを操作して示現流での一撃を入れるのだ。オメガで出来るんだから、鎖だって集中すれば、同じ事が出来るかもしれない……。もう、ちょっとやけっぱちにもなる。


 とにかく、何でもいい。この状況を動かせるのなら、何だってやってやる!


「すう、はぁ―……。行くわよ、破壊神! これでも食らえっ!」


 こちらからすり抜けようとする破壊神に、唐竹を割る様に頭部に一撃を加える。


 地面まで一気に降り下ろすように、鎖を操る。角度や踏み込みも十分ではないが、とにかく少しでも早く鋭く降り下ろすのだ。


 頭部から肩口に掛けて切り落とす事が出来たが、そこまでだった。


 やはり、慣れない動きではどうにもならない。大太刀が変な方向に弾き飛ばされて、手持ちの武器が無くなった。つまり打つ手無し、という事だ。


 ……いよいよ、自爆覚悟のブラックホールを発動させようか悩んだ所で、視界の外から飛んで来る物があった。


 矢だ。切り損ねた破壊神に向けて大量の矢が突き刺さり、爆発していく……。


「お爺さん達、間に合ったのね!」

「お嬢、わし等の力全てをお前さんの為に使うと、あの時に決めておった。ようやく借りが返せるわい!」

「そっちの破壊神は、倒せたの?」


 こんなに早く援軍が来るとは思わなかった。もしかしたら、全滅するかもと心配していたのだ。


「ホルスの奴が無理をしおってな。十分に余裕をもって倒せたわい。……全く若いもんは無茶ばかりしおって」

「お姉様、大丈夫ですか! 今から全軍で破壊神を攻撃します。さっき倒した方法なら、何とかなります!」


 千鶴ちゃんの声を聴いてようやく安心出来た。


 ……ホルス君達、何をやったのか。詳しい事は後にするが、どうせ碌な事じゃないだろう。多分、自爆覚悟の何か……私と同じ発想で無茶をしたのだろう。


 とにかく、誰も死んでいない事は確かだ。こっちのやる事は、千鶴ちゃんや魔王軍に破壊神が行かない様に抑え続ける事だけだ。


「もうひと踏ん張りしてやろうじゃないの! こっちは、我慢の限界よ。いい加減にくたばれ!」


 一人怒気をまき散らしながら、残りの魔力を鎖の魔道具に流し込む。上手い具合にダメージを与えたので、マナを吸い取って倒す事が出来る。


「死ねっ、塵になってしまえ! もう、アンタ達の顔は見飽きたのよっ!!」


 思わず、言葉が荒くなってしまう。……自爆するかどうかまで、悩んだのだ。これ位は仕方が無いだろう。


「お姉様も問題無いみたいね。さっきの手筈通り、魔族四天王で体勢を崩して一般兵で攻撃。最後の一撃は私が行きます! 良いわね、皆!」

「サー!、イエス、サー!!」


 フェンリル君が首筋に噛みつき、トール君とヒサ君が頭部から一気に切りつけ、リンちゃんが足を「ほろびの歌」で攻撃していくと、破壊神は一気にバランスを崩して地面に倒れ伏した。


 そこへ全方向から兵士達が銃剣で一気に襲い掛かる。……あっという間に、グズグズになった破壊神が結晶化していく。あっという間に一体、また一体と解体されていく破壊神達。


 ……いつの間にそんな連携攻撃が出来るようになったのか。必死に苦しんだのが嘘の様だ。


 ともかく、皆の力を合わせて破壊神達を滅ぼす事が出来るのは間違いない。


 良かった……ようやく、長い戦いの日々も終わりを迎えるのか……。


 私は世界を救った実感も無いまま、機械的に解体される破壊神を見つめながら、微妙な感覚を味わうのだった。

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