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13.黒歴史を掘り返してはいけない

 とにかく難しい会議は、一旦終了。取り留めも無い世間話が始まった。


「エリオさん家のマリアちゃん、すっごい可愛いんですよ。大きくなったら『青い鳥』に入りたがるかも」と、私はリスボンでの休暇の話をしていた。


 「アキラちゃんが~、やっと真っ当な生き方を出来るようになったなんて~」私は何時でも真っ当に生活してますよ。

『……一度、他の世界を見せるのも良いかもしれん。無論、大きくなったらだが』と、団長。可愛い子供には、勝てないのかもしれない。

「お前さんが、時々旅の話をしてやるだけでも喜ぶじゃろうな」とは、お婆さんの話。


 マリアちゃんに対する反応は、親か孫に接するそれのようだ。私も年の離れた妹のように思っている。


 『門』が見れるか試した事は無いが、出来るのであればロンドンを案内したいものだ。



 ふと、『タイムパトロール隊』の事を思い出した。此処では、どんな反応になるのだろうか?


「そういえば、私がこの組織の活動を『タイムパトロール隊』って言ったんですが、皆に凄く笑われてしまって……」と、ふと漏らすと三人がおかしな行動を始めた。


 団長は、『……お前もか』と呟いたまま頭を抱えた。こんなに動揺する団長を見るのは初めてだ。

 リズさんは、と言うと顔を机に伏して恥ずかしがっている。耳まで真っ赤だ。お婆さんは大爆笑してた。


 えっ何なの、この反応?と思う私にお婆さんが説明を始める。


「お前さんが来る前、リズは時々事件に参加しておってのう。まあ、元々他の世界に行く事も少ないので、気持ちが高ぶっておったのじゃろう。少し前に見た絵物語の影響を受けて……」


 リズさんは、「やめて~!」と言う顔で、お婆さんの肩に手を置いた。何があったのか?


「いざ、事件の首謀者を見つけると『我ら、世界を守るタイムパトロール隊っ!』と叫びおった……」


 うわぁ……それはそれは。私はリズさんに慈愛の目を向けた。「お婆様、それは言わないでって約束したのに~!」と、少し涙目のリズさん。


 私が「それで?」と、聞くと「何もなかった……」と言うお婆さん。


「特に活躍する事も無く……事件は解決した。参加したメンバーは、無言だったそうじゃ」


 そりゃみんな笑うわ。あの沈着冷静なリズさんが、そんな事をしていたなんて。思わず私は大爆笑した。


 ……あれ、つまり私とリズさん同じセンスの持ち主って事じゃ、と気づいて黙る。そこにリズさんからの反撃。


「……そ、そういうアキラちゃんこそ『レベル』上がった~? 『冒険者ギルド』は見つかった~?」とか言いだした。そ、それは止めて。その話は私に効く。



 この世界に来た時、最初に話をしたリズさん。此処が異世界だと分かって、色々な質問をした。


 当時、流行っていた『異世界ファンタジー』の本を読んでいた私は世界の仕組みについて聞いてしまったのだ。


「……えっ、スキル、無いんですか?」「そりゃ、努力すれば身に付きますが何にもしないで、そんなもの手に入ります?」とか「冒険者ギルドは? レベルは?」「そんな物は無いです」だの、「ステータスが表示されたり、とか……」「えっ、才能を数値に出来るんですか?」と言った具合だ。


 よりにもよって、相手はリズさんだ。無意識に毒舌を吐きまくるので、当時は凄いショックだった。


 そういえば、私が魔法を使えないというのも残念だった。


 だけど、魔道具があれば魔法が使えると知って魔道具に凄い憧れを抱いたのも、その時の事だ。


 魔道具が物凄く高いと聞いて、お金儲けを始める切っ掛けでもあった。



 まあ、それ以来その時の話は忘れよう……と思っていたのだが。いかん、こちらも顔が赤い。多分耳まで真っ赤だろう。


 お互いが壮絶な相打ちとなっている中、お婆さんはあいも変わらず大爆笑している。


 いかん。話を逸らさないと……と、考えていると。呼び鈴が鳴った。あれ、誰か来たのかな?


 しめた、とばかりにリズさんが飛び出していく。あっ逃げたな。よし、あのネタはちゃんと覚えておいて何時か言ってやろう。


 何なら、二人で『タイムパトロール隊』を結成するのも良い。……鉄板ネタだな、これ。コスチュームも揃えて決めポーズでも考えよう。



 そんな事を考えていると、意外な人がやって来た。サンダースさんだ。ロンドンで何かあったのだろうか。


「会議中、失礼します。緊急報告がありますので、急いてやって参りました」きちんと挨拶をするサンダースさん。

 まさか、今までふざけて大爆笑していましたなんて言える筈も無い。


「……それがですね、ナポレオンが皇帝に即位しました」


 確か、ナポレオンが皇帝になるのは数年後に国民投票して、祭り上げられる筈。


 何で今?と、私は首を傾げた。


『……歴史が変わったか。国民選挙はどうしたのだ?』と、団長が質問した。

「そ、それが……強引に皇帝の即位式を始めたそうで、国民は驚いているそうです」

『……焦っている、かも知れん。……フランスには魔導石が無い。戦争に勝てなくなる前に、とでも思ったのだろう』



 せっかく、フランスには一定量の『小型魔導石の効率化』を行った魔道具を売っているのだ。それも、戦争を防ぐために。そこまで追い詰められているとは思わなかった。


「……これで、歴史が十年は早回しになるか。ナポレオンが皇帝から、引きずり降ろされるのが早まったやもしれん」


 どういう影響が出るか分からない。いきなり大規模な戦争が起こるのか?それとも、史実にない展開になるのか想像もできない。


『……今すぐ動く必要はない。だが、何かあった際の担当はアキラとする』

「そうじゃな、ロンドンに居れば動きやすいじゃろう。サンダース、お前がサポートしてやれ」と、指示するお婆さん。


「アキラちゃん、無理はしないでね~。お姉さん心配だわ~」

「まあ、出来る事をしてみます。こっちも無関係ではないですし」


「アキラ、ロンドンでの物資集めは完了している。一度ロンドンに寄って打ち合わせを行いたい」言われるまでも無く、そのつもりだ。



 しかし、史実と違う動きと言うのは対応を考える場合、実に困る。

 色々想定して対策を練らなければ、と私は考える。まさかナポレオンが暴走するとはなぁ……。


『……アキラ、ロンドンはお前が住む街だ。お前が決め行動するべき事だ。しっかりと頑張りなさい』と、団長は励ましてくれる。


 そうだ。間違ってもロンドンの人達が苦しまない様、ちゃんとしないと。私はあの街にいる皆の事を考える。


 ともかく、急ぐ必要がある。サンダースさんと一緒に、ロンドンに向かう事にした。遊牧民の村へも行きたいのだが、それもどうなるやら。私は深い溜息をついた。



急いでロンドンに戻った所で、状況確認を行う。いつもの三人が集まり、フランスの状況を聞く。

 

「急いで帰ってきて貰ったのだが、実際それほどの動きは無い」という、グレッグさんの説明。どういう事だろうか。

「ナポレオンは、周囲の反対を押し切って、無理矢理皇帝の座に就いた訳だ。

 おかげで野党や国民は、大反対。フランス革命でようやく手に入れた、民主主義を昔に戻すのか、って事」と、ジェームスの補足。


 なるほど、史実で勝ちまくった、英雄ナポレオンではなく、独裁者になっている、という事か。

「だから、その辺の対応で動けないのさ。まあ、数カ月はダンマリだろうぜ」と、言う結論になった。


 そういう事なら問題ない。数日は様子見して、情報収集の結果を見てから遊牧民の村に行こう。

 キャラを立てるって難しい。話が進むにつれ、勝手に動き出すとは思っているのですが。


 シリアスの後にコメディーを挟むのが、作者のやり方です。まあ、そう言うものだと思ってください。


 女性二人組が、世界平和のために活動するのは……。恐らくキュアな感じのアレでしょう。多分、初代の物理系の奴。


< 史実商人紹介 >

 何だか、もう目的と手段が逆になっている気がする、このコーナー。永遠のライバルであり、不倶戴天の敵でもある世界的な発明家2人を紹介。


トーマス・エジソン(1847―1931)

 アメリカの発明家。「発明王」「努力の人」として知らぬ者は居ない偉人である。……なのだが、この人あまり「発明家」とは思えないのだ。実際今現在使われている彼の発明は「トースター」「電気椅子」百歩譲って「蓄音機」以上!

 えっ、「白熱電球」は? と言われそうだが、竹を使って長持ちしました、ってだけだ。最終的にタングステンでいいじゃん、となった。

 他にも特許の件数は多いが、この人が居なくても誰かが発明したんじゃない? と言う気がする。どちらかと言うと「銭ゲバ」とか「訴訟王」の方が似合う。「商売人」としては有能なんじゃないかなあ。


ニコラ・テスラ(1856―1943)

 セルビア系アメリカ人の発明家。特に二つ名は無いが、こちらも有名な偉人だ。現代に残る彼の発明は「交流電流関係の『全部』」「無線操縦」「非接触充電」「ラジオ」「電磁調理器」「FAX」等など、という量より質な感じ。

 この人が居なかったら、電気関係の科学技術は明らかに停滞したのは間違いないだろう。エジソンとの「電流戦争」があった訳だが、当然完全勝利である。


 何というか同じ発明家ではあるが、ゲームで例えると「アイワナで死にゲーする奴」と「多分これが一番早いと思います、というTASさん」って感じ。どっちがゲームが上手いかと聞かれたら、当然後者だろう。何故か、そこら辺は世間的に認知されていない。「発明家」であり「実業家」としても最強クラスの人だと思います。

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