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115.我らが魔王軍を編成しよう

「アキラ、どうした突然やって来て? まだ例の魔道具は完成していないぞ」ジェームス、嫁相手にその態度はどうなのよ? ちょっとは歓迎しなさい。だから『倦怠期の夫婦』なんて言われちゃうんでしょ。


「あら、ただ顔を見たいだけよ。何よ、私よりも魔道具の方が好きなの?」

「……あのなぁ。まあいいか、ちょっと見て行けよ。大分形にはなったぜ」

「そんなに『契約の魔道具』って、作るのが難しいの?」


 ……多分よっぽどの事が無い限り、使われる事が無い系の魔道具だという事だけは分かる。そもそも、『オド』の譲渡なんて可能とは思わなかったし。


「この魔道具は、他人の『オド』を変換するのが難しいんだよ。一人一人『オド』の性質は違うんだ。ただ流しただけじゃ、使えないからな……コストと結果が見合わないんだよな、これ」

「ふぅん、そう言うものなのね……。これって東洋の魔道具なの?」

「ああ、あっちの仙道に属する魔道具だな。あんまり、マイナーだから俺も資料を見て初めて知ったよ」


 ……確か、上海の研究所と東西の魔道具に関して共同研究をしていた件ね。


「他にも興味深い魔道具はある。……そうだ、これを作ったんだ。丁度良いから付けてやるよ。左手を出せ」


 何だか、ごつい指輪を持ち出した。そういえば、こっちには結婚指輪の習慣が無いらしい。丁度、手元の装飾品が寂しいと思っていた所だ。


「ふふ、私の居た世界では結婚式で指輪の交換をするの……。何だか懐かしいわね」

「へえ、そりゃ面白いな。いつも無茶ばかりするお前に丁度良いと思って、作っておいたんだ」


 そう言いながら左手の薬指に指輪をつけて貰う。……ちょっと、これ随分大きな『魔導石』を使っているじゃないの。しかも三つも……。いえ、良いんだけど勿体ないわね。


「……ジェームス、これいくら位するの?」

「魔道具の性能じゃなくて、値段を聞くのかよ。……そうだな、全部で二千ポンドって所かな。これは『身代わりの魔道具』って言ってな。装着した人間に危険が迫った時、そのダメージを『魔導石』で受け止めるんだ。……戦争するなら、渡しておくべきだと思ってな」

「ふぅん、中々良いじゃない。……嬉しいわ、ジェームス」


 とたんに機嫌が直る私の性格は、相変わらずチョロいと思う……。女の子なんだし、仕方が無いでしょ!


「大事にするわ……。ちなみに、どの位のダメージを肩代わりするの?」

「即死しないようになる、とは聞いている。間違っても試すなよ!」

「当り前じゃない! ……でも『破壊神』と戦うって、そういう事よね」



 何故かは知らないが、自分達が死ぬ事は考えた事も無い……。『冒険狂トラベラー』の本質なのか、他の原因があるのか? ともかく、今まで縁がないものと考えていた事は確かだ。


「『無茶はするな!』と言う言葉が、如何に無駄かは知っているからな。……この『爆弾女』め」

「その呼び名も久しぶりね。……何だか、変な死亡フラグが立ちそうな雰囲気だわ」

「……ああ。ムラト達に伝えてた、あの変な話か。俺には、異世界の習慣は良く分からん」


 そうね、現実世界の習慣がおかしいだけだろう。……物欲センサーとか、死亡フラグとか、何でそんな変な習慣があるのか、未だに私にも分からない。何となく縁起が良くないので言っているだけなのだ。


「神様がいるんだから、そう言うものなんじゃない?」私も自棄気味に返す。

「あのポンコツ女神……『アルファ』だったか。アイツ以外にも神様がいるって話だったよな……」

「そうね。私達が思っているよりも、世界ってファンタジーなのねぇ……」


 きっとどこかで、私達を眺めながら楽しんでいるのだろう……。悪趣味ねぇ、全く。


「そうそう、ロボットの方も随分出来上がったわ。……その魔道具が出来たらオスマン帝国に行くわよ」

「ああ、こっちも明日位には仕上げに入る……。忙しいなぁ、本当に」

「ぶつくさ文句を言わずに手を動かしなさい! 大事な作業なんだから、しっかりね」

「へいへい」


 そうは言いながら、黙々と作業を続ける。前にも聞いたが、ジェームスは『作る人』なのだ。基本的に魔道具さえ作れれば良いという、マッド気質だ。言われるまでも無く作業に集中している。


「これで私を放置しなきゃ、良い旦那なんでしょうけどね……」文句を言ってもしょうがない。今に始まった事でもないし。



 何日か過ぎて、こちらで行う作業も大体完了した。試しに刀をロボットで持ってみたが、こんなに長い刀身を振り回せるのだろうか?


「主殿には、稽古が必要じゃの。なぁに、すぐ首ば落とせるように、鍛えちゃるけのぅ」

「そっちはどうでも良いから、とにかく扱い方を教えてね……まったく、不安だわ」


 こいつの性格は理解しても、その奇行は理解が出来ない……。何故首にこだわるのか……そういえば、首狩り族だったわね、忘れてたわ。


「それじゃあ、準備は出来たわね。留守番は任せたわよ」

「ああ、こっちの事は心配するな。頑張れよ」グレッグさん達に見送られて、一行は『門』を潜る。


 正直、魔王になって一番便利なのは、好きに『門』が作れる事だ。時間が無い我々にとって、メリットが大きい。


 ……未だに『宝玉』の力は使いこなせていない。頭の中に知識だけはあるのだが……。危険すぎて、使う気にはなれない。ロボットに乗っていても使う事が出来るように、改修だけは済ませてある。


 ともかく、やれるだけの事はやってしまおう。……細かい事はいつも通り、心の棚に置いておく。


 後は、魔王軍の編成かぁ……。色々と考えてはいるが、種族が多すぎて把握出来ない。暫くは『魔族』相手に苦労する事になるのだろう。


 オスマン帝国では、着々と戦争の準備が進んでいるだろう。ホルス君とメルちゃんは、ちゃんと仲良く出来ているだろうか。



 オスマン帝国に着いて、魔導師部隊に例の量産型ロボットを見せる。一応、見た目も考慮した上で改修も済ませているが、反応は悪い。


「アキラさん、これに乗るんですか? ちょっと見た目が……」

「そこら辺は、ある程度は改良したんだけどね……。試しに乗ってみてよ。色々と意見が聞きたいわ」

「……そうですね、じゃあ俺が乗ります。操縦方法は?」


 それなりに動いてはいるし、魔法との相性も問題無い様だ。訓練ついでに改善点を出して貰おう。


「私の乗るロボットもあるの?」

「ええ。ちょっと待っててね……」


 バックから魔道具を出して、高性能型を組み上げる。大体5メートルと言ったところか。いかにもなロボットらしい見た目だ。あちこちで、量産型と見比べる声が聞こえてくる。


「ああ良かった。あんなものが出て来たから、警戒しちゃったわ!」

「元々作られたのは、もっと酷かったのよ。いかにも『棺桶』って感じでね……」


 丁度、量産型のテストを終えたホルス君がやって来た。


「へえ、こっちはちゃんと人型をしているじゃないか。……成程、これなら魔力の流れもスムーズだし、乗り心地も良さそうだ」

「そうだ、強化スーツの方も渡しておくわ。こっちが女性用で、こっちが男性用ね。ちゃんとサイズもいくつか用意しているから、各自で調整してね」


 ジェームスが例の魔道具を持ってきた。ここで調整までやってしまうらしい。


「……よし、丁度揃っているな。『契約の魔道具』を付けるから、準備してくれ」

「私の方は問題無いわ。ホルス君、メルちゃん。ちょっと調整の時間が掛かるから待っていてね」


 私の方は、指輪タイプの魔道具を二つ付ける。ホルス君達の方が腕輪型になっている。


「よし、調整は問題無いみたいだな……。ホルス、どんな感じだ?」

「あ、本当に『オド』が増えています……。驚いたな、これなら幾らでも魔法が使えます」

「私の方も問題無いわ。……もう少し、吸い取られる感じを想像していたんだけど」


 よし、これで一安心だ……。この二人にはガンガン魔法を使って貰う事にしよう。


「じゃあ、このまま魔族の所に行くから、参加者を集めてね。ホルス君とメルちゃんも来て頂戴。そのまま、魔王軍の編成を行いたいの」

「ああ、じゃあムラトさんに陸軍から人手を集めて貰います。魔王軍に編成する精鋭部隊を連れて行きます」


 魔王軍は、出来るだけ均等な戦力になる様に各部族を分けてしまおう。人間と魔族で混成部隊になる。各自の能力を生かした編成になると思う。


 私は、そんな事を考えながら、いよいよ魔王として本格的な活動開始に心を躍らせるのであった。

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