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113.さあ、ロボットを作ろう!(その2)

 私達はメンバー全員を集めて、この量産型の見直しについて相談した。


「何ともまぁ、やっつけ仕事だな。マードック、もうちょっと何とかならないのか?」

「個人的に身動きが取れないのが問題ですね。せめて上半身と下半身は分けるべきです。後、魔法は両手を合わせて発動させるのが基本なので、左右に手が出ても使い辛いだけですよ」


 千鶴ちゃんの意見を参考にして、魔導師の事を考えた仕様に擦り合わせていく。技術者だけでは、やっぱりその辺りの考えが及ばないのは仕方のない事だ。


「ともかく、ただの箱では駄目ね。ちゃんと上半身の左右を形成させて、方向が変えられるようにしましょう。後は、上半身を開くようにして、魔法が打てるようにしてね」


 多少はこの不格好な見た目も改善できるだろう。栄光あるオスマン魔導師部隊には、真っ当な装備を持たせてやりたい。


「……そういえば、敵の攻撃なんかで倒れた時はどうするつもりだったの?」

「それは設計段階でも問題になりました。結論としては魔道具を一度停止させてから、ロボットを再構成させれば良い、と割り切りました」

「あぁ、元はゴーレムだからその手が使えるのね。じゃあ、最前線手前までは魔道具として運んでちょっと手前で構成させてから搭乗すれば良いかもね」


 運用方法も纏まって来たし、設計の修正をマードック達に任せた。若干、不安要素はあるがレイ君やトール君など、戦闘経験のある人間にも参加して貰おう。


「じゃあ、いよいよ本命の私の専用機になるわね。どうせ無駄に技術を詰め込んだ高性能機体になっているんでしょう?」

「そりゃもう、思う存分我々の知識と経験を投入しています。思い切り趣味に走りましたよ!」


 威張る事では無いのだが、こういう時はこの変人共も良い仕事をする。物は試しだ、試し乗りをしてみようか。流石に広い場所が必要なので、リッチモンド公園に向かう。あそこなら、こんなデカい人型を一般市民に見せなくて済む。


「かなりの大型ですから、組みあがるのには時間が掛かります」


 手元には大量の鉄と魔法銀のインゴット、そして超巨大な『魔導石』を組み込んだ魔道具がある。


「それにしても物凄い量の材料ね。一体でどの位のコストが掛かっているのかしら?」

「概ね、二十万ポンドって所ですね。制限無しに作り込みましたから。量産品みたいなコストカットもしていません!」


 うーん、それは威張る部分ではない気もするが……。この大きさの『魔導石』なら、暴発も心配ないし、まずは組み上げてみる事にしよう。


 魔道具を起動すると、ゴリゴリいう音がして巨大なロボットが組みあがっていく。そうそう、こういうのを待っていたのだ。いかにもな感じのロボットである。多少ごついが、想定の範囲内だ。


 どちらかと言うとリアル系。手足のバランスも良い。そつなく仕上げたという印象だ。マードックとレオナルドお爺さん、グッジョブです。


「随分緻密な装甲になったのね。私のイメージよりも精密だわ」

「いや、レオナルドの爺さんが『高圧蒸気機関』を見て、張り切ってしまって。設計は出来るけれど、実物を作るのが苦手らしく、私やモーズリーが耐久性を考慮してサポートしました」

「何て言うか、贅沢な開発メンバーよねぇ……」


 当のレオナルド爺さんは、と言えばケイリーさんと飛行機の話で盛り上がっている。


「いやはや、未来の技術は素晴らしいのぅ。思い切って飛行機械を実用化せんかね?」

「ヘリコプターですな。いや、ご老人は素晴らしい発想をお持ちだ! 是非、開発しましょう」


 そんなお金も必要性も無い開発は後回しだ。まったく、変人共は直ぐに新技術を作りたがる。


「今はこのロボットの製造で手一杯なんですからね! ちゃんと仕事をして下さい」

「……お嬢さん、科学の進歩には必要な事なんじゃよ! あぁ、儂の夢が実現するとは」

「いつか必ず作り上げましょう、ご老人!」


 勝手に盛り上がって貰っても、オーバーテクノロジーはもう御免である。後始末が大変なのだから……。蒸気船だけでも苦労したのに、空飛ぶ機械なんて作ったら世界の戦争が変わっちゃうじゃないの。


「でも、なんだか昔の事を思い出しますね。蒸気船の試作機を作るのに徹夜をしていた頃が懐かしいです」千鶴ちゃんはあのデスマーチを懐かしがっている。そうは言ってもそんなに昔でも無いのだが。

「あの時は酷かったわねぇ……。こいつも爆発しないと良いけど」


 ……当時は千鶴ちゃんがテムズ川で酷い事になったっけ。まあ、技術開発なんてそんなもんだ。


「のう、主殿。このロボットちゅうんは、戦争で使うのじゃろう。……色々と武装は要らんのか?」

「そうねぇ、主な役割は『破壊神』を抑え込む事だけど……。正直、何を付ければ良いか分からないのよね」私だって戦争した事が無いので、そこら辺は試行錯誤するしかない。

「……じゃったら、刀を作ればええ。示現流の稽古ばしちゃるけのう」


 確かに複雑な機構の兵器を作るよりも、人間と同じ武装で良いかもしれない。


「じゃあ、ヒサ君はレオナルドさんと一緒に刀の製造をお願いするわ。それ位なら何とかなるでしょう」

「おう、主殿。おいにまかせんしゃい!」


 何だか、ウキウキで相談し始めた。多分、日本刀程度ならゴーレム製造の応用で魔道具作りが出来る筈だし、コストも安く済みそうだ。


「そろそろ完成かしら。随分と大きいわねぇ……。上手く動くと良いけど」

「社長、起動後に蒸気機関の駆動を行うまでのサポートを入れます。こちらの手順に沿って起動させてください」

「分かったわ。じゃあ、ナビゲートお願い!」


 私は、強化スーツを着込み、十メートルはあろうかと言うハッチ迄ジャンプして乗り込んだ。


 強化スーツは、耐衝撃の為でもある。こんな三十メートルはあろうかと言うロボットに乗り込んで、揺れたり走った時に操縦席で怪我をする訳にも行かない。


「主動力機関、起動開始!」


 私は操縦席の水晶玉のような操作パネルに手を合わせて、まずは巨大な『魔導石』を起動させる。こいつが各部の蒸気機関を支えるメイン動力となる。小さな音がして、細かい振動が始まった。


「魔力上昇を確認! 出力50%突破!」

「各動力部分、機関を起動するわ! ちゃんとナビゲートをお願いね」

「各動力機関の起動を確認。両腕・両脚部の蒸気機関の圧力上昇!」


 細かい振動と共に、蒸気機関からの煙が立ち上って来る。排気部分は首の後ろ側になる。随分とスチームパンクな感じである。


 ……視界も良好。そろそろ出力も規定値を超えてくる頃だろう。


「主動力機関の出力80%を超過! 始動準備」

「各部蒸気機関の圧力、基準値をオーバーしました! 立ち上がって下さい」


 その言葉を聞いて、頭の中で立ち上がるイメージを想像する。細かく、各部のバランスを取りながら、自分の手足を動かすように。


 ゴウッっと言う音がして、目の前のモニターの景色が上がっていく。思ったよりも背が高い。


「主動力機関の出力100%で安定稼働しています。社長、自由に動いて良いですよ」

「分かったわ。少しずつ歩いてみるから、みんな気を付けてね」


 自分がロボットを操縦するというのは、確かにロマン成分たっぷりである。これは楽しい。


 だが、喜んでいる場合ではない。このまま、あの『破壊神』とガチンコ対決できる程の性能迄、こいつを『魔改造』しなければならない。


 手の指も随分と細かく作られている。イメージで手を握ったり広げたりする。うん、思い通りに動かせるようだ。少し激しい運動もさせてみよう。


 この一帯は芝生なので、あまり地面が頑丈ではない。ゆっくりと足場を確認しながら歩いてみる事にしよう。


 とりあえず、上半身を左右に振ったり両手を回したり。基本的な操作は問題が無い。後は、走ったりジャンプしてこのロボットの重量に各部品が耐えられるかどうかだ。


 大体の耐久性は、事前に確認済みだろう。変人とは言っても、こいつらに手を抜くという概念は無い。そこだけは安心して任せられるのだ。


 後は、私の想定外でビックリドッキリメカが仕込まれていないか、十分に調査をする必要がある。


 スペックを満たせば何をしても良い、と言う思想を持ったこいつら変人共なら、何があってもおかしくない。まったく、何時になっても変人への相手ツッコミが終わる事が無い。


 私は、ロボットに乗るというロマンを感じつつ、当然何か有るよなと溜息を吐くのだった。

 巨大ロボットは男の子のロマン。


 異論は認める。


 魔導ロボットの開発、と言うあまり他の作品では見ない展開。


 個人的な趣味です。

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