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107.異族コミュニケーションは難しい

「はぁ、お爺さん、聞いてよ。『魔族』の連中ときたら……酷いなんてもんじゃないわ!」


 私は本部で『高橋 是清』に愚痴を漏らしている。……オスマン帝国で内政中の皆には言えない。言ったら、絶対に文句を言われるレベルだ。それ位、あちらのデスマーチは過酷である。


「アキラさん、そりゃ生きとる世界が違うからのう。いきなり襲い掛かられるよりはましだろう」

「何ていうか~『魔王』って言うより『中間管理職』ね~」


 リズさん、酷いですよ。そんな直球だと皮肉にならないです……。


「だってねぇ……比較的にまともな方を紹介されたんですよ、これでも」


 あれは酷い。……歴代の魔王があまりの酷さにコントロールを諦めたレベルなのだ。


「初対面で『お前、大将首だろう! 首置いてけ!』ですよ。首狩り族って一体……」

「……何でそいつがまともな方だと思ったんじゃろうな?」

「はっはっは! そういう事もあるて!」本人が笑い飛ばす。


 この人が首狩り族のヒサさん。『破壊神』を倒すと聞いて、面白がってついて来た。間違いなく変人枠である。仕方が無いので、護衛役にする事にした。ややこしいので大人しくして欲しい。


 一応人と見た目は変わらないし言葉も通じる。……それが例え挨拶みたいなものと聞いても、まったく理解出来ないのだが。


「何でも『ここ日本で首狩り族と言ったら、こういう奴しかいない』って言われました。確かに薩摩武士って凄いとは聞いていたんですけど……」

「ああ、儂も軍に大勢の薩摩出身者がいたから解かる。……頭がおかしい部類じゃのう」

「そうですよね。一応、誤解は解けたんですけど……敵と味方の識別すら怪しい奴との会話って……」


 とりあえず一族の代表者という人と話はした……。ヒサさんを含め、一族纏めてそのままオスマン陸軍に連れて行って、レイ君担当にすべきか悩んでいる。脳筋同士なので気は合うのだろう、多分。



「まぁ、そんな訳で『魔王軍』らしきものは何とかなりそうなんですけど……色々と無茶をしました」


 一番問題なのは「プロジェクト ケマル」である。その超級クエストを達成出来るような人材を見つけるのが難しい。流石にやり過ぎかとは思う……。でも、世界大戦は止めさせたい。


「ふむ、そりゃいささか難しいのぅ。儂なら上手い事イギリスを何とか出来るだろうが……」


 ああ、そうだった。このお爺さんから見れば過去の出来事だ。しかも、日露戦争での経験迄ある。これ以上無い程の適任だろう。


「しかし、五十年とはなぁ……。ちょっと間違うとオスマン帝国が爆発四散しかねんぞ」

「ですねぇ……。ちょっとお知恵を貸して貰えませんか?」


 計画者としての責任もある。ムラトさんなら素質はあると思うのだ。後宮ハーレムでは、戦略や戦術も学んだらしい。何でも、暇を持て余して洋の東西を問わずに書物を集めたとか。


 天才と言うのは、無駄に行動力があるものだ。……だが、外交ばかりは書物で学ぶわけにも行くまい。結局のところ、人付き合いとコミュニケーションの問題なのだ。


「本部にずっと詰めていても体に悪いでしょう。ちょっと大騒ぎしていますけど、いい気分転換になるますよ。イスタンブールに行きません?」

「うむ、丁度暇になっておった所だ。リズさんも随分と事務仕事を覚えてな。……まさか神様を教えるとは思わんかったが。……これでも、国が引っ繰り返る位の問題なら幾らでもやっておる。任せなさい!」



 流石に天才的実務者の是清さんだ。……あのリズさんに勉強をさせるなんて、絶対無理なミッション達成の能力については「凄まじい」の一言である。


「お爺さん、ニコニコしながら凄く厳しいのよ~。お陰で書類の整理が進むけど~」

「良い事じゃないですか。……あ、そうだ。『魔王軍』を作ったので、その分の書類も増えますから!」


 そう言うと、リズさんの動きが止まった。……いつも酷い皮肉を言ってくるのだ。これ位は良いだろう。


「アキラちゃんの意地悪~。もう、最高神様に言いつけちゃうんだから~」

「……あの子と会うのは勘弁です。何と言うか、人間っぽくないって言うか」


 どうにも掴み所が無い、と言う印象なのだ。……子供っぽかったり、機械みたいだったり。



「そりゃそうよ、あの子は人生経験が無いから~。能力は凄くてもね~」

「何でしたっけ? あの、人の記憶が使えるとか何とか?」良く分からないが、お釈迦様と相談したとか。

「えぇ、ゴブリンの能力を見たでしょ~。あれと同じなのよ~」

「……ええと『集合精神体』でしたっけ?」


 とにかく、ゴブリン達の知識や経験が共有されるとか……。便利なので、本部やイスタンブールにも数人連れてきている。すぐに他の世界と連絡が取れる、慣れれば便利な能力だ。


「人間にもあるのよ~その『集合精神体』が~。最高神様しかアクセス出来ないけどね~」

「……何とも不思議な能力もあるもんじゃのう。死ぬと魂になる、とかいう奴かね?」

「違うわ~。『未来の人間』の知識も含まれるの~。アキラちゃんやお爺さんの知識も入ってるわ~」


 凄まじい能力だ。……要するに強力な能力に自分の判断が追いついていないのだ、あのポンコツ女神。


「……一度、きちんと話をした方が良いかもねぇ」

「アキラちゃんなら~、きっとそう言うと思っていたわ~。『お母様』だしね~」


 あまりそれは認めたくは無い。だが、首を突っ込んだなら責任がある、と思ってしまう自分はトラブルメーカー気質である。そういう性格なので仕方が無いのだが。


「あのポンコツ女神が、まともに話せるようになるまでは、我慢して見守ります。変人の相手ツッコミは、もう覚悟してますから」


 リズさんは、面白そうにこちらを見つめ笑い出した。……そんなに笑う事無いじゃないですか。


「確かに変人なのよね~。もうちょっと自我があればね~」リズさんも思うところがあるらしい。

「……一応、関係者として責任もあります。子守と思って諦めますよ」


 まったく、最高神が変人だなんていい迷惑だ。……ちゃんと一般常識を教え込まないと、大変な目に合いそうだ。


「まあ、それはともかく……。オスマン帝国には儂も付いて行くぞ。レオナルド・ダ・ヴィンチもおるのじゃろう。面白そうだわい」


 お爺ちゃん同士で仲良くなりそうね、全く。偉人同士を出会わせて、変な反応をされても困るのだが……。


 まぁ、そこも含めて自分の不幸を呪うしかない。何の因果か変人の相手ツッコミばっかりさせられて……。


 私は、オスマン帝国に『高橋 是清』を連れて行って『タンジマート』をさせるのに、どれだけのトラブルが起こるか、少し気にはなったが諦めた。


 こうなったら毒を食らわば皿までとも言うし……。覚悟を決めて、イスタンブールへ向かうのだった。

 巷では『薩摩ホグワーツ』が流行っていると聞いて。


 乗らねば、このビックウエーブにとばかりに薩摩人のエントリーです。


 偉人かどうかは未定ですが、どうやっても面白おかしい変人なのは間違いない。

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