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97.『運命』と言う名の輪廻

 私一人で本部に来ている。流石に他のメンバーを連れてくるのは気が引けた……。


 本部で色々と報告したが、全員、その内容に驚いていた。……そりゃまあ、自分でも自覚はある。


 皇帝二人がぶらり旅で『破壊神』やらロボット作り、果ては「レオナルド・ダ・ビンチ」の勧誘だ。そう思うと、随分と盛り沢山だなぁ……。


「アキラよ。お前さん、随分と思い切った事をしたのぅ……」

「……知らなかったのよ。まさか、そんな有名人がいるとは思わなかったし」

「それで~そのワンちゃんは『魔族』なんでしょ~。『魔王様』ですって~、面白~い」


 リズさんも言いたい放題だ。こっちだって困っているのだ。どうしてこうなったやら……。


『……破壊神の事を考えると、放っておく訳にも行かん。しかし、好き勝手にやり過ぎではないかな?』

「すみません。勢いに任せ過ぎたとは思います。だけどこうするしか無くて……」


 厄介事が山のように増える前に……と思うと、考える前に行動してしまうのは仕方がない。トラブル続きの私達にとって、後悔する事だけはしたくないのだ。


「史実を守る事が大事なのは理解しています。……それでも困った人を助けたくて、どうしようもないんです!」

『……そう考える事は想定内だった。史実を守るというのは、建前なのだ』

「……どういう事ですか?」


 建前と言うか、意図しないトラブルを避ける為では無かったのか?



「お主がした事で史実が変わったかね? ……むしろ、関係のない所で史実が異ならなかったかね?」

「確かに……そうですね。……何でそんな回りくどい事を?」


 思えば、ナポレオンの件がそれにあたる。こちらで何かをした訳でもない。


『……もし好き勝手に自分の欲望を満たそうと、異世界を混乱させたとする。自分に不利益が無ければ歯止めが利かなくなる。団員には、そういう事はして貰いたくなかった』


 確かに、グレッグさん達も世界に介入しない様に何処か一線を引いている。私だって、好き好んで介入している訳ではない。惨事を黙って見過ごす事が出来なかっただけだ。


「私は、自分の行いに胸を張って間違っていないと誓えます。悲しむ人が減る、それだけを望んでいます!」

「アキラちゃんなら~、そう言うと思ってたわ~」

「……つまりな、そういう事じゃよ。建前と知った上で、お前さんが好き勝手するとは思えん。今だって、正直にやった事をきちんと報告しておるじゃろう」


 私に対する信用という事なのか。もう取り返しのつかない程、史実は変えてしまった。だけど、ピョートル大帝やムラトさん達が過ちを犯すとは思っていない。


 ……大体、史実を変えて一番被害を被っているのが私自身なのだ。言っていて悲しくなっているが、事実である。


「儂は『運命』と言う言葉で誤魔化しておった。じゃがな、この状態でも正確な未来予知は出来るのじゃよ」

「……じゃあ、何で言ってくれなかったんですか?」

「千鶴ちゃんの運命を知って、一緒に行動しなくなっても困るじゃろうが」


 まあ、確かに……。世界を半周した上に皇帝陛下と恋仲なんて、そんな『運命』を聞かされても困る。


「……じゃあ、お婆さんは『破壊神』が復活する事も予知出来るんですか?」

「ああ、正確な日付までは確定せんがな。間違いなく復活する……。だから、わし等はアキラの行動を止めんのじゃよ」

「アキラちゃんが~集めた大切な仲間と~、一緒にやっつけちゃいなさい~」


 つまり、関わった世界の命運を全て私が背負え、と……。


「手加減しませんよ……全力出して阻止します! 『破壊神』もオスマン帝国の未来も! 厄介事も全部解決して見せます! 世界を……関わった皆を守って見せますよ!」


 ……こうなったら、やるしかない!出来るかどうかじゃない。私が、私達がやらなきゃいけないんだ!


『……それで良い。アキラ、お前が選んだ未来だ。お前が考え、悩み、守るのだ』

「『運命』というものはな、決まりきった筋道ではない。……お前さんが切り開くのじゃよ」

「もう~、私達が助ける事は出来ないけど、頑張りなさい~」



 ふと、今更なのであるが……この三人について気になった。殆ど人と関わらず、助言はしてくれるものの、こちらを観察しているような気がする。


「思い切って聞いてしまいますが……三人共どういう立場の人なんですか?」

「うむ……もう隠し事をする必要も無かろうて」

「私達はね~『運命の三女神』なのよ~」

『……人ではないのだ。より高位の神より、役割を与えられた神々なのだよ』


 へっ、神様? ……確かに『破壊神』が居るのなら、おかしな事でもないかもしれない。いや、待て。ちょっと混乱しているぞ、多分。


「女神って……団長は男の人でしょう?」

『……本体は飾り物の鳥の方なのだ。あくまで、人の姿を借りているだけなのだよ』


 もう、どんな事でも驚かないつもりだったが……あまりの事に動揺してしまう。



「……そんな事って」

「まあ、驚くのも無理はない。本来はわし等が人の世に関与する事は無いのじゃ……」

『……もう教えても良かろう。この世界は繰り返している。世界が終わるのを防ぐために』


 世界が終わる? 繰り返している……どういう事なのだろうか?


「最高神は言いました~『このままでは世界は終わる。それを防ぐために、あの人に力を与えよう。その人なら、きっとこの無限のやり直しを何とかしてくれる』それがアキラちゃんなのよ~」リズさんがいつもの調子で言うが、まったく理解出来ない……。


「今から数年後に『破壊神』が溢れて世界が終わる前に、お前さんを経由して『宝玉』を過去に戻す。お前さんの体の中には、世界そのものが繋がっていてな。『宝玉』自身が輪廻して、世界を過去に戻す……それをずっと繰り返しておるのじゃ」


「団長が過去の担当。私が現在を担当。お婆さんが未来の担当ね~。皆、特別な力を持っているわ~。それでも世界の輪廻は解けないのよ~」

「つまり、同じ歴史を私が繰り返している、って事ですか?」


「そうなるな……今まで、お前さんは何度も間違えた。その度に悔み、思いだけが過去に戻った。記憶は継承されないんじゃ……」


 私には、繰り返した記憶が無い……一体どれくらい繰り返したのだろう。


「……ジェームスが仲間に居なかった事もある。遊牧民の村を救えなかった事も。そうして、少しずつお前さんの行動は変わっていった。ずっと前はロマンも人助けも考えない、ただの『守銭奴』じゃった……」

「……えっと、繰り返すうちにそうなって行ったんですか?」

「多分、無意識なのよ~。世界を変える為に~やり直す度に変ったのよ~」


 世界が終わらない様に、繰り返ししない様に……そうやって私が変わった?


「今回、物凄く沢山の世界に良い影響を与えたわ~。良い人達と出会ったおかげね~」

「そうじゃな。今までは、大抵一人ぼっちで死にかけておった……。記憶は無くとも辛い思いを残して、同じ事にならない様になったのじゃろう」


「……私は……私はどうすれば良いですか?」

「さぁてなぁ……? それは、この世界を管理する最高神ですら、わからぬ事じゃ。……だが、預言は出来る。今まで積み重ねた『縁』に希望があると」


「そもそも、何で私なんでしょうか? 何処にでもいるただの人間の私に……」

「最高神との関わりがあったとは聞いておる……。詳しい事は知らんが、その内に会う事も有ろう」理解は出来ないが、それも何かの『縁』なのだろう……。


 『縁』かぁ。誰かに決められた『運命』ではない……。ふとした出会いと別れで関わった人達。……もしかしたら、今までは無視していたような出来事を拾って来た。少しづつ積み重なって大きくなった人々との『縁』。


 確かに、それは感じていた。『きっと明日はもっといい日になる』と言いながら繋いできた『縁』だ。


「……分かりました。出来るかどうかは分からないですけど、そう言う『運命』だって、覆して見せますよ!」

「うむ、よう言った。……今までにも、この話は何度となく伝えた事がある。じゃがな、そう言う返事をしたのは初めてじゃ!」


「そうね~。随分と逞しくなっちゃって~。私、嬉しいわ~」

『……これまでも、それとなく助言はしていた。だが、悩んだのも実行したのも他ならぬアキラ、君なのだ。自信を持つ事だ』


 やらなくてはならない事は沢山ある。……きっと、これまで以上に苦しむ事もある。でも、きっと皆が、私の仲間たちが支えてくれる筈だ。


「……私、やります! どんな事があっても諦めません! 繰り返される『運命』なんて、跳ね除けてやります!」


 もう迷わない。もう繰り返す事なんてさせない。……それは、今までの行動を否定する事だから。


 私は、自分に課せられた重い『運命』との果てしない戦いになる事を考えながら、それに負けないように決意を固めるのだった。

 物語的に最終的な問題である『世界の破滅』と『輪廻から抜け出せない歴史』となります。


 物語の核心部分ですし、少しずつ説明していく事になります。


 『全知全能の神』も『創造神』も居ない、この世界を延命する為だけに作られた『運命』となります。


 この『運命』を打破するための主人公とその物語、という事です。


 最終回までのプロットも決めてありますが、絶対に長編になります。


 面白い、続きが気になると気になった方は、評価☆やブックマークを付けて頂けないでしょうか。励みになります。完結まで先が長すぎて、モチベーションが……。

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