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92.ロボットと言う名のロマン

「……細かい事は気にしないとして。ともかくその『ゴーレム』って奴を見せて貰おうじゃないの」

「ああ、それが一番手っ取り早いな……。爺さん、動かせるのか?」

「もちろん、何時でも動かせるようにしておる。外に出て試してみようかの」


 レオナルド・ダ・ヴィンチ製作の『ゴーレム』である。全く想像は出来ないが、史実でも色々な設計図は書いていた。元になる物があれば、そういう事も出来るのだろう。


 全員庭に出てきた。期待に胸を膨らませて例の物を見る。随分と小さな魔道具である。両手で抱える程度の機械のような、魔道具のような……。


 『魔導石』のサイズは小さめだ。出力的にはもう少し大きいのが良いのではないだろうか。複数組み合わせて、出力の増大をする事も検討したい。


「まあ、一応動く……と言った感じだがな。儂は設計は得意なんだが、どうにも造るのが苦手でのぅ」

「爺さんが設計、俺が製造と言う風に分担すれば問題無いぜ! 最終チェックにホルスが確認、で何とかなる」

「そうね、ロンドンに行けば変人……いえ、専門家が多いわ。色々とアドバイスも貰えそうね」


 そんな事を話しながら、『ゴーレム』の核になると思われる魔道具を起動させる。魔道具からは配線のようなものが繋がっており、そこから操作する様だ。


「本体は周辺の物質を魔道具によって集め、構成図に従って実体化する。今は素材が砂だが、岩や金属で実体化する事も出来る」

「……へえ、修理もその要領で出来るのか?」

「そうじゃな。実体化には大量の『オド』を必要とするから魔導師位しか扱えんじゃろうが」

「……お爺さんの『オド』でも足りるの?」


 『魔導師 レオナルド・ダ・ヴィンチ』実に強そうである。個人の感想ではあるが……。


「これは実験用の小型ゴーレムじゃからな。実際の想定は家の高さ位の大きさじゃ。流石にそこまで『オド』は無いぞ」

「それじゃあ、扱えるのは本当に限られた人間って事か……」

「この中で使えそうなのは、メルとアキラさん位ですね。俺は『オド』が少なすぎるし……」ホルス君が項垂れる。


 ホルス君、よっぽど乗りたかったのだろう。気持ちは解かるわ、男の子のロマンだものね。


「魔導師の本質は遠距離攻撃だ。前線に出ても大丈夫な防御力があれば、戦いは大きく変わるぞ!」

「ふむ、確かに魔導師の部隊は最初に魔法を打ち込んで、そのまま待機している。追撃戦でも無ければ、役に立たない事が多い。維持コストばかり掛かって効果が見合わない事も多いからな」


 皇帝二人組は現実的なものである。ロボットって言うのは、そう言う実用性じゃないわ。ロマンなのよ!


「実用化はともかく、カッコいいわよね。是非乗ってみたいわ!」

「お姉様、ロマンさえあれば何でも良いんですか? 人助けとかお金儲けとか……」

「千鶴ちゃん、私はね。こういう事に関しては自重しないわ!! 良いじゃない、たまには」


 ロマンは大事。それだけは譲れない一線である。まあ、出来れば実用化にまで漕ぎつけたいものだが。



 暫くして、魔道具が振動して周辺の地面の様子が変わって来た。どうやら、実体化が始まるらしい。


 皆で、固唾を飲んで見守っている。少しずつ砂が集まって来て形が出来て来た。


 何と言うか如何にも、と言った感じの『ゴーレム』である。どちらかと言うと泥人形と言う方が近い……。


「よし、実体化は終了したぞ。……この手元の操作盤で手足を動かす事が出来る」


 そう言うと、色々とお爺さんが操作を始める……。あぁ、砂を振りまきながら腕を上げる『ゴーレム』。


 一言で感想を言うとすれば、動きが『遅い』のだ。


 まったく、もどかしい感じである。確かにこれでは「一応の実験成功」と言う評価になるだろう。色々と弄る余地があるという話でもあるが。


「何というか、動作の出力に『魔導石』の大きさが付いていけてない感じだ。そこら辺の改造の余地は大きいな」魔道具師としてのジェームスの意見だ。

「そうですね。魔力の流れ自体はスムーズです。人が乗る事も考えて、細かいバランスの調整が必要そうですね」

「そうじゃな。専門外の儂としては、これでも大成功なのだがな……」


 だが、今までの世界でもこんな発明は初めて見た。今までの発明は、自分がいた科学文明を魔法で代替した物ばかりであった。例えば『蒸気機関』もそうだ。



 そういう訳で、私は魔法世界の先進性に初めて触れた喜びで大変に興奮しているのだ。


「凄い、凄いわお爺さん! いかにも『古代ローマの失われた魔法技術』って感じがするもの!これ、皆で実用化しましょう!」

「……アキラの悪い癖が出たな。まったく、こういうロマン満載の技術には弱いんだから」

「馬鹿ね、ジェームス。こういうのはノリと勢いよ! せっかくの超技術、再現したいと思わないの?」

「……確かに、その意見は賛成だ。俺としても、こういう作業は好きだからな!」


 そうなったら、本格的な改良の為に場所を移動した方が良いだろうか? こういう、機械的な設計に関しては、ロンドンの変人達に任せるのが良いだろうと思う。


「お爺さん、提案なんだけど……。ここよりも別の世界の方が技術も発達しているし、そちらに移り住まない?」

「そうじゃな、特にこちらには思い残す事も無い……。先程の工房の道具さえ移せれば、引っ越しするのも良いじゃろうて」

「よし、決まりね。私のマジックバックでざっくりと移動出来るから心配ないわよ」


 幸い、マジックバックの容量はまだ十分にある。最近は交易をする事が減ったので、丸ごと使えるのだ。


「マジックバック迄持っておるのか。それは凄いな」

「……多分、古代ローマから騎馬民族が奪った奴だと思うけどね」


 全員で笑い出す。まったく、酷い話である。


 『墓所』にあったという事は、確実にこの世界からの盗品なのだ。多分、他の副葬品も同じような流れで自分の手元に来た筈である。


「ああ、そういう事なのか……。確かに、これだけの大きさのマジックバックは聞いた事が無い。恐らく王家の財宝じゃろうな」レオナルドお爺ちゃんも苦笑した。



 という事で、全員手分けして引っ越しの準備をしよう。さっき片づけたばかりなのに……と言う皆の文句は却下した。手分けして、この屋敷の荷物をマジックバックに入れるのよ!


「まったく、アキラ店長は人使いが荒い」

「俺は本来部外者なんだがな……まあ、良いか」


 さあ、皇帝二人組も手伝いなさいよ。そういう物だと諦めなさい。


「お姉様、細かな雑貨は置いておきますか?」

「そうね。何処でも手に入るようなものはそのままで良いでしょう。お爺さん、必要な物を仕分けしてくれる?」

「分かった、この工房の魔道具は慎重に扱ってくれ。後は、身の回りの品を幾つか持って行けば良いじゃろう。服やら装飾品の類は引っ越した先で提供して貰えるのじゃろう?」

「ええ。私は商人よ。お金に関しては心配しなくても良いわ!」


 こんな面白い事、存分に楽しまないと! お金は、必要な時には惜しみなく使う物よ。幾ら出しても惜しくないだけの技術なのだ、湯水のように使って構わない!


「アキラ、暴走するなって言っても無駄なんだろうな……」

「馬鹿ね、ジェームス。こういうのは暴走とは言わないのよ。必要な事じゃない!」

「お姉様、いつもの『魔改造』に取り付かれてますよ?」


 仕方が無いじゃないの。今まで、こういう『魔法』っぽい物が無かったんだから! 折角の機会なのだ。思う存分『巨大ロボットに魔改造』する事にしよう。


 何より、自分の無駄に持っている『オド』を有効活用する良い機会だ。戦場に出る事だって出来るかもしれない。自分の出来る事が増えるのは大賛成だ。


 私は、魔法技術という言う名のロマンと夢に思いを馳せて、自分が乗るであろう巨大ロボットを想像するのだった。

 魔法の力で動く、ロボット製作。……いかにもファンタジーなお題です。


 一応、プロットとして温めていた「天才科学者との人造人間作り」と言う内容は進められそうです。


 いつ、どこで使うかはまだ決まっていませんが、リアルにない魔法世界と言うのもやってみたいのです。主人公が戦闘に参加出来ないもどかしさ、と言うのも有りましたし。


 その内戦争シーンも予定していますし。


 なるほど、面白いと気になった方は、評価☆やブックマークを付けて頂けないでしょうか。また、感想などもお待ちしています。

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