表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/158

まだ見ぬ明日を迎える為に

 私、結城映ゆうきあきらの一世一代の大博打が今始まる……。


「さあ、ここが正念場よ! ここさえ乗り切れば『きっと明日はもっと良い日になる』筈なのよ。皆、最後の戦いの準備は大丈夫?」


 私は皆で魔改造したロボットに乗り込みながら、何時ものように士気を上げる為に皆に声を掛ける。


 各所に散らばった軍団からは、威勢のいい返事が届く。


「お姉様、こちらの陸戦部隊は問題ありません! やっと、この『破壊神』との戦いを終わらせるんです! 全員、死に物狂いで鍛錬してきた成果、お見せします!」


「こちら、勇者パーティーと魔導師部隊。足止めと妨害、支援魔法はありったけ使います! 魔法の出し惜しみをするつもりはありません! 『破壊神』を倒して、真の平和を手にするまで諦めません!」


「騎馬部隊の準備も万全じゃ。側面攻撃はスピード勝負! 誰にも負けんわい」


「魔王軍は絶好調だぜ。好きなだけ暴れまくってやるさ! こっちは楽しみでうずうずしてるんだ!!」


 しかしまあ、随分と揃えたものだ。


 偶然と思いつきで結ばれた『縁』の思し召しという奴だろう……。


 大体、拾ったり助けたりした仲間達が居なければ、この最終決戦さえ迎える事が出来なかった。


 思わぬ形で戦力化した、我々の切り札「魔族四天王」だっているのだ。


 ……こんなにも頼りになるとは、出会った当時には思いもよらなかったのだが。


「主殿。オイ達の出番は、何時になり申すか? はよう、首ば落としたかでごわす!」


「私達も戦えます。……戦いは怖いけど、頑張ります!」


 うん、君達は最後の頼みの綱なのだ。


 ここぞという所で、頑張って貰わなければならない。


「……まずは様子見よ。戦況が動けば『破壊神達』は、あの穴から溢れ出るわ。こちらの戦線を崩されない様に、貴方達の力が必要なの。よろしく頼むわね」


 ……今、最高の形でこうして戦いの準備が完了した。


 もう、やるべき事は済ませている。


 悩み抜いた作戦も苦しい訓練も、全てこの時の為なのだ。



 もう、世界を滅亡させたりしない。


 やり直しをするつもりも無い。


 流石にただの商人とは、到底言えなくなってしまった。


 ……私の今の肩書は『魔王』である。


 どうしてこうなった、とは思うのだが仕方が無い。


 この日の為に物凄い回り道をしてお金を稼ぎ、これだけの軍団を支えるだけの兵站や古代技術の魔改造まで、ありとあらゆる事をやってきた成果なのだ。


 成り行きとはいえ、諦めるしかない。


 ……たった十年前は、ロンドンの片隅で行く当てもなく、するべき事も見つからなかった孤独な私。


 だが今は、沢山の仲間と大切な思い出の詰まった世界を守るために、全力を尽くしている。


 私は、全てを守ろう。


 これまでの、果てしない苦難の道の果て。


 私がやるべき事は、まだ到達した事の無い、未知なる『明日』を迎える事なのだ。


 そして、出会った掛け替えの無い人々と迎えた、楽しい日々と明るい未来予想図。


 それが、私にとっての大切な宝物なのだ。


 ……どんな事があっても、それを壊される訳には行かない。



 ……私に課せられた『運命』は、世界が滅ぶたびにやり直しを強制させられるという呪いだ。


 どうすればこの『運命』から逃れられるかを手探りで試行錯誤し、そして死ぬ。


 悲しい『運命』とそれに翻弄され続けた、幾千・幾万の過去の私。


 今まで、そんな事をずっと繰り返してきたらしい。


 それが、神様から私への酷い無茶ぶりの結果なのだ。


 まったく、酷い話もあったものだ。


 あの『ポンコツ女神』め、いくら文句を言っても納得出来ない。


 そんな神様でも解決出来ない、このくそったれな世界の『運命』とやらを今ここで終わらせる。


 私達は、決して諦めなかった……。


 ここに集めた精強な軍団を、私達は必死で用意したのだ。


 その行動は、神様達でも予測不能だったらしい。


 それが、私達が築いてきた『絆』による力だ。


 何の力も無い人間や魔族達だって皆で協力すれば、世界の『運命』をぶち壊す事が出来ると私は確信している。


 初めは、ほんの思い付きや気まぐれで結んだ人々との『縁』だった。


 だが、その『縁』のおかげでいくつもの奇跡を生み続けた。


 我々は、数奇な因果の果てに、ようやくこの場に立つ事が出来たのだ。


 ……ここまで来たら、やる事は一つである。



「さあ、やるわよ! 私達が夢見た『未知なる明日』は、この戦いを終わらせて迎えるのよ! 頼んだわよ皆。絶対に大丈夫! 自分を信じられずに不安になる必要は無いわ。私が信じた、皆の頑張りを信じなさい!! 『破壊神』なんてぶっ飛ばしてやりましょう!」


 あちこちから『おう!』と言う掛け声が帰ってくる。


 長く苦しい日々だった……こいつら変人共の相手ツッコミをする毎日も、もう終わる。


 まったく、こいつらが居なければ、どうなっていた事か。


 変人の相手ツッコミは慣れた、というよりも諦めた。


 良い仕事をする事だけは、間違いない。


 願わくば、制御しきれない暴走さえなければ……と言ったところだ。


 その辺りの行動については、自分も人の事は言えまい。


 ロマン成分と、その場の勢いで暴走した結果が、この大軍団なのだ。


 ……実際、文句が言える立場でも無いだろう。


「さあ、行くわよ! 全軍、突撃!!」


 私の掛け声とともに、各軍団が動き出す。


 地獄の穴が開き、中から大量の『破壊神達』が群れを成して現れた。


 こいつ等さえ全滅させれば、未来が見えるのだ。



 これは『守銭奴』と呼ばれた少女の、トラブルとロマンの狭間で繰り広げた、世界を守る戦い。


 ……永遠に繰り返される世界の輪廻という、神様でさえ諦めた問題を解決する為に努力してきた、変人共のあいとゆうきの物語である。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ