異世界2
6日目は森の探索に勤しむことにした
なんと言ってもこの小さな体じゃ広すぎる森
逃走経路や隠れ家などを探しておいた方がいいだろう
それに肉食の動物や魔獣なんかは匂いで辿ってきたりする
できるだけ風下に位置した隠れ家も欲しいところ
その点で言えば今寝床として使っている木の洞は風下だし、近くに川もあるし、木の実がなる木が所々に生えているとてもいい立地だ
木の上から眺める景色なんてタワマンよりもいい
夕日が沈む所を眺めながら木の実をかじるのが眠る前のルーティンとなりつつあるくらいだ
それでも隠れ家がひとつっていうのは心もとない
という訳で、今の隠れ家からさらに風下を探索してみよう
けもの道もないような森の中をひたすら歩いたり走ったり立ち止まったり
それらを繰り返すこと半日程たったところで何やら木の上に建造物があるのが見えた
これはひょっとするとひょっとするのかもしれない
俺の捜し求めていたシャングリラはここにあったのか
建造物は近くに来たことでようやく正体が判明した
明らかにツリーハウスだ
つまり家を作れるほど知恵のある生命体がこの森にいるってことだ
俺はワクワクしながらそのツリーハウスが連なった、多分集落らしき場所を探索してみた
明らかに何かが生活している痕跡はあるが、人っ子一人誰もいない
朝温めて食べたであろうスープなんかが残ってたから多分出かけているのだろう
俺はひとまずこの集落で誰かが帰ってくるのを待ってみることにした
しばらくたっても誰も帰ってこなかった
腹が減ったからとりあえず持ってきておいた木の実を食べる
この体になっていいことは、食べ物が少量でも満腹になることだ
まあ逃げたりするとすぐ腹が減るんだけど
そうこうしているうちに眠ってしまっていたようだ
「ねぇねぇ見て、ふわふわで可愛い!」
「こら、危険な魔獣かもしれないでしょ。村長の指示を待ちましょう」
誰かの声がする
女性2人か?
うっすら目を開けてみるとエルフらしき耳の長い女性が2人俺の方を笑顔で見ていた
まずい、いきなり遭遇するつもりはなかったのに
このまま危険ありと判断されて殺され、いや、もしかしたら食われるかもしれない
すぐに起き上がって逃げようとしたが、扉が閉まっている
待て待て、何をやってるんだ俺は
入る時は窓からだったじゃないか
このツリーハウス、窓や扉はあるが階段はない
入る時と同じくそこから出れば逃げられる
だが甘かった。窓の前に先程俺をのぞきこんでいた小さい方の女性(いや少女か)が立っていた
「待って! 大丈夫だから、ほら、怖くないよ」
「こらエリミア! 危ないって言ってるでしょ!」
「でもお姉ちゃん、この子怯えてるし、逃げようとしたってことは多分攻撃手段がないんだと思う。それにほら、すっごく可愛いよ」
「確かに、危険な魔物や魔獣なら今の状況なら攻撃して来るわね」
どうやらこの2人は姉妹らしい
美人な姉と美少女な妹
是非ともペットにしていただきた、いや今はそんな場合じゃないか
とりあえず敵意がないことを見せるために俺は腹を見せた
野生動物の服従の証。伝わるといいが
「ほら、大丈夫そうだよ」
「そ、そうね、触ってもいいのかしら?」
お姉さんの方が俺の腹をそっと撫でた
あふん、気持ちいいです
「あら? この子」
「どうしたのお姉ちゃん? 早く私にも触らせてよ」
「ほらこれ見てエリミア」
「なになに?」
ん? 俺の腹に何かあるのか?
「この子女の子だよ」
は?
「ほんとだ。おっぱいがあるね」
何を言ってるんだこの姉妹は…
そう言えば俺、この体になってから生きることに必死で自分の体を能力以外確認していなかった
ゆっくりと視線を下腹部に
ない。前世で1度も使わなかった大事なものが、そこにはなかった
ショックを受ける
俺が転生したのはこの世界に居ない妖怪で、しかも弱く、そしてメスだった
いやメスで悪いということは無い
同種となる伴侶もいないんだから別に性別なんてどうでもいいんだ。どうでも、いいんだ
「ねぇこの子、大人しいし飼ってみようよ」
「でも村長がなんと言うか」
「大丈夫よ村長なら」
「それもそうね」
なんか村長、嘗められてないか?
程なくして俺は猫のように抱き抱えられながら、この村の村長という人の元へと連れていかれた
村長って言うからてっきりしわくちゃのおじいさんとか想像してたんだけど、村長は妖艶なお姉様だった
「あら、テラのところのアズナとエリミアね。何の用?」
妖艶で優しそう
俺、このお姉さんに飼われたいかも
「実はこの子、家に入って寝てて、それでですね、可愛いからうちで飼おうかと」
「うーん、その子、一体何なのかしら? 1000年以上生きてるけど、そんな動物見たことないわ」
ひぇ、このお姉様1000歳超えてるのか
「村長でも見たことないのですか?」
「ええ、山猫に似てるけど狼にも似てるわね。どれどれ」
村長が俺を抱き上げる
花のような甘い香りがする。それに柔らかくて気持ちいい
「まぁ、なんて可愛いのかしら。大人しいわねぇ。ほらこちょこちょこちょこちょ〜」
や、やめ、くすぐりは弱いんだ
「キュキュキュ〜」
「鳴き声まで可愛いわ…。いいでしょう、ちゃんと面倒を見れるのなら許可します。ただしたまに私に見せに来なさい」
「ありがとうございます村長!」
こうして俺はいきなり夢を叶えた
美人エルフのペットになるという夢を!