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異世界1

この世界はよくある剣と魔法の世界のようで、魔物や魔獣と言ったヒトを襲う化け物の他に、ちゃんと動物や、ヒトに飼い慣らされた家畜もいるらしい

確かに俺がいる森には小鳥や鹿のような動物、果ては熊までいるみたいだ

熊は案の定俺を見るなり餌として襲ってくる訳だが、そこは弱くても妖怪な俺、ちゃんと妖怪の能力を使って…

使ってみたけど脛をこすっただけだから、熊も何かしたか?って顔でこっちを見てるだけだった

使えねぇ、使えねぇぞこの能力

まぁ熊からは走って普通に逃げれた

一瞬で脛をこすって逃げる妖怪だけあって、逃げ足だけは抜群に速かったわけですよ

この速さがなかったらもう2度目の生を終えるところだった

チチチチと鳥のさえずりが聞こえるのどかな森

熊や魔獣と言った危険がなければ暮らしやすいな

木の実や食べれそうな野草も沢山あるし

てか俺みたいな妖怪が食べるものって木の実とかでいいのか?

いくら妖怪マニアだった俺でも、さすがに何を食べていたのかなんて知らないが、腹が膨れると言うことは大丈夫なんだろう

それにだ、熊の脛を擦った時、少しだけだが力がついた気がするんだ

いや本当に微量な感覚だから、それが本当に俺の身になっているのかは分からないが…

ともかく今はこのからだでできることを少し模索してみようと思う


1日目はどこまでスタミナがあるか試してみることにしたが、瞬発力などはあり、ある程度は走れるものの、持久力はあまり無かった

まあ成猫より少し小さい程度の体の大きさだ。そこは仕方ない。瞬発力があるだけでも良かった

逃げる分にはその瞬発力を生かしての逃走ができるが、戦いには絶対向かないな

狐の噛みつき程度で死にそうだ


2日目は能力の把握に務める

脛をこする程度の能力だから逃げにも攻撃するにも全く当てにならないとはいえ、妖怪には訳の分からない能力でも後々何らかの効力があることがわかった。なんてこともある

ひとまず襲って来そうにないユニコーンらしき一角獣やクリスタルの角を持つ鹿なんかで試してみた

脛をこする。本当にただそれだけ

こすられた動物たちはみんなキョトンとし、あれ?なんか触った? みたいな顔をしている

ただ少しわかったことがあるんだ

脛をこする度に俺の中になんらかの力が流れ込んでくる気がする

力が増してる感じもするし、悪い気はしないどころか気持ちいい

それから俺は安全そうな動物を見つけてはその脛を擦ることを日課とした


3日目は神眼の確認

この眼は発動することで様々な情報を掲示してくれるようだ

これがあることで安全な動物なのか、襲ってきそうな魔物や魔獣なのかが正に一目でわかる

ユニコーンらしき馬はやっぱりユニコーンだったな

説明によると、慈しみが深いらしく、俺のような無害な動物(妖怪だが)にはむしろ餌を分け与えてくれたりもするらしい

ただ角がかなり高価な薬や、毒を浄化するためのコップになったりもするため、人間によく狙われてるらしい

それからクリスタルの角を持った鹿は水晶鹿と言うらしく、危害さえ加えなければ大人しい

そしてこの鹿もどうやら人間に狙われやすいようだ

水晶角が高値で売れるんだとか


様々な動物を見て、危険なのかそうでないのかを学び、今度は自分自身を見てみることにした

種族は妖怪族スネコスリ

種族の説明には、この世界でただ1匹、唯一無二の存在と書かれている

希少ですよ俺は

能力は脛をこする

この能力は脛をこするだけと書かれていた

うん知ってた

いや待てよ、続きが書いてあるな

擦ることで妖力を取り込む? これってこすればこするほど俺の力が増すってことなのか?

まあ妖力が上がったところでこするだけじゃどうしようもないが…

この森からでなければずっと生活してはいけそうだが、長いこのすねこすり生の中、ずっとこんな森にいたんじゃそのうち飽きが来るだろう

ならば世界を見て歩くっていうのも悪くない

ただそれは同時に命の危険も孕んでるんだよなぁ

しばらく考えてみた

今はまだ新しいことだらけでこの森で暮らすのも楽しい

よし、飽きた時考えるか


4日目はひたすら様々な動物や魔物、魔獣の脛をこすり続けた

ただただひたすらに走って走ってこすってこすって

とにかく妖力を体に貯め続けてみた

本で読んだ経験上、強い魔物なんかと遭遇したら主人公たちは何とか自分の能力を駆使して戦ったりしていたが、何せこの俺は攻撃手段が猫のような引っ掻きと子犬のような噛みつきしかない

その辺にいる野犬にすら勝てないんだ

我ながら情けないがこれは仕方ない

逃げて生き延びる。そして時には脛をこする

それが俺のモットーとなりつつあった


5日目になるとかなり脛をこすることにも慣れてきて、素早く、気づかれることなく擦れるようになった

俺、すねこすり向いてるかもしれない

妖力が体に満ち満ちているのか、すこぶる調子がよい

ただ相変わらず危険な魔物達からは逃げてるんだけど…

妖力もだいぶ溜まったからひとまず神眼で自分を確認してみることにした

ふむ、吾輩はすねこすりである。名前なんかあるわけない

自分でつけるのもめんどくさいし、いつか誰かのペットにでもなれた時にでもつけてもらおう

ちなみに目標は長寿種族のペットだ

エルフ、エルフがいい。きれいなお姉さんならなお良し

おっとそんなことより確認だ

能力、は、脛をこする、と?

1個増えてるぞ

えーっと転ばせる…

ふぅ、まあ攻撃手段ではないけど逃げるための手数が増えたことは喜ばしい

でも俺の考えた通りだったな

すねこすりの伝承には脛をこすることと、峠で人を転ばせるというものがあった

つまり転ばせる事も立派なすねこすりの能力なんだ

この体格で人間を転ばせていたんだから、引っ掛けるんじゃなくて能力なんだろう

とりあえずこの能力の確認は明日することにして、俺は取ってきた果物を小さな口でもちゃもちゃ食い、昨日見つけた木の虚で眠りについた

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