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潜移暗化  作者: 如月 爛花,
1/1

出会い

注意:いじめ、百合、リストカットの表現があります。


起きて

学校に行き

キョウイクされ

帰る


こんな毎日だ。

これが当たり前だと思っている。

私はそんな生き物なのだ。

この日常がずっと続いていくと思っている。

思い込んでいる。

思い込ませている。

だがある夏を境に変わった。彼女に会ってから。


某日。

起きても何もすることがないので、ボロボロの制服に着替えそのまま学校に行く。髪はバサバサ。

体中にはキョウイクの痕。

痛む。


電車に乗る。特に何もない。わけがない。

クラスメイトが私の靴を踏んできて私はこけてしまった。

そこで女の人とぶつかってしまった。

髪が黒髪で白のメッシュのショートヘア、丸眼鏡で

とてもお洒落でかわいい。

それに加えかっこいい。

正直言って胸がときめいた。

そしてこの人が私の運命の人だと思った。

謝りながらボソッと「助けて。」と言ってみた。

女の人は驚いたような顔をした後に、

私にだけわかるように「あした、このじかんにきて」

と言ってくれた。

少し希望が見えた。


学校に着いた途端、

クラスメイトが思い切り腹を蹴ってきた。

「マジおまえと朝っぱらから同じ空間にいるの嫌なんだけど!!糞がッ!!お前に子供を産む資格なんてねぇんだよぉ!!!このキョウイクでしっかりと分かれよ!ゴミ!!!」何発も何回も。

蹴られた。

何か月も前から生理は来ていない。

もう。使い物にならないみたいだ。

もう。生きている意味などないのかもしれない。

もう。いっそ。

楽に。なったほうが。

いい。

かも。

でもあの女の人と話したい。

蹴りの痛みはもう。感じない。

明日までの辛抱。

明日。私は。


逃げる。



次の日。

昨日と同じ時間。

同じ車両。

走る電車の窓からあの人が見えた。

わかりやすい。

それと同時にクラスメイトも見えた。

見なかったことにする。

見えなかったことにする。

ドアが開く。

あの人は、私の姿を見て爽やかな笑顔で手招きをしてくれた。

天使。

胸がキュンキュンした。

恐れ多いがその席に向かい合わせで座った。

電車が進む。

女の人は、自己紹介をしてくれた。

笹田柚ささだゆうというらしい。

名前の時点で可愛い。

私も失礼になると思い自己紹介をした。

「優ちゃんか…私と読みかたは一緒だね!」

ニコッとはじけるような笑顔だ。

可愛い。

「それで助けてほしいって…何があったの?あの時。」

私は、ゆっくり、わかりやすく話した。

学校の最寄駅を過ぎても構わず全部話した。

涙があふれそうになったが何とか堪え、全部話し終えた。

そして柚さんのほうを見ると泣いていた。

綺麗だった。

「そんなことがあったんだね…つらかったよね…もう今日は学校行かなくていいと思うよ。私の家に来なよ。次の駅だし。」

てっきり仕事に行く途中かと思った。

バーを営んでいるらしい。

かっこいい。

最寄りの駅に着いたみたいなので降りる。

お世辞にも都会とは言えないところだった。

言うならば、田舎のおばあちゃん家みたいな所だ。

てっきり都会に住んでると思っていた。

駅を降りてまず目の前が田んぼ。

そこにJKと黒髪で白メッシュの柚さん。

かっこいい。

少し歩くと、畑で作業してたおばあちゃんから声をかけられた。

「あら。柚ちゃんお帰り…って横にいるのは彼女さん!?立ち直ったん?かわいいねぇお幸せにぃ。」

「ちょっとぉそんなひとじゃあないですよ。ちょっと事情があってしばらくうちで預かることになった優ちゃんです。よろしくお願いしますね。」

「二人とも名前が一緒なの!?運命の人かもね!」

「そうだったら面白いですね。では失礼しますね。」

世間話をしている柚さんはとてもキラキラしてた。

可愛かった。

「じゃあ行こっか。」

柚さんは歩き出した。

後ろ姿がみたかったのでゆっくり歩いた。

柚さんの髪の毛が太陽光を引き寄せて、白色の髪が光を発しているようにみえた。

まるで柚さんは月だ。

わたしにとっては太陽のような人だが月のような美しい人でもある。

可愛い。

かっこいい。

美しい。

綺麗。

私が柚さんに釘付けになっているのに本人は気づいているらしく、

「家に帰ったらいっぱい見ていいから早く帰るよ。」

と言われてしまった。

いつ死ぬかわからない私は、

柚さんと居れるこの時間は、とても大切で。

とても嬉しくて。

でも。とても死ぬのが怖くなる。

柚さんと一緒の時間を共有してるこの時間。

泣きそうになったが柚さんが居てくれる。

そう思う。そう思って過ごさないと私が壊れる。

私。殻は強い。キョウイクされたから。

私。心は弱い。キョウイクできないから。

私。私。私。

どれが本当の私かわからない。

でもわからなくなれば、生まれ変わればいい。

偽物の私に。

でも今、本当の私を取り戻している気がする。

「優ちゃん?着いたよ。おーい!生きてる?」

完全に考え事で周りが見えなくなっていた。

「ごめんなさい…考え事してて…」

「なんで謝るの??自分で抱え込まないで。私は優ちゃんの味方だよ。家の中でしっかり話聞くよ。私も学生の頃にいじめは経験してるからね。気持ちはよくわかるよ。〈話す〉ってとても大事だからね。」

…? 今、なんて言った?『私も』?? 

そんな感じは全くしなかった。

よくわからない気持ちのまま、柚さんの家にお邪魔した。

いい匂いがした。金木犀のいい匂いだ。

玄関には造花の赤い薔薇があった。

その横には四葉のクローバーのしおり。

「早く上がって。多分リビングあったかいから。ね。そこで話そ。」

優しい。

泣きそう。

あれ?なんで手の甲が濡れてるんだろう。

なんで目頭が熱いんだろう。

なんで柚さんが抱きしめてくれてるんだろう。

あれ?

なんで?

なんで?

「優ちゃん…辛かったよね…大丈夫だよ。わたしが優ちゃんの親代わりになるからね。」

柚さんはとてもやさしい。

柚さんを吸った。胸を。赤子に戻った気分で。

いい匂いがした。とても優越感に浸れた。

でもこの涙は止まらない。泣きつかれた。

私は柚さんの胸の中で寝た。とても幸せだった。

学校のことはどうでもよくなった。


同日、18時。

「…ゃん。優ちゃん。起きて。向こうに着いたらまた寝ていいから。」

はっ!!熟睡してた。

でも寝れたのは久々だ。

でも腹が痛い。

押しつぶされている感覚がある。

久々だ。

「すいません。お店てずっっ!!」

デコピンされた。痛くない程度の。

「なんで優ちゃんはすぐ謝るの!?私といる間は謝ったらダメ!!分かった?」

よくわからない約束をされた。

「わかりました…あとお店手伝います。」

「本当は手伝わなくていいけど、どうせ手伝う流れになるんだろうな。主に会計を任せていい?」

「わかりました。頑張ります!」

用意をしようと立ち上がる。

下腹部に嫌な予感がした。

トイレに駆け込む。

案の定、出血してた。多分生理ではない。

必要以上に蹴られたので内臓のどこかが傷ついているのだろう。日常茶飯事だ。

「柚さん、ナプキンお借りしてもいいですか?」

「借りるのか…あげるよ。使用済みを返されるのもなんか嫌だし。へへっ」

少し意地悪そうに笑った。

顔をクシャっと歪ませ笑った。漫画のオノマトペで言うとイシシとかにへらっなどの部類の笑い方だ。

可愛い。

丸眼鏡が余計に可愛さを引き立てている。

ありがとう。丸眼鏡。

電車に乗って町の中心部まで行く。

もちろん向かい合わせで座った。

電車が進む。

学校の最寄駅に着いた。

クラスメイトが乗ってきた。

声を聴くだけで震えが止まらない。

「大丈夫?こっちおいで。」

私は柚さんの隣に座った。どうするつもりだろう。

と思っていたら柚さんの頭がこちらに乗ってきた。

「これでカップルみたいだね。」

低音ボイスで言われた。

かっこいい。

クラスメイトの声が近づいてきた。

「ていうかあいつ今日来なかったじゃんwがち暇だったんだけどwキョウイクしすぎたかなwまあ一日くらい休ませるか。その代わり次、学校来たら死ぬ一歩手前までやるかw」

柚さんが殺気立っている。

やばい。

「怒らないで。おねえちゃん。」

私が持てる限りのロリっ気を使って言った。

「はっ…///」

柚さんは急に私をわしゃわしゃしてきた。

うれしかった。

もっとしてほしい。

私たちが住んでいる町で一番栄えてる所に柚さんは店を出している。

飲み屋街を比較的明るい時に歩くのはなんか違和感がある。柚さんのお店はビルの3階にあるらしい。

向かいのお店はキャバクラ、隣はホストクラブ。

そこにバー。圧倒的不利。と思ったが人は来るらしい。

一見さん3割、常連が6割、おかまが2割とかいう

謎の客分布を教えてもらった。

なぜか1割オーバーしているのは気にしない。

確かにいてもおかしくはないが2割って…

そうこうしているうちに、柚さんは開店準備を進めている。

「優ちゃん、そこの柿ピーの箱取ってくれる?」

「はい、分かりました。」

意外と重い…私が非力なだけだが。

「どうぞ。」

「ありがと。二人もいると準備早く済むし、なんせ開店まで退屈しなくて済むね。」

そう言うと柚さんは、カウンターの引き出しから

煙草とライターを出し、

カウンターの端からお客用の灰皿を引きずり込み

煙草が火に付けられた。

かっこいい。

煙草のにおいは慣れた。

父が吸っていたから。

どこでも。

いつでも。

でもあの時に父に向けた感情とは違う。

父は、嫌い。

父が好きなものは、嫌い。

でも柚さんは好き。

かっこよくて、

可愛くて、

ギャップ萌えがやばい。

「あっ…ごめん。煙草嫌いだよね。今すぐ消すね。」

柚さんが指に挟んでる煙草を灰皿に押し付けようとしたので、腕をつかみ阻止する。

「柚さんが吸ってるのは嫌いじゃないです。なのでずっと吸っててください。」

「ずっと吸ったら死ぬよw」

「確かに…」

二人で笑った。

笑ったのっていつぶりだろう。

思い出せない。

というか笑ったことってない気がする。

自然に笑えた。

嬉しかった。

「柚さんありがとうございます。」

自然に感謝の言葉が出てきた。

「んえ?なんのこと?」

「いや…またいつか話します。」

「ん…そっか…」

深堀りしてこなかった。

やっぱり気持ちがわかるんだ。

そのあとは世間話をちょっとした。

「そろそろいい時間だから店開けるよ。頑張って働いてもらうよ。」

「はい!私にできることならなんでもやります。」

開店して10分後ぐらい経ったら、最初のお客が入ってきた。

「笹田。おひさ。」

「竹内!ひさしぶりじゃん!!いつぶり?成人式ぶりかな?」

昔の同級生っぽい。

しかも結構仲がよさそう。

あれ。

なんだ。

この感情。

まあいっか。

「んだな。ここ探すの地味に大変だった。」

「そうじゃん!よくわかったね。木村に聞いたな?」

「聞いたけど大まかな場所しか教えてくれなかった。」

「だろうね。まあ座って。なに飲む?」

「カルアミルク。」

「好きだね。成人式の二次会でもそれしか頼まなかったよね。」

「おん。」

竹内という人は、しゃべり方からするとぶっきらぼうだけど、悪い人ではなさそう。

柚さんとは真逆だと思うけどなんだかすごくうらやましい。

私もあんな風に話せる友達が居たらな…居たらな。

楽しかっただろうな。

この腐った人生。

「優ちゃん。お菓子とか台所にあるから適当に入れて持ってきて。」

「わかりました。」

正方形の薄い皿にキッチンペーパーを一枚置きそこに適当に柿ピーとポテチを入れる。

「できた?うん。完璧。じゃあこの『お客さん』に運んで。」

「おまえ。お客さんってちょっと恥ずかしいだろ。」

「いいじゃんw」

恐る恐る出す。

「あ。どうぞ。」

「ん。ありがと。君はバイトさん?それともこいつのかのj」

「ああああ~~はいはいカルアミルクできたよ!!どうぞぉ!!」

柚さんは竹田さんの言葉を遮るようにしゃべり少し怒ったようにグラスを置いた。

「お…おう…あんがと…」

そして柚さんは私に聞こえないぐらいの小声で(聞こえたけど)

「まだそのことは隠してるからしゃべんな。」

少しだけ電車の中での殺気が見えた気がする。すると次のお客さんが来た。

「いらっしゃい…って木村かよw」

「おう。竹田もいるんかい。」

「お前ぜってえ狙ってきただろ。」

「さあ?どうでしょうw」

「まあ、どうする?テーブル席で話すか?」

「ひさしぶりに話すか!」

「まあ偶然?木村も来たし。」

なんか仲良しグループがそろったみたい。

羨ましい。

いいな。

ああやって話せる友達居て。

私も欲しかった。

「あれだったらそこのお嬢さんも一緒に話すか?」

「え…?」

「優ちゃんも来なよ。ここの面子は私のことよくわかってる人だし。というか全員いじめられた経験ある人だから。」

私はすごい人に助けを求めたのかもしれない。

それからお客さんが来なかったので思う存分話せた。

竹田さんと木村さんがなんでいじめられたのかとか

この三人はどのように知り合ったとか柚さんの髪色の話とか聞けた。

髪色の話は途中で遮られてよく聞けなかった。

あと、いじめられた理由を柚さんは、話してくれなかった。

話したくないのかもしれない。

さっき柚さんは深堀りしなかったので私も深堀りはしない。

いつか柚さんの口から話してくれる時まで私は待つ。

私は待つ。

「ふう~飲んだな。俺らそろそろ帰るわ。久しぶりに会えてうれしかったわ。」

「俺も楽しかった。優ちゃんもありがと。」

「うん!またきてな!!」

店が静かになった。人とあんなにしゃべったことないからたのしかった。

さみしい。

「よし。店閉めるか。洗い物するで。」

閉店後の作業が一番疲れた。

洗い物で手がかじかむ。

皿やグラスは一気に持てないので往復しないと台所に持っていけない。

足がぱんぱんになった。

「そや、遮った髪色の話な、わたしこれ地毛やねん。いじめられた時のストレスでこんななったらしいわ。これだけは二人きりの時に話したかったんや。やけん遮った。」

柚さんは酔ったら関西弁になるらしい。

それじゃなくて、地毛?

こんなきれいな髪が?

ブリーチを繰り返したとかじゃないの?

かっこいい。

最高。

「まあ、これのおかげでいろんな人に覚えてもらえるようになったからええかも。」

確かにこの辺にこんな髪で

こんなにおしゃれで

可愛くて

かっこいい人は柚さんしかいない。

「柚さん。好きです。」

「んえ!?」

あきらかに柚さんが動揺してる。

というか私も動揺してしまっている。

なんでこんな言葉が出てきたんだろう。

逆にこの言葉が私の伝えたい本当の言葉。

「ありがとうねぇ...うちも大好きやでぇ...かわええなぁ...」

柚さんは自分の胸に私の頭を押し付け髪をわしゃわしゃした。

ムツゴロウさんかな?

でもうれしかった。

柚さんの目には、頭には

今。

私しかいない。

私だけを見てくれている。

うれしい。

こんなことははじめてだから。

でもいつかこのじかんがおわる。

ゆうさんがよっているこのじかんだけこのしあわせなときをすごせる。

つぎがあるかどうかわからない。

そんなことをかんがえていると

かなしくなってくる。

このままずっとすごしたい。

ゆうさんはわたしのものに。

なればいい。

わたしはゆうさんのものに

なればいい。

「そろそろ帰ろっか。」

おわりが来てしまった。

かなしい。

だけど

うれしかった。

でもこの

うれしかった

時間の何倍も

悲しい

時間がある。

でもこの

うれしい

時間だけを覚えていてこれからを過ごそうと思う。


電車に乗って帰る。

電車が進む。のが遅く感じる。

長い。

長い。

早く着いてくれ。

何時間もかかったような感じがするがたった数十分しか経っていない。

夜の田舎は暗い。

暗いとこは嫌い。

暗いとこは怖い。

キョウイクで暗いとこに閉じ込められたから。

嫌い。

怖い。

怖い。

涙が出そう。

私が怯えてるのをわかったのか、柚さんは私をぎゅっと抱きしめてくれた。

「大丈夫だよ。優ちゃん。私がいるよ。」

でも柚さんはハアハア言っていて苦しそう。

私は分かるようで分からない。でも、もし今予想してることが起きても私は、

嬉しい。

柚さんの家まで凄い遠く感じた。

たかが、数百メートルなのに。

遠く感じた。

足が重い。

でも頑張って歩いてようやくついた。

柚さんの家はいい匂いがする。でも金木犀じゃない。

これはジャスミンだ。ジャスミンのにおいがする。いい匂いだ。

玄関の花も変わっている。

造花の赤い薔薇じゃなくて月下美人(Queen of the Night)になってる。

綺麗だ。

柚さんと一緒で。

綺麗だ。

「手、洗っておいで。あと先に風呂入る?」

「いや、私は後でいいですよ。」

私にとってお風呂は最高の場所だ。

キョウイクされない。

母からの小言も言われない。

誰からも邪魔されない。

私、一人の空間だ。

「ふーん、じゃあ分かった。ちょっとこっち来て。」

「柚さんどうしたんでっ...」

ベットの上に押し倒された。

「ごめん。優ちゃんが好きって言ってくれた時から...ううん。助けてって言ってくれた時から私、我慢してたんやで。でももう限界や。ごめんな。」

「もしかして私と一緒に歩いてて『彼女さん?』とか聞かれてたのって...」

「そうやねん。うち女の子が好きやねん。ごめんな。こんな人で。」

カーテンの隙間から、月の光が射した。

綺麗。

白色の髪が輝きを増す。

そのすべてが完璧な柚さんのおでこにデコピンをする。

痛くない程度に。

「なんで柚さんは謝ってくるんですか?私に謝るなっていったくせに。なので私に向かって謝らないでくださいね。」

「でも、優ちゃんはいくら好きな人でも会って2日でこんなことされるの嫌でしょ...」

「柚さんだったら何されてもいいです。」

「ありがとうね...私も優ちゃんのこと大好きやで。」

「これでりょうおっ」

私が言葉を言い終わる前に柚さんは唇をふさいできた。

そして最初は軽い接吻だったが柚さんは舌を入れてきた。

柚さんは私の舌を隅々まで嘗め回し、私の唾液を飲んだ。

とても気持ちがよかった。

おなかが柚さんを求めている。

使い物にならなくなったおなかが。

「優ちゃん...これ以上いったら私...止められなくなるけどいい?」

「柚さんが満足するまでしていいですよ。早くしてください。私も我慢できなくなりそうなんで。」

私がそう言うと柚さんは私の服を強引に脱がした。

私の体はキョウイクの痕だらけ。

柚さんは私のキョウイクの痕を癒すように傷跡を舐めていく。

くすぐったい。

きもちいい。

イキそう。

「柚さん...わたし...舐められる..だけで...イキそうです...///」

「いいよ。うちにイっちゃう姿見せて。」


ーーーー


私は大好きな人に舐められるだけで絶頂するひとらしい。

とても気持ちよかった。

当然一人でもしたことはあるが終わった後の虚しさが気持ちよさを超えるのでやめた。

でも今回は虚しさなんかない。

幸せだ。

とても嬉しい。


柚さんが可愛い声で言ってくる。

「なあ。うちもイキたいなぁ...」

「でも、私舐め方わかんないです...」

「じゃあうちの性感帯を指で当ててみ。あ、うち後ろの穴でもイけるで。」

私が指で柚さんを絶頂させる...すごい興奮してきた。あの柚さんを指で...

「よし...本気で当てに行きます。」

私の指が柚さんの性器に触れる。

少し奥に入れる。

「んっ///そこ惜しいな...///しかも指長いから余計気持ちいいわ///」

柚さんが震え上がるところを探す。

「ああっ///」

ん?いま、腰が浮いたような...

もう一回押し上げてみる。

「そこっ///らめぇ...///」

ここか...

柚さんの感じるところが分かったから、その個所を重点的に攻める。

「やばっ、うち、JKにイかされてしまう...///」

「いいですよ。JKがイかせてあげますよ。」


ーーーー


柚さんの腰が浮き、へたぁと床に溶けびくびく震えている。

私はその光景を恍惚と見ている。

私の手で柚さんをイかした。

相当気持ちよかったのか、まだ柚さんは震えてる。

なので綺麗な頭をなでる。

とてもすべすべでさらさらでなでていて気持ちいい。

肌も透明感が私と段違いで羨ましい。

「めっちゃ気持ちよかったわぁ。ありがとなぁ。」

「柚さんは、ほかの人ともこんなことはしたんですか?」

「まあな。でも一人しかおらんで。本当にあいつは私にとって大切な人やった。」

柚さんは泣きそうな顔で、話してくれた。






あいつとは小学校からの幼馴染でな。どこ行くのにもあいつと一緒やった。

しかも両親同士も幼馴染やった。やけん、家族ぐるみの付き合いでな。

高校まで一緒やったんやけど、私は高校出て短大行った後バーをやり始めた。

あいつは、大学行った。でも結構な頻度でうちのバーに顔出してくれてん。

でもな、私がバーをやり始めて4年目のある日。あいつは電話してきて、

『今日、そっちに差し入れもっていくけん。席2つ開けて待っちょいてや。』

あいつから電話ってまあまあ珍しくていい酒でもてにはいったんやろうな

と思って待っとったんやけど、23時になっても来んくて、心配になったんよ。

そしたら電話来たんよ。

あいつの親から。

『柚ちゃん?落ち着いて聞いてな...●●がな...事故にあって...死んだらしい。。。』

え?

最初は信じられんかった。でもあいつの親の話を聞いてたら、だんだん実感がわいてきて。

とにかく、客を全員帰して、病院に走っていった。

病院に着いた時間は24時。

日をまたいだ。

目の前にあいつの死体。

顔が苦しそうやった。

周りを気にせずに大泣きした。

私の隣にいっつもいた。

あいつが死んだ。

私の弱すぎる心には大きすぎる穴が開いた。

たちなおれなかった。

葬式も抜け殻みたいな感じで出た。

何も頭に入らなかった。

葬式が終わってあいつがあの時持ってくるはずだった酒が渡された。あいつの親から。

『あの子...あなたにこのお酒を渡したかったのよ...』

獺祭だった。比較的有名な山口県の地酒だ。

スッキリとした辛口だが後味がほんのり甘く飲みやすくて二人とも好きな日本酒だ。

少し傷ついた獺祭のラベルを見て涙が出てきた。

それから恋人は作ってない。作る気も起きなかった。

だから私のこと好きになってもいいこと無いで。

空元気しか回ってないからな。




私は泣いていた。

「なら私が柚さんが好きだったあの人の埋め合わせになります。」

「でも...モチベの浮き沈み激しいからめんどくさいかも...」

「柚さん。まず自分をチェーンソーとか草刈り機と考えてください。あれってエンジンを動かすのって何回か紐を引っ張らないと動かないですよね。紐を引っ張っている時が空元気を回していると思ってください。何回も何回も空元気を回すといつかは本当の元気が出てくるんですよ。なので今からでも遅くないです。あの人のためにも私と一緒に冥土の土産を作りましょう。そして死んだら一緒に話しながら獺祭を飲めば幸せですよね。」

柚さんは泣いていた。

数時間前の私のように。

柚さんの頭を私の無い胸に引き寄せた。


大声で泣く柚さん。

頭をなでる私。

この二人を照らす月。



Das Wort schön ist für sie.



泣きつかれた柚さんは寝てしまった。

なので私は起こさないようにベットに運んであげる。

寝顔が可愛い。

鼻血が出そうだったが気合で何とかする。

「お休みなさい。私の可愛い柚さん。大好きだよ。」

頬に軽く口づけをする。


私は台所に行き病院から支給された錠剤を口に含む。

指定量より多く。

私はもう無理だ。

長くは生きられない。

余命だってある程度はわかっているらしい。

具体的に言ってくれないが。

すぐ死んでしまって、柚さんを悲しませるかもしれない。

でも私は後悔がないように。

今。

この時を無駄にしないように生きる。

寝る暇も惜しい。

私はまだやることがある。

やらなければならないことがある。



腹が痛む。

腕が痛む。

頭が痛む。

膝が痛む。

心が痛む。


自分が憎い。

今すぐ自分を壊したい。

私が駄作だったせいで。

神田君を怒らせた。

神田君が転校させられてしまった。

私のせいで。

周りが完璧なのに。

わたしみたいな駄作がいるせいで皆に迷惑を掛けてしまう。

だから死んでしまおう。

と思って何回死に損ねたんだろう。

早く楽になりたい。人生なんかどうでもいい。

早く。

早く。

早く。

早く余命が来てほしい。

でも。死ぬのは怖い。

死にたくない。

死にたくない。

死にたくないなら周りの人間を殺して私だけになればいい。



視界が狭くなってわかりにくいが、何とか鞄が見つかった。

鞄から剃刀を取り出す。

ついでに消毒液を浸み込ませた清潔なタオルも。

傷だらけになった細い手首の外側に剃刀を思いっきり押し付ける。

剃刀の先端を腕に食い込ませるように人差し指をプラスチックのところに置き力を加える。

そして力を入れたままゆっくり手前に引く。


血があふれてくる。

薬の成分が抜け出すのを感じる。

その血をタオルで抑えベランダに出る。

こうして鬱な感情を抑える。

だから私の手首、二の腕は傷だらけだ。

冷たい夜風に当たる。

嫌なことも風に乗ってどこかに行ってくれる。

十分に夜風に当たり、止血をして居間に戻る。

鞄からガーゼを取り出し柚さんの家を汚さないように入念に傷を塞ぐ。


傷の手当てをした後に柚さんの寝顔を見に行った。

枕で顔が潰れていた。

むにゅっとしてた。

思わずほっぺたを触る。

「うにゅ...」

可愛い謎単語を言った。

あまりにも可愛いので布団に潜り込む。

さっきよりも柚さんの顔が近くなった。

寝る時間が惜しいが添い寝もしてみたかったので今日は寝ることにした。

私は柚さんの耳元で囁く。

「柚さん。ich liebe es.」


おやすみ。私の大嫌いなこの腐った世界。





 












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