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裏庭の魔女  作者: 岡田 ゆき
第三章 蟲の楽園からの来訪者
74/198

3−2

 城の最上階にある謁見の間に一同が辿り着くと、ロナール国王であるカヴィタスが玉座に脚を大袈裟に組んで座っていた。隣では青髪の王妃が人形のように座っている。

「よく来た、アンセクト新国王」

 全く立ち上がる気配も無く、上から見下ろしている。

「貴重なお時間をいただき有難うございます、ロナール王」

 アレーニも跪くなどせず、強気に立ったまま頭を下げることなく見上げて挨拶をする。若き新国王と雖も、堂々たる風格を放つ。

「ふん、王として顔を出したのは勿論我が国が1番先だろうな?」

 面倒くせーな、何番目でも良いだろうがオッサン、とアレーニは内心毒を吐いたが、

「転移魔法で参りましたのでいくつかの国の地には足を踏みましたが、不要な寄り道はしておりません」

 女性の様な美しい顔立ちで笑顔を作りながら答えた。

「アンセクト国は魔法が使えている者が余っているだろう。我が国で戦力として優遇してやるから何匹か譲ってくれないか。無論、アンセクト国にも礼はやる」

 また戦争を起こす気かとアレスフレイムとマルスブルーが眉間にしわを寄せる。

「魔法は使えても日常生活を豊かにするものしか私達は知りませんので、お断り致します」

 尚もアレーニは清々しく笑顔を放っている、まるで見下すかのように。

「そこに居るお前の妹はどうだ。アレスフレイムの妻として結婚をさせるのは」

「断る」

 静かに怒りの炎を上げたアレスフレイムがアレーニの背後から間髪入れずに言い放った。ノインたちが途端に冷や汗を流しながら彼を見つめる。

「王族の婚姻などお前に決定権などあるはず無いだろう。恥晒しが、黙っていろ」

「強い魔力の戦力を作りたい野望が丸見えなんだよ。子どもは国の駒では無いし、女は子を産む道具じゃねぇよ」

「なんだと!!!」

 顔を真っ赤にしてカヴィタスは肘掛けを握り拳で上から叩きつけた。

 すると、

「妹のハニビはまだ幼く、他国の王子の妻などまだまだ器ではありません。すぐ感情的になりますし、考え無しですし、ワガママで、アレスフレイム王子の欲情を燃やすような色気なんて全く無くてぺちゃんこですし」

 アレーニが飄々と間に入って妹を貶した。今度は彼の横に居た妹のハニビ姫が見る見るうちに顔が真っ赤となっていく。

「酷過ぎるわお兄様! そこまで言う必要ってあるかしら!?」

 ハニビがフーフーと息を荒らしながら興奮をしているのを見てもアレーニはしれっとしながら

「おっと兄妹喧嘩を他国の謁見の間でするなど恥ずかしいの極みだよ。続きは外でしよう。ロナール国王、滞在期間中は貴方様のお手を煩わせるような真似は致しません。帰国の際にまたお会いしましょう。王子たち、案内をお願いしても良いかな」

 風のようにアレスフレイムたちをも一緒に謁見の間から抜け出したのだった。

 謁見の間の大扉が完全に閉じた瞬間、


「あ〜、クソ不味い空気吸った」


 作り笑顔から一気に無表情へアレーニの顔が変相した。

「お兄様!!! 何が兄妹喧嘩よ! 喧嘩を吹っかけてきたのはお兄様でしょ!」

「1秒でも早くあんな耳障りから解放されたかったからね」

「はぁ!?」

「ハニビがガキで助かったよ」

 とびっきりの笑顔でアレーニがハニビの頭を撫でると彼女は本気の力で彼の手をバチンと叩いた。

「父が非礼な態度で申し訳無い」

 マルスブルーが謝ると

「王子クンたちが悪いわけじゃないっしょ。王があれじゃ苦労するねぇ」

 アレーニは楽しそうに笑いながらフォローをした。

「じゃ」

 それから彼は長いイエローの髪を片耳に掛けると、

「アレスフレイム王子とお付きの前髪クンの3人でお喋りがしたいなぁ。妹と家臣の、彼はシャド、彼等を先に客室に案内をしてもらっても良いかな」

 手早くマルスブルーたちに要求を伝えた。

「えぇ〜私もアレスフレイムさまとお話しした〜い!」

「元々ボクに付いて来るのを反対しただろ。時間が無いんだ。君は今回は政治の話に参入しないで欲しい」

「一緒に居るくらい良いじゃない!」

 尚も引き下がらないハニビに対し、

「邪魔をするなら強制的に魔法で送還するよ」

 笑顔だが目が全く笑っていない冷たい空気を放った。それまでぎゃんぎゃんと騒いでいた彼女も途端に凍りつく。

「悪いネ王子クン、妹たちをお願い出来るかい」

「わ、わかりました」

 彼の氷のようなオーラにマルスブルーも怖気付き、青ざめながら頷いた。

「こちらでございます」

 マルスブルーが率いてスティラフィリーたちとも共に彼女たちは長い廊下へと歩んで行った。


「さて」

 アレーニがやや低い声で切り出した。

「秘密の話をするのに適した部屋を願いたい。まぁどんな部屋でも良いや。ボクが魔法で外の連中に聞こえないようにするから」

「…………こっちだ」

 アレスフレイムは執務室の方へと向かったのだった。


 廊下の途中で来城していた貴族の娘たちが中性的で鼻筋も通っていて美しい顔立ちのアレーニに目が釘付けとなっていた。

「あれがアンセクト国の新しい王様!?」

 ひそひそと声が舞い始める。

「顔だけ見たら女性みたいに美しいわ。背も高くて、なんて美しい国王なのっ」

「歩く宝石の様だわ」

「まだ22歳でいらっしゃるみたいよ。お若いのに国王のオーラが凄まじいわっ」

「でも、ご結婚どころかご婚約もされてないそうよ?」

「アンセクト国は結婚適齢期が遅めなのかしら」

「国中の女性と謁見したそうよ。でもお決めにならなかったんですって」

「だとしたら」

「ええ、だとしたら…っ!」

「花嫁探しにいらっしゃったのね!」

 



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