表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

「ペットが死んだくらいで学校休むなよ」

作者: 月輪話子

―最悪。


今日はHIGAKENの生配信なのに。

自分の思ったことを考えなしに口走っちゃうバカのせいで帰りの会が終わらん。


「はい、大体出たかな?他、別の意見がある人は?


はい!

じゃあ、『何で林君はネコが死んで学校を休んでしまったのか』。

今までの意見を元に、皆で話し合ってみようか。」


いやいや、先生、なんで?

そこは普通に人が傷つくことを言うのはやめましょう、でいいじゃん。

デリカシーないし。

道徳の授業ちょうど明日あるし、そっちでやればいいじゃん。


このあと習い事や部活ある子もいるよ…って。


…うわ、ヤバッ。


皆まじか…。


早く帰りたいの俺だけ?ってなるくらいいつのまにか黒板みちみちに意見出てっし…。


―――


・ペットは家族 10票

ペットはずっと一緒に暮らす家族の一員。

大好きだった相手が死んだら悲しい。

失ったショックの大きさを考えれば休んでも仕方がない。


・ずる休みだと思う 5票

ネコのそうぎは人間と違って1~2時間で済み、学校を休む理由にはならない。

ペットロスの診断書もないのに2日も不登校な説明もないから、ずる休みにしか見えない。


・ぎゃく待? 5票

ネコは親のうそで、実際はちがう理由で学校に来れなくなっている可能性もある。

ぎゃく待とか、家の中で問題が発生していないのか、一度先生の方から家庭訪問で確認してもらいたい。


・事件 2票

林君はよく家のネコが出かけると何日も帰ってこないことをぼやいていた。

通学路にネコのたまり場となっている空地があり、そこで林君のネコを見たという人もいる。

空地は車道に面していて、林君は自転車通学。

これらの情報から推理すると、林君は自分でペットをひき殺してしまったため、2日も休むほど落ち込んでおり、はっきりと理由も言えなかったのではないか。


・シュレーディンガー 3票

そもそも本当に林家のネコが死んでいるのか自体、この教室にいる限り誰もわからない。

因果関係を推測する前に、お見まいついでに確かめに行った方がいいのではないか。


・内部部品トラブル 1票

林君のネコはハーフアニマロイド。

修理にかなりの時間がかかっているところを見ると、電池切れや肉の問題ではなく部品自体の不具合/消耗の可能性が高い。

※ちなみに僕の父の会社の部品はそこそこ手ごろで、メディカル・メカニカル両方永久保証、しかも国内で治療/交換すべて完結できるからおすすめだよ。


・銀河条約を順守しているだけ 5票

林君のネコは宙産。

「第3宙域における動物取引等規制条約」によれば、産地の動物保護法が優先されるとあり、遺体埋そうを必ず自星で行う法律がある場合、その星に行く必要がある。

特急シャトルで行くと考えても何日か休むことになるのはおかしくない。


・違法改造? 1票

林君のペットの「ネコーロビア」は外宇宙せきさく動物門両生類であり、古くなったり異常を起こした細胞を切除⇒排出⇒再生する機能が備わっているため長命で基本不死身。

ハーフアニマロイド改造原則にのっとれば、心臓とその周辺60%以上と素体種の有用性の高い性質は残さなければならないので、日常生活で死亡したということに大いに疑問がある。

林君は販売企業に対し訴訟手続き中の可能性がある。


・太白相詞教団信徒の言葉 1票

祈りなさい、一昨日も昨日も今日も明日も。

耐えがたい悲しみも虚空の海が洗い流し、明けの明星があなたをそそぎ、真実を語ってくれるでしょう。

―太白相詞教教典から引用。


・塩基的再分配推しょう派の意見 2票

林君がネコと合体して、ネコの質量分で割る手術を行っているのではないか。


―――


もうよくわからん。

だし、こんな意見が割れる?


いつもこうだ。

このクラスはトラブルがあった時、脱線もお構いなしに自分の主義主張を面白半分で強引にねじ込んでくるヤツばっかりだ。



僕は楽しみにしていた動画のリアルタイム視聴をあきらめて、大小無数の銀の円盤が飛び交う、日が傾きかけた空を仰いだ。

好き放題言われていますが、結局林君が休んだ理由は何なのでしょうか…?

私もわかりません。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ