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婚約破棄とブチ切れ令嬢(6)

「ミューラ・デリストは塔の適正検査から逃げてるんだ」


 私は開いた口が塞がらず、淑女にあるまじき顔をお二人の前に晒してしまいました。


「ずっとですか? ただの一度も受けていないのですか?」


 二人は呆れている様子。


「では、誰が彼女の力の証明を? 光魔法の有無は本人と周囲の証言だけとか言いませんよね?」


 二人は完全に黙ってしまった。それが答えだと言わんばかりに。


 塔の適正検査は魔力量の測定や属性などを調べるための物。これは国が定めた物であり、一般階級の方達も定期的に行わなければならない物です。まれに強い魔力量や珍しい属性を持つ方がいます。そういった方を保護したり、魔力制御を教えたりと国や教会で共同に行っているもの。

 自分の能力を知り、制御して生活に活かす。その目的の元、行われている適正検査。それを無視して都合のいいことなんてありません。下手をすれば反逆行為として裁かれる。それをわかっていて拒否するだなんて。


「いったい何を考えていますの? デリスト男爵は。養女として迎えたなら当然の義務を果たすべき。それを放棄して、反逆罪にかけられたいのですか?」


「ああ。その通りだ。このまま行けば強制的に調べることになる。それができなければ反逆罪にも問える」


 団長の眉間のシワが深くなります。適正検査を受けさせるのは魔塔の役目。団長の責任ですからね。でも、大きく問題視されないのは何故でしょう?


「学園に入って日が浅いけど、このまま通い続ければ定期的に行われる適正検査に加えて、学園のテストもある。どうやって乗り切るつもりでいるんだろうね」


 本当に。頭がお花畑ではなくて、腐りかけているのでしょうか? それとも、他に理由が?


「後はデリストの地が特殊だというのも関係しているな」


「と、言いますと?」


「あの土地が滅んだ小国の跡地だというのはアリスも知っているよね?」


「ええ、もちろん」


 現デリスト領は五十年ほど前アステルという小国が治めていました。

 アステルは独自の魔法技術を有し、小国でありながら大国に匹敵すると言われていました。そのせいなのか、その力を使って自国の周りにある三カ国に戦争を仕掛けた。

 魔法大国イングラド。軍事大国バルバラ。神聖国ラインハート。この三カ国は同盟を組み、アステルを出迎えた。

 結果は惨敗。アステルは力はあった。けれど、相手にしたのが数で勝る大国。あっさりと数で押され、三カ国の同盟には勝てなかった。小国が大国、それも三カ国の同盟に敵うはずもありません。

 この戦争に当時のカルマ家当主を始めとした歴代の中でも最高の魔法士が揃っていたと聞きます。負けるはずありませんわ。

 というわけでアステルはあっさり滅びました。

 王族も国民も皆死に絶えたそうですし、残された国は綺麗に三分割され、イングラドはデリスト家に領地を任せ今に至るのです。


「生き残りだったりします?」


「ゼロではないね」


「それはほぼ肯定しいるのと同じでは?」


 二人は同時にため息を付きました。この様子から見ても確定事項なのでしょう。

 悩む二人と一緒に悩んでみます。

 何かいい案はないでしょうか? こう一石二鳥のようなものがいいですわね。


「あ……」


「どうしたんだい?」


「また珍妙なことでも思いついたんだろう」


「珍妙とは失礼な。妙案と言ってくださいな」


 私は思いついたことを二人に話す。


「今度の魔物討伐にミューラ様も参加してもらうのです。ライウス様とご一緒ならいいでしょう。治癒班だと誤魔化されそうですし。そこで目一杯活躍してもらいましょう!」


 私はその日を思い、ワクワクと胸の高鳴りが抑えられません。そんな私の姿を見た二人は諦め半分下さい呆れ半分といった形でそれぞれお言葉を下さいます。


「ほどほどにな」


「あまり心を折り過ぎちゃだめだよ」


「はい、心得ておりますわ」


 きちんと淑女の礼をして思いついたことをお兄様に連絡します。


「お兄様に知らせなくては」


 師匠の持つ通信の魔道具でお兄様に急いで連絡をする。


「どうした? 何を企んでる?」


 第一声がこれです。私は魔王ですかと言いたくなりましたが、こらえて思いついたことをありのままに話す。

 お兄様は大きなため息の後に、


「折りすぎなるよ」


「物理的に? 精神的に?」


「両方だ!」


 とのことでした。これは許可が下りたということ。存分に力を発揮しなければ! お兄様の期待を裏切らないためにも!


「アリスはますますマリアに似てきたな」


「……そうだね」


 お二人の会話も耳に入ることなく、私はストレス発散に向けて準備を進めるのでした。

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