ブチ切れ令嬢無双する(2)
いっせいに何でと言われましても、勝負を盛り上げるためとしか言いようがありませんわ。
「私がここに集まるように誘導しているからに決まっているでしょう。私はここに来る間も今も闇魔法を放って魔物を呼び寄せていますの。これからもっと集まってきますわ」
「何でそこまでするの?」
コリンさんが聞いてきます。今日は随分と饒舌ですわね。
「勝負を盛り上げるためですわ。そのほうが楽しいでしょう?」
「命がかかってるのに?」
「勝つとわかっているのに何故命の心配をするのです? 私にはそれだけの力があります。仮に己を過信して万が一死亡したらそれは自己責任ですわ。違います。あなた達だって冒険者をやっているのなら当然の考え方だと思いますが、あなた達は違うのですか?」
そう言うと何も言い返してこない。
「ライウス様のこと、そこまで憎いの?」
今度はミューラ様ですか。これは随分的はずれな質問ですわ。
「憎いとか嫌いと言う前に何とも思っていないと言ったほうがいいでしょすわね。だからあなたと浮気しようが、これからも愛人を作り続けようが、どうでもいいんです。カルマ家を没落させなければ。だから、ライウス様。私はあなたの言うことを何でも聞いてきたんですよ。どうでも良かったから。あなたの傲慢な振る舞いも、叔父様と共謀してカルマ家を乗っ取ろう画策していたことも。自分の立場さえ弁えていて下されば」
「立場って?」
「カルマ家についてです。婿に入ったからと言って、好き勝手できるわけではないんです。それに何より私達は魔法に取り憑かれた一族。優先すべきは魔法であり、魔法を極めること。それが最重要であり、他のことなど二の次。国を守ったのだって魔法を使いたい放題使えるからだという理由があると私は思っていますわ」
これは間違いありません。国が傾いてもカルマ家は沈まない。魔法を武器に生き残り、大成をなしたことでしょう。それをわからないものはカルマと言えません。つまり、叔父はカルマと名乗っていてもカルマではありませんわ。
「それに、婚約者だからといって相手の尊厳を踏みにじっていいわけありませんわ。私だって、理不尽なことを言われれば腹が立ちます。あなたの傲慢やわがままに付き合っているもの正直面倒でした。おまけにすぐ癇癪を起こす。婚約者の顔を立てろというから立ててきた。黄金の鐘の設立だって面倒な手続きは全て渡しがやりました。それはギルド職員が証言してくれますわ。それなのに、ライウス様は私の顔とカルマの名に泥を塗り、踏みにじり続けた。それらに対して私が腹を立てないと思いましたか? ライウス様は私を婚約者という道具としか見ていなかった。一度でも人間扱いしたことなんてないでしょ? 自分を飾る、見栄のための道具。それなのに、自分は大切に扱われるなんてどうした思えるんでしょうか? 別に婚約者なんて誰でもいいのに。叔父様に乗せられて随分大きなことを言っていましたね。魔法もまともに扱えないオーヘル家のポンコツなのに、ね?」
ここまで一気に言い終えると少しだけ胸がすっとしました。ですが、これだけでは終わりません。だって、私はあの日宣言しました。
「ねえ、ライウス様。私はあの日言いましたわ。私、ブチ切れましたわ!」
高らかに宣言して、魔力につられてやってきた魔物を一掃します。
地上から来る狼、熊、猪、大蜥蜴などなど。空からは鳥系魔物がいっせいに向かってきます。
「ぎゃあああっ!!」
「きゃああああっ!!」
それぞれ悲鳴を上げます。わたしは気にせず魔物を狩るため魔法を放ちます。
「風の刃」
攻撃を仕掛けられ前に先制攻撃。かわした魔物も多く結構な数を取りこぼしてしまいした。
「大地の槍」
地面から無数の刃を伸ばして串刺しにする。これで進路も塞いだのでしばしの時間稼ぎができます。次は空の魔物です。
「氷の檻」
氷魔法で氷漬けにしていく。これには欠点と利点がある。うまく落下位置を調整すると地上にいる魔物を攻撃する氷の塊となるのです。これで無駄に魔力を消費せずに済みます。欠点は魔物を潰してしまうことですね。採取が難しくなりますの。
「さて、そろそろ仕上げといきますか」
私はまた新たに魔力を込めます。
「大嵐!」
周囲を巻き込み巻き上がる風。それはどんどん大きくなり大きな竜巻へと変わる。風魔法の中でも最上級の魔法ですが、場所が場所なので威力は抑えます。下手をしたら森自体破壊しかねませんからね。それはいけませんもの。
竜巻は空も大地も巻きこんで魔物を一層していく。少々人間を巻きこんでいるかもしれませんが、魔塔の皆さまが何とかしてくださるでしょう。
竜巻を収めて魔物の気配を確認。周囲からは気配を感じません。今ので姿を隠してしまったようですわ。ま、ここまでやれば私の優勝は間違いないでしょう。
「それにしても、スッキリしましたわ!」
ストレス発散ができて私は満足です!
それはそうとあの方達はどうしたのでしょうか? 途中からすっかり忘れて楽しんでしまいましたが……。辺りを見渡すと気絶した皆様を守っている監視役の魔法士の方と目が合いました。
「ありがとうございます。お陰で皆様を傷つけずに済みました」
「……いえ、もうこの者達に用はありませんか?」
「ええ、引き取って下さると助かりますわ」
「では失礼いたします」
名乗らずに転移してしまいました。
「そんなに慌てて戻らなくてもいいと思うのですが?」
少々気になります。
「どう見てもやりすぎだ」
私の監視役のセス様がため息を付きながら魔物の死体に憐れみの目を向けます。私も同じように目を向けます。
数は百を超えているでしょうか? 綺麗に首と胴体が離れていたり、致命傷となる傷から綺麗に血抜きされいたり、串刺しにされたり、氷漬けにされたり、潰れてたりと倒された魔物達となぎ倒れた木々に抉れた大地。
「焼け野原にならないだけマシでは?」
セス様はそれ以上何も言わず早々に転移してしまわれました。
私とライウス様の勝負はライウス様達の戦闘不能によりここで終了。意識があって戦闘可能でもこれ以上の数を狩ることはまずないでしょう。というわけで私の完全勝利! 後は普通に魔物を狩るだけですわ!




