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魔物討伐会(2)

 受付を終え、後ろには誰もいないので雑談をします。


「それにしても今年の参加者は豪華ですわね。名だたる冒険者がこんなに集うとは」


 今年の冒険者の参加人数は多い。今までは多くても五十組程度でしたが、ざっと見渡しても七十組はいますわ。


「そうですね。今年は魔物の数が多く、強力だと調査結果が上がっていたので国から要請したんですよ」


「なるほど、それならこの人数も納得です」


 錚々たるメンバーに感心する。


「まあ、今となっては必要なかったかもしれませんが」


「何故ですの?」


「……ご武運をお祈りします」


 何を言いたかったのかよくわかりませんわ。誰かお強い方が参加されているのでしょうか? などと疑問を浮かべていると「わあっ!」と、歓声が上がる。何事かと思って視線の先を追うと金髪頭が目に入ってきました。

 手を振って声援に答える姿を見てあの頭は飾りなのかと本気で思ってしまいました。

 あの中に去年までいたことはただの恥でしかありません。それがただの脇役だとしても。


 歓声を浴びながら黄金の鐘のリーダーとして先陣を歩くライウス様。その後ろにキリム様と他三名にミューラ様も参加されています。


「ごきげんよう、ライウス様」


 こちらに気づいて顔を引きつらせているのであえてこちらから声をかけてみました。私の優しさが伝わるでしょうか?


「あ、ああ。アリスも参加するんだったな」


 白々しいですわ。


「ええ、もちろん。賭けを忘れたわけではないでしょう? 私は一度だって忘れておりませんもの。昨夜はよく眠れましたか?」


「もちろんだとも。今回が初めてではないからな」


「そうでしたわね。何と言っても黄金の鐘のリーダーの黄金の魔法士ですものね」


 皮肉を言っているように聞こえてしまったでしょうか? そんなつもりはないのですけれど。ライウス様の反応を見るにそう捉えられてしまったようですね


「ライウス様に無礼だぞ」


 そう言ってライウス様の前に立つキリム様。ライウス様を庇っているのでしょうか? 少しはまともになったと思っていましたがそんなことはないようですわ。むしろ、更に拗らせているような気さえします。


「そうだそ。婚約破棄されたんだから大人しくしてろ」


 黄金の鐘のメンバーの一人レックさんが声を大にして言うものですから周囲にも聞かれてしまっています。そのおかげで私達を見てざわつき出しました。


「勘違いされては困りますわ。婚約破棄を申し入れたのは私です。つまり、婚約破棄されたのはライウス様のほうですわ。婚約破棄されたのはライウス様のほうなのですよ。そこのところ勘違いされては困ります」


 重要なことなので二回言いました。

 普段あまり会話をしてこなかった私がこうしてはっきり言うのが意外だったのでしょう。驚いた顔をしています。


「私は受付を済ませましたので、これで失礼しますわ」


「あ、あのアリス様っ」


 ライウス様の後ろに隠れていたミューラ様が声をかけてきました。

 本来なら家格が下の者が上の者に許可なく話しかけてはならないというのがマナーですが、この場においては不問にしましょう。ですがそれとは別に一つだけ言いたいことがあります。


「デリスト令嬢。貴族の作法についてはこの場では問いません。ですが、一つだけ。私を呼ぶ時はカルマ令嬢と呼んで下さい。もしくはローズアリスと呼ぶべきですわ。そもそもあなたに愛称で呼ぶことを許した覚えはありません。名前で呼ぶことすら許可してません。私達、そこまで親しい間柄ではありませんわ」


 私はミューラ様を睨みつける。とても不愉快ですから。

 そう思いながら改めてみるとミューラ様は背が低い。今はヒールの低いブーツを着用しているようですから、ヒールを履いていなくてもそこそこ背のある私より小さい。守ってあげたくなると思わせるのには丁度いいでしょう。で、彼女より背の高い私が睨みつけるとどうしても上から見下す感じの悪い体制になります。案の定、ミューラ様は瞳を潤ませ、ブルブル震えみせた。それを周りの男性達が庇うという図が完全に出来上がるわけです。


「全く、泣けばいいと思っている方は楽でいいですわね」


 あら、いけませんわ。思っていることが声に出てしまいました。

 ライウス様達が物凄く怒った顔をしていますが、全然怖くありません。あちらからしたら、私が怯えているように見えるのでしょうか? それにしても、身のほどを理解していないとは早死するだけですのに。

 それならここで一戦を交えるのもありてしょうか?


「なしに決まっているだろうが!」


 ハクマン団長が魔物も逃げ出す眼光を放ちながら近づいてきます。


「まだ何も言ってませんが?」


「言わなくてもわかる。始まるまで大人しくしていろ」


 怒らせては怖い大人の一人に注意されては仕方ないですわ。本番まで我慢しましょう。


「叔父上」


「お前達も受付を済ませろ。さもないと参加資格を失うことになるぞ」


 ライウス様は悔しそうにしながらも急いで受付に向かいました。

 ミューラ様は何か言いたいのか私の方をチラチラと見ています。


「旦那! ここにいたのか!」


「ゾルア・ギミテック……」


 苦苦しい顔をしたハクマン団長が呼ぶ名は有名な冒険者です。

 冒険者パーティー「紅蓮の矢」 

 冒険者ギルド内において数少ない白銀プラチナランクのパーティーです。

 冒険者ギルドのランクは上から白銀プラチナゴールドシルバーブロンドになります。

 ちなみに黄金の鐘は銀ランクになります。

 そんな有名人が目の前にいます。特徴的な赤い髪。人の良さそうな表情は想像していた方とは違いました。


「旦那も参加するのか?」


「するわけないだろう。現場責任者だ」


「役職持つと大変だな」


 豪快に笑うその姿や態度はとても気さくで陽気な方のようです。


「で、そっちの嬢ちゃんは旦那の子供? 若い奥さん捕まえたってことはないよな?」


 急に私に目が向けられました。


「はぁー。わかってて言うな」


 団長は呆れています。それを見てゾルア様はまた笑う。


「嬢ちゃんはマリアの娘か?」


「母をご存知なのですね?」


 私は見た目が母と瓜二つらしいので母を知る人からはすぐに分かるらしいです。


「ああ、何回も助けられて命を奪われそうになったな」


 どんな状況なのか目に浮かぶ。

 お母様も苛烈な性格でしたから。


「ローズアリス・カルマと申します。アリスとお呼び下さい。今回の討伐にはソロで参加します。鉢合わせた時はよろしくお願い致します」


 コートの裾を持ち上げで軽く礼をする。


「そんな堅苦しいのは必要ねぇって。俺は紅蓮の矢のリーダーをやってるゾルア・ギミテックだ。気楽によろしくな!」


 そう言われて手を出されたので、私達は握手を交わす。

 ライウス様達から視線を感じますが無視ですわ。ここでは貴族の礼儀ではなく、冒険者の流儀を優先です。


「母や団長とはお知り合いなのですよね?」


「ああ、そうだ。何回も魔物討伐に参戦してな、マリアにはふっ飛ばされたもんだ。あの頃は無謀な戦いばかりして、命を助けられて、説教くらって、殺されかけたもんだ」


 殺されかけたと言いましたが、ここは聞き流したほうがいいのでしょうか? それとも掘り下げるべきなのでしょうか? 団長に視線を送ると首を横に振られました。これは深くは聞くなということですね。

 ゾルア様の顔色がどんどん悪くなっていかれます。相当大変な目に合わされたようですわ。


「旦那ならまだしも魔王様に睨まれた日には……」


 魔王様? いったい誰のことでしょうか? この世界に魔物は存在しても魔王様存在しておりませんし。


「アルバのことだ」


 団長は間を置くことなく補足してくれました。

 師匠のことを言われれば納得です。魔王様と呼ばれるのもその通りだと思います。師匠は怒らせると怖いのです。


「まあその話は置いといてだな、マリアの娘ならこっちが助けられるだろうな!」


 豪快に笑う姿にゾルア様の実力を知らないライウス様達は呆れたような馬鹿にしたような顔をしている。

 ですが、これが強者の強みであり覚悟もなさっているのでしょう。死と隣り合わせの仕事では、どれだけ平常心を保てるかどうかにかかってきます。一度死を意識した瞬間足がすくむもの。


 私も初めて大型魔獣を前にした時は足がすくみ、魔法の発動が遅れました。その隙を突かれて酷い目にあいました。その日のためにと師匠があつらえて下さった戦闘服が泥まみれになりました。あれにはさすがの私も怒りを通り越して殺意にかられ、きっちり制裁してやりましたわ!

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