表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

出会い(白)


見えないものが見える

それは…幻想か現実か


僕の名前は信条翔。家から近いところにある青ヶ崎高校の一年生。

普通に友達がいて、小さい頃から一緒に遊んでいる幼馴染もいる。

良くも悪くもない成績で、将来の夢は今のところ無い。

両親は他界してしまって、おばあちゃんと2人暮らし

平凡だけど平和な日常、それで満足している男子高校生だ。

そんなどこにでもいそうな高校生の僕は今、授業を終え、帰宅している最中だった。

時間さえ合えば幼馴染と一緒に帰る時もあるけど、今日は僕一人。

幼馴染と話しながら歩く帰り道も楽しくて好きだけど、一人で景色を見ながらゆっくり歩くのも好きだから、少し遠回りして帰ることにした。

橋の上で景色を見ながらのんびり帰ろうと思い、そちらに目を向けた。

「ん?」

橋の下を流れる川に人影が見えた気がした。底が見えるほどの綺麗な川があるこの場所は、夏になると水浴びなどをする人たちで賑わうため、人影が見えても気にしないのだけれど、あくまで“夏”の話。

今は5月に入ったばかり、川に入って遊ぶにはまだ少し寒い時期だ。

そんな時期に人が川に入る理由なんて…

「…」

一瞬だったから見間違いの可能性も十分ある。

でも、そうじゃなかった時のことを考えたとき、体が勝手に動き出していた。

最悪な状況じゃない事だけを祈って、人影が見えた場所まで急いで向かった。

走って乱れた呼吸を整えながら、周辺を見渡す。

「たしかここらへんだった気がするんだけど…」

何度見渡してもそこには誰一人いなかった。

見間違いだったんだと、ホッとしながら帰ろうと踵を返したその瞬間、背後で水しぶきの音がした。

「え…」

慌てて振り返ると、見渡した時にはなにもなかった場所に人の姿があった。

それを見て水中に潜っていたんだと察した。

僕は一瞬戸惑ったが、気を取り直して水中から出た人影に声をかけた

「あのー!なにしてるんですかー?」

「…」

思いっきり叫んで声をかけてみたけど、聞こえていないのか返事はない。

もう一度、さっきより大きな声で叫んだ。

「あのー!大丈夫ですかー?」

「…」

少し時間が経っても返事はおろか、動く気配すらない。

顔はよく見えないけれど、長い髪からしておそらく女性だ。

そんな人が1人、夏でもないこんな時期に川に潜っている。

そして、遊ぶでもなく、ただ黙って水面を見つめている。

まさか…と思った時には走って川に入っていた。

彼女のところまで必死に水をかき分け近づく

声が届かないなら、直接止めるしかない。

「死んじゃダメです!!」

そう叫んだと同時に、僕は彼女の手を握った。

すると、目を閉じていた彼女がゆっくりと目を開け、僕の方を向く。

彼女と目が合った瞬間、僕は不思議とその瞳に心を鷲掴みにされた感覚になった。

閉ざされた瞳に光が入ったそのとき、ビー玉のように輝く黒い瞳に僕の姿が薄らと映り、その透き通った瞳に囚われた僕の全てを、見透かされているように感じたから

「…ーー」

彼女の口が小さく動き、何かを呟いた。

その後、彼女の目線は僕の目から下の方に向いていた。

止めることに必死になっていた僕には彼女の声は届かなかったし

そのとき彼女がなぜ、僕の胸のあたりを見つめていたのかも気にしなかった。

「いきなりすみません!さっきの…言葉は…僕の勘違いかも。と、とりあえずまだ川の水は冷たい時期ですし、風邪ひきますよ?だからえっと…何か理由があるならあっちで話聞きますし…その…」

何かを呟いた後の彼女は見つめてくるだけだった

その気まずさからか、思いつく限りの言葉を並べた

焦りと緊張で自分でも何を喋っているのかわからない。

それでも、なんでも良い、そうやって話しかけても無言のまま、表情も無い彼女を、少しでも変えられるなら…

「と、友達になりましょう!」

僕のその言葉を聞いたとき、無表情だった彼女が、わずかに目を見開いて驚いた様子を見せた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ