夏休み
夏休みになった。
といってもなにも変わる訳ではなく、朝起きて宿題をするの繰り返しだ。
どうも皆暑さに参っているみたいで、友達とはメールや電話で話して終わりな日々が続いた。
近くのコンビニに冷たいアイスを買いに行こうと外に出た。
すると向かいの電信柱にとても見慣れた頭が。
「…何やってんの、柚」
「うおっ!?びびった…環じゃん」
後藤 柚月。
名前が女同盟というのを組んでいる、俺の友達だった。
「なんでびびる必要があんの…うわっ!?」
「しー!静かにしろって」
柚が指差す先に、少し茶色い髪が女の子の横を歩いている。
「和?」
「そそ、和が幼なじみの女の子に告るらしいであろうところに出くわしたんだよ。せっかくだから友達としてそれを見送ってやろうと思ってな」
「嘘だろ、絶対後からニヤニヤしてからかいに行くだろお前」
「大丈夫、和なら許してくれるさ…」
「バカな事してないで声かけたら?」
佐藤 和康。
自称勉強が人並みに出来る不良だ。
俺の友達第二号。
その後ろ姿が曲がり角で消えると、柚はため息をついた。
「あー…俺も恋してぇなぁ…そういやお前んとこの姉ちゃんめっちゃ可愛いよな!紹介してくんね?」
「俺はやめといた方が身の為だと思うぞ。あれは多分特殊な方に入るからな」
「えー…ああ、この世のリア充共が憎い…」
ため息をついて肩を落とす柚に、哀れみの視線を向けて肩を軽く叩く。
「元気だしなよ、ほら、アイスやるから」
「おおぅ…慰めてくれるのはお前だけだよ環…」
「はいはい」
なんやかんや友達にも甘い俺だった。
ちなみにその後、大量のアイスを奢らされそうになって、とりあえずアッパーをかまして帰った。