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入学式


今日は姉ちゃんの入学式だ。

まぁ、姉ちゃんの入学式ということは俺の入学式でもあるんだけど。

案の定というかなんというか姉ちゃんは良い意味で目立っていた。


はっきり言って、姉ちゃんは可愛い。


さらさらの黒髪にすらっとした身体。

明るいムードメーカー的存在であの笑顔で笑いかけられたら俺でも幸せになる。

だからモテる。

モテまくるのだ。

それはもう弟の俺が嫉妬してしまうくらいに。

「ねぇ姉ちゃん」

「んー?なあにー?」

「…彼氏と同じクラスだった?」

姉ちゃんの彼氏は同い年だ。

クラスが一緒ならきっと幸せ満面だろう。

いつものようにデレデレと惚気話を聞く準備をした。


ごとん。


姉ちゃんがコップを倒した。

「姉ちゃん!?大丈夫!?」

慌ててコップを救い上げる。

中身がまだ入る前だったので無事だ。

それよりも姉ちゃんの様子がおかしい。

「ね、姉ちゃん…?」

恐る恐る声をかけるとばっと振り返った。

うるうるの涙目で俺に叫ぶ。


「なんで!?なんで私とまーくんは一緒じゃないの!?しかもまーくん、隣のクラスの美人に声かけてた!浮気だ浮気だ!絶対浮気だ!殺してやるぅ!!」


あ、やばいわこれ。

台所に走る姉を止める。

「ね、姉ちゃん、お、落ち着いて…!」

「いやだぁあぁあ!!離してたまくぅうん!!あいつを殺して私も死ぬのぉおおお!!」

なんて面倒なこと聞いたんだ数分前の自分…!

今すぐ時空操って殴りにいきたい…!

「ま、まってまって!とにかく包丁おいて!?」

「やだぁ!どうせ私なんか誰も愛してくれないんだぁ!たまくんだって面倒だと思ってるんでしょ!?」

「…え、っと…」

「ほらぁあぁあぁあ!!やっぱり私なんていらない子なんだぁ!!」

「いや思ってない思ってない!全然これっぽっちも思ってない!」

姉ちゃんの手が包丁を掴んだその時。


ぴろん。


姉ちゃんのスマホが鳴った。

えぐえぐと泣きながらスマホを確認する姉。

…包丁は離さないんだね、姉ちゃん…。

すると、姉ちゃんの動作がぴたりと止まった。

目がすごい速さで画面を滑る。

次の瞬間。


ぱああ、と姉ちゃんの顔が晴れ渡った。


そのまま上機嫌でスマホを操作する。

「(あ、これ、彼氏からだな絶対。ナイス彼氏)」

姉ちゃんの彼氏に心の中で史上最高のグッドを送った。

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