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十三話 竹箒との絆

 深呼吸をして霊気を集中させた夜光は刀を振るって、自分の意識を集中させた。


「仕切り直しだな。そして、俺達の最終幕だ。ホーキの身体を離してもらおうか?」


「娘よ。行くがいい」


 意識を取り戻したホーキは、夜光の隣に立つ。ある程度の状況は精神世界で理解していたホーキは竹箒を構えて家康の前に立つ。


「いいのかホーキ。家康を敵にして」


「私は石川数正の子孫でも、私は私よ。イエヤスアークを手にして、女の人権を解放させるの。それは譲れないわ。それに、私を欲したのは貴方でしょう?」


「フン、口の減らん奴だ」


 二人は真蜻蛉切を構える家康に特攻する。残る体力も霊気も多くは無い。一撃、一撃が全力で有り、どこかで必ず家康への直撃を浴びせられるという強い意志で二人は仕掛け続ける。


『おおおおおーーーーっ!』


「つぇい! つぇい! つぇい!」


 三人の一撃が交差し、三方に吹っ飛んだ。

 まだまだと立ち上がる夜光は隣の竹箒の少女に聞かれた。


「ねぇ、前にわざわざ石川数正の話をしたのは私が石川数正の子孫だと気付いたから?」


「微かに石川家の霊気を感じたからな。まさか当たっているとは思わなかった。どういう理由で三河国にいたか知らんが、この戦いを邪魔するなら死んでもらうぞ」


「この状況でまだそれを言えるなら、この戦いに勝てるわね」


「そう、ワシは勝てる。ワシの家臣は優秀じゃからのぅ」


『……』


 老獪な男は立ち上がる。

 その嘘か真かわからない言葉に二人は嫌気がさす。ここで調子に乗ってしまえば、間違い無く家康の術中にはまる事は確実だが、攻めないわけにもいかない。


「その娘の目的はイエヤスアークにて自分と竹箒である武器を強くするため。アークの加護があれば普段より強い力を得られるから。そこから自分が最強となり、女の生き方の解放をしようという事じゃろう」


「……その通りよ。私は強くならなければならない。男よりも……誰よりも」


「自分に何故力が宿るのかは、よく考えた事はあるか?」


「当然よ。私は石川数正の子孫だからね」


「そうじゃ。単に他人のアークを自身に還元していたら、その者のアークに乗っ取られる可能性もあるという事じゃて。これは陰湿ではなくごく当たり前の事よ」


 何か家康は口でホーキを惑わせようとしてると察した夜光は言う。


「この三河国は陰湿であるのが普通の国。陰湿さはおかしい部分ではないのさ。他国を監視してるだけで、一切踏み入れないから自分達の陰湿さにも気付かない。霊力全開だ! 行くぞホーキ!」


「合点承知!」


 左右に分かれた二人に対して家康は何もしない。これは左右に分かれようとも、攻撃は一方向からしか来ない事をわかっているからである。むしろ、攻撃者の方が焦りを感じていた。


「つぇい! せいっ! はっ!」


「とー! とー! とーっ!」


 刀と竹箒の攻撃を難なく避け、足払いをくらわせた家康は上空に飛んだ。倒れそうになりながらも、武器を振るって来たからである。同時に、両手を下に向けて二人を狙い撃つ。


徳川神雨(とくがわしんう)


 無数の霊気の雨が降り注いだ。それを夜光は斬撃を展開して連続斬りから生まれる盾のような霊気を形成した。だが、そんな付け焼き刃の盾では家康の技は防げない。着地をする家康は敵の状況を確認する。


「村正の方は死なないにしても相当な痛手を受けたはず。その天化王村正も渡すがいい。イエヤスアークの対極にある存在としてアークの強化に利用させてもらおう」


「――ほざけ!」


 かなりの深傷を負っている夜光はまるで一人で全てを受けたかのような感じを受ける。違和感を感じた家康は言う。


「一人で全て受けたのか? それに娘はどうした……?」


 すると、いるはずのホーキは見当たらなかった。瞬時に家康はどこにいるか察した。


「まさか、今のは陽動?」


「ハッ、気付くの遅くて助かったわよ!」


 イエヤスアーク本体にホーキは攻撃を仕掛けた。

 本来なら到達するはずの無い攻撃が、イエヤスアークを纏うホーキには関係無かった。

 ホーキはかつての家康の家臣である石川伯耆数正の子孫が故に、イエヤスアークを纏う事が可能だったのである。


「太陽のような霊気玉である我がイエヤスアークに直接攻撃を加えられるとは流石は数正の子孫か。数正め、ここまで来て謀反を起こそうというのか……つれないのぅ」


 これにより、家康の動きは一瞬止まってしまいイエヤスアークの加護も失せた。


『チャンス――』


 二人は跳躍し、武器を振りかぶる。そのまま流星のように技を発動させた。


紫電雷鳴斬(しでんらいめいざん)


「オデカケデスカホホホのホー!」


 神罰のような雷と大型竹箒である夜光とホーキの連携技が決まる。


「見事なり……」


 霊体である徳川家康の身体は消滅し出していた。イエヤスアークも危険を察したのか異様な点滅をしている。このままとどめをと思った二人に消滅寸前の家康は言う。


「……数正はすでにワシと共に歩む存在。その娘のアークが一つ覚醒した程度では、この霊気が解放される聖櫃内では数正の意思には勝てないぞ」


「フン、このまま消える霊体が何を言う!」


「そうよ――きゃ!?」


「ホーキ!」


 ホーキの身体を背後から霊体の石川数正が押さえ込んだ。高笑いをする家康は自分の家臣に感謝する。


「石川数正にはイエヤスアークの加護をつけている。だから、その娘はイエヤスアークの力もあるという事。つまり、ワシの味方という事じゃて」


 消滅しつつある家康は動きの止まった夜光を見て嗤う。


「数正の末裔の身体を借りるとしよう」


 ホーキの唇を吸い、家康はホーキの身体に自身の全てを飲み込ませた。やがてホーキの身体は家康に乗っ取られ、その身体や顔つきは老獪なる狸親父そのものへと変貌した。


 徳川家康は現世の肉体を得て復活してしまった。これはつまり、背後の究極霊気玉であるイエヤスアークを自由自在に使えるという事である。


「……フン、三千世界を解放してやる」


 千子夜光に絶対的な戦国覇王が立ちはだかった。

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