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第9話

 1、2、3、5、7……。


 あ、1は素数じゃないね。2、3、5、7、11……いや、そろそろ現実逃避するのはやめようか……。

 でもね、現実を見たところで「どうしてこうなった……」としか言い様がないんだよね。


 ボクが今いるのはひとみさんの部屋。

 明かりはつけてなく、光源はカーテンの隙間から差し込む日光のみの薄暗い部屋。


 置いてあるインテリアはあまり多くないけど、敷いてあるカーペットやクッション、机に飾ってあるぬいぐるみとかから、ここは女の子の部屋なんだなぁ……、と実感する。

 今まで女の子の部屋に入ったことないから余計にそう思うよ。


 さて、こうして部屋をサッと見渡したけど1ヶ所だけ見てないところがある。そこがボクの今いる場所だね。まあ、もったいぶる必要はないんだけどさ。


 ベッドの上。


 ここに座っている。最初はカーペットの上に座ろうとしたんだけど、ダメって言われた。

 それでボクにベッドの上に座るよう言った、この部屋の主は隣に座っている。


 なんで女の子の部屋で、ベッドの上に隣り合わせで座っているのかな? 緊張しちゃうよね。


 チラッと目を向ければ、淡い水色の瞳と視線が交わった。


 ジーっとボクを見つめ続けている。

 心の奥底まで見透かそうとしているような、見えないものを見ようとしている眼差し。ボクを見ているのか、ボクを通してなにかを見ようとしているのかは全く分からない。


「……金色」


 ボソッと口から漏れでたような一言。

 声から感じたことだけど、ひとみさんはけっこう無口というか口数が少ないというか、そんな気がする。


 それはそうと、金色?


「…………ああ、ボクの目の色か。ボクはハーフだからね。髪は黒くても目は外国人の父譲りで金色なんだよ」


 母さんにはよく、月のような綺麗な目だって言われてたなー。


「……そうなんだ。ねぇ、お兄さんは私が怖くないの? こんな、水色の髪と目とかありえない」


 まあアニメとかマンガ以外に見たことないよね。


「でも、それを言ったらボクの目だって普通じゃないよ? だから怖くなんかないさ。キミはボクと同じ。さっきもお仲間だって言ったでしょ?」


「本心でそう思ってる……」


 ふーん、それがキミの能力なんだね。


「っ!?」


 ひとみさんは目を見開いている。


 いやいや、帰ろうとした時にボクを呼び止めた方法とかも考慮すれば大体分かるよ。


「……そう」


 で、キミはいきなり能力者になって力のコントロールができなくて困ってる。


「……うん」


 髪と目の変色は短時間で能力を使用しすぎた結果かな。多少は能力に慣れてきても周りの目が変わるのが怖いから部屋から出られない。


「……うん」


 今は、少しならコントロールできたりするのかな?


『……ほんの少し。でも、いい加減普通に喋って』


 ひとみさんの、少し不機嫌そうな声が頭に入ってきた。


「ごめんごめん。ちょっと確認も含めてさ」


 送信オンリーのテレパシーと心を読むのが能力の詳細かな? 他にもありそうだけど。


「まあ、おかげで能力はだいたい分かったけど、どれくらいコントロールできる?」


「……たまに、一瞬だけ発動を止めるくらいしかできない」


 最初は誰だってそんな感じだから気にしなくていいんだよ。

 ……一瞬か。それでもなんとかできそうで良かった。


「じゃあやってみてくれる?」


 なんでやる必要があるのか、全く分からずにひとみさんは首を傾げている。


「ふふっ、細かいことは気にしなくていいからやってみてよ」


 ボクが能力を発動させていれば、ボクとの物理的な距離が遠くなるまでの間だけだけど、キミを困らせているものを隠すことはできるからさ。


「……うん」


 彼女の肯定を受けて、ボクは能力を発動。


 これで一度能力の使用を止めれば、再発動はできなくなった。まだ自分の力を制御できていなかろうが例外じゃないよ。


「んっ……!」


 ひとみさんの口から力んだ声が発せられてた。

 でも、能力の発動は続いているみたいだね。何回も何回も繰り返してるし。

 そういえば彼女は誰にもなんにも教わってないんだったね。


「そんな力まなくて大丈夫。パチンてスイッチを切り替えるようにするだけでいけるはずだよ。案外簡単なやり方でしょ?」


「……やってみる」


 ひとみさんは水色の瞳を閉じ、数回の深呼吸の後にパッとまぶたをあげた。


 なんだか、もう大丈夫そうな気がするよ。


「――ふっ。……できた」


「お疲れ。どう? まだ声は聞こえるかな?」


 まだ慣れてないから発動を止めるのにワンテンポ必要みたいだけど、こんな早くにできるようになるとは思わなかった。本当にすごいよ。


「……聞こえない。なにも……聞こえない……! ありがとう、お兄さん!」


「うわっ!」


 ひとみさんが勢いよく飛びついてきた。

 すぐ隣に座っていたとはいえ、まさか反応できないとは思わなかったよ……。


「まったく、危ないよ?」


 優しく彼女を剥がす……のは止めておこうかな。ハンカチを持っていたか覚えてないし。

 何日も怖い思いをしていたし、しょうがないよね。


「よく頑張ったね」


 ボクは一時の安息しか与えられないから、ここから先はキミの努力次第だよ。


「すぅー……すぅー……」


 泣き疲れたのは分かるけどさ、寝るの早くないかな? 別にいいんだけど。


「もしキミが能力のコントロールを学んで、それでボクたちの力になってくれるなら嬉しいし、歓迎するよ」


 まだけっこう先の話になると思うけどね。

 でもしばらくはボクとナツキでめんどうを見るだろうからよろしくね、ヒトミ。

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