時計草
こんにちは、葵枝燕です。
新連載『もうひとつの花詩集』、始めていきたいと思います。
この作品は、現在連載中の『花詩集』の番外編——みたいなものです。
同じ花を題材に複数つくってしまったとき、それを棄てたり、別の花で代用したり——そういうことができたらよかったのですが、なかなかそうもいかないものです。
ここには、そんな事情で『花詩集』に載せるのを断念した詩達を、載せていきたいと思っています。
『花詩集』同様、こちらの後書きにも、毎回題材にした花の情報を書いていきます。
『花詩集』と少し違う(かもしれない)、『もうひとつの花詩集』の世界を覗いてみませんか?
私はあなたを待っている
この場所で
この時間が
永劫に続く気がしている
進んでいるはずなのに
止まっているような
途方もない時間の流れがある
あなたが ここから消えただけ
言ってみれば きっと
それだけのことで
そう それだけのことなのに
苦しくて 苦しくて 苦しくて
ただ息をすることさえも
苦痛になる
ああ 神様
私の願いが届くなら
どうか私を あの方の元へ
この苦しみを
永遠に持ち続けるくらいならば
私は
あなたに逢いたい
それだけで充分だ
トケイソウ(英名:passion flower)
トケイソウ科トケイソウ属の花。別名、パッションフラワー、パッシフローラ、ハナトケイソウ。七月から八月にかけて、白色や赤色や赤紫色などの花を咲かせる。原産地は、ブラジル、ペルー。花言葉は、信ずる心、信仰、聖なる愛、宗教、恋の激しい苦しみ。
以上、第一回「時計草」の解説でした! 今回は、『花詩集』第三十三回「時計草」としてつくった、もうひとつのトケイソウの詩です。こっちの方を先につくったのですが、後からつくったものの方がしっくりきたので、『花詩集』に掲載することを断念したものになっています。
この詩は、数あるトケイソウの花言葉の中でも「恋の激しい苦しみ」を重視したものです。あとは、トケイソウという名前から“時間”にも着目してみた部分もあります。でもやっぱり、宗教色が若干出てしまっている気がします。
さて。
『花詩集』共々、この『もうひとつの花詩集』もよろしくお願いします。
それでは、また次回お目にかかれますように。
葵枝燕でした。
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参考資料
・金田初代文、金田洋一郎写真『持ち歩き! 花の事典970種 知りたい花の名前がわかる』、西東社、[二〇一五年]
・浜田豊著『花の名前 —由来でわかる 花屋さんの花・身近な花522種—』、婦人生活社、[二〇〇〇年]
・二宮孝嗣著『美しい花言葉・花図鑑 彩りと物語を楽しむ』、ナツメ社、二〇一五年
・中山草司監修『花言葉物語 贈る花に想いをこめて』、永岡書店、[一九九〇年]