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嗤うがいい…だがコレがオレの旋律(仮)  作者: ken
第一章 現世から異世界へ(仮)
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EP039 背徳の山

考え事をしていたせいか、知らず知らずのうちに大分進んだようだ。

どうやら西日も沈み、辺りも完全に夜のようになってきた。


竹鶴は相変わらず両手に機器を持っているため、マリカが懐中電灯で前方を照らしている。

余市も響に懐中電灯を渡した。響は主に皆の足下を照らす感じだ。


正直言って不気味である。

ひと気のない立ち入り禁止の夜の山を、男女5人で黙々と山頂を目指しているのだから。

こんな状況で、バッタリと前方に誰かが突然現れでもしたら、長年歩き慣れた地元のキコリであっても叫んでしまうであろう。


そんなさなか、マリカがそわそわとしている。

やはり女の子、夜の山が怖いとみえる。


しかし、そのそわそわが次第にモジモジへと変化してる様子だ。

そして、前方を歩く竹鶴の上着を指2本で摘むと、小声で恥ずかしそうに…、


「ちょっと休憩…てか、トイレしたいんだけどぉ…」

「…なら一緒に」


マリカに続いて響である。

響も我慢していたのか、それとも同じ女性陣としてマリカに気遣ったのかは分からないが、こうなった以上、一旦、休憩を挟むしかないだろう。


ただ、ここは完全無欠の正真正銘、山の真っただ中である。

都合よく厠などあるハズもない…山の中では人間とて、一介の獣に過ぎないのである。


つまり…野ション…それが人里離れた山での常識かつスタンダードな唯一無二の選択なのだ!


そうは言っても、男ならいざ知らず、女性陣にとっては抵抗がありハードルも高い…。

角瓶が立ち小便をしながら、男の特権とか何とか言っていたが、それは真実である。


女性だけで登山しているワケでもないので尚更だ。

かといって、男性陣に先に行ってて、などというワケにもいかない。

懐中電灯もふたつしかない。こんな夜の山ではぐれでもしたら大事である。

ただ、幸か不幸か辺りは真っ暗なので、道から少し離れれば、男性陣に見られることもないであろう。


ただひとり!このオレを除いては!!!


マリカと響は懐中電灯で足下を照らしながら、道から外れて木々の中へと入って行った。

そして、


「絶対、こっちに来ないでよね!!!特に博士とかっ!博士とかっ!博士とかっ!!!」


少し奥からマリカが振り向いて叫んだ。

懐中電灯の明かりのせいで、居場所は丸分かりではある。

それにしてもマリカのやつ!名指ししやがって!!!

それにオレは3人もいないぞ!!!…それとも重要なコトだから3回も連呼したというのかい?ぬうぅぅ…。


「ああ!さっさとしろよな!」


角瓶が答えた。

少ししてふたりの懐中電灯の明かりが消された。その時がやってきたという証拠である!


余市には見えていた。

というか、ふたりがしっかりと視界に収まる位置に数センチ単位で移動し、ベストポジションにアジャストしていたのだ!

木々の多いこの状況下で、難易度は決して低くはなかった。


木陰で中腰になるふたり…その姿を鮮明に捕捉する…成功!!!

これより始まるであろうスプラッシュ展開に、既に鼓動はアレグロ調にバクバクと暴れ狂っている!

リアル童貞である余市には、あまりにも刺激が強過ぎる展開である!


紫のストライプの入った黒のショーツをくるくると膝近くまで下ろすマリカ…昼に見たあのプリケツを包んでいたパンティーである!

おや?…何か薄い紙のようなモノが…あ、あれはもしや!巷で噂のパンティーライナーとかいうブツか!?ぐはっ!!

指で思わず鼻の下あたりを触れてしまう…どうやら鼻血は出ていないようだ、さすが三次元!


そして視線を素早く横にシフト!

…アレは白か?ピンクか?マリカとは数メートル離れて響もショーツを下ろしたのだ!!!

微妙にクロッチ部分までは確認ができない…ぬぅ。


ふたりとも男性陣…否!余市を集中警戒して、こっちを向いている。


残念ながら中腰ということと、上着が邪魔をして、ヘアーまでは目視することは叶わないが、興奮度MAXである!!!

その黄金水とも謳われる魅惑の液体は(ほとばし)り、草が邪魔して見えないが、代わりにデビルイヤーのお陰で、せせらぎの音は臨場感バッチリに聴こえきたではないか!!!

更に!更に!!!デビルノーズ…ってそんなのないか!ともかく、その匂いまでもが恥ずかしいほどに鼻孔に流れ込んで来るのだから堪らない!!!あのふたりに由来する液体である!必然的に芳醇な高級エキスの香りへと脳内変換される!

言うまでもなく、余市の鼻翼は限界レベルにまで広がっていた!


相当、我慢していたのか、ふたりの放尿はなかなか終わらない!


ゲームはリアルのように、リアルはゲームのようにと境界が狭まりつつある昨今…。

二次元には二次元の良さ、三次元には三次元の良さがある。小説とリアルもまた然り。

二次元では味わえぬ三次元の良さには、触覚、味覚、嗅覚などが挙げられる。それに臨機応変なインタラクティブ性も…ただ、これについては、AI技術などで追々克服されていくであろう。

二次元を前面に出したライブチャットなどの文化も育つやもしれん…。


それらの二次元には不足している要素を、余市は無限の想像力でカヴァーし克服してきたという自負がある。

論理(ロジック)は、ひとをAという場所からBという場所に連れていくことができるが、イマジネーションはひとをどこにでも連れていくことができる』マスターベーションもまた然り!

イマジネーション至上主義の余市にとって、この言葉は大黒柱のように力強かった。


だが今!


目の前に展開されている光景を目の当たりにして、余市の二次元絶対主義の正義の牙城が揺らぎ始めていた!


リアルは…イマジネーションをも凌駕するというのか!?

イマジネーションの土台には、やはりリアル体験が必要不可欠(エッセンシャル)なのか?

オレは…オレは今まで、知らなかっただけなのか?

井の中の余市…だった、とでも言うの…か?


そんな、できれば死ぬまで気付きたくはなかった、ウィークポイントを深く抉る発想が、余市を苦しめかけていた…が!


しかし!しかーーーし!今は!今だけはっ!ただ目の前の光景に酔い痴れるのみぃ!ナハナハッ!!!



竹鶴や角瓶は端から諦めているのか、それとも興味がないのか、その方を全く見ようともしていないが、恐らくはそれが正常な紳士の姿勢なのであろう。だが、仮に目をどんなに凝らしてみたところで、貴様ら常人には決して到達できぬエクセレント領域なのだ!

神に選ばれし者のみが享受を許されしサンクチュアリなのだからっ!!!


そんな優越感とコーフンの極致で神経を研ぎ澄ませていた余市に、心臓が凍りつくような展開が待ち受けていた!!!

ふたりのうちのひとりが、Pee(小)を終えてPoo(大)をひり出し始めた!…とかそんなミラクル展開ではない!


響と…響と目が合ったのだ!


いつからなのか、余市は聴覚と嗅覚にばかり集中していたので気付くのが遅れたが、響の顔に視線を移した瞬間、既にその時、響の双眸は余市の顔を捕捉していたのだ!!!

とてつもない恐怖が、コーフン度MAXの余市を襲ったのは言うまでもない!

その後、用を足している間、響はずうっと余市と視線を合わせていた。余市も視線を逸らせずにいた。


かつてニーチェは言った。


『深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ』と。

ただその意味は、悪いモノを見る時、自分もその悪に染まらぬように注意しろ!的な訓示のような内容であった筈である。怪物と戦う者は、その過程で自分自身も怪物になることのないように気をつけろ!的な…。

だが、今起こっていることは、そんな高尚な意味などではなく、むしろニーチェの言葉そのままの意味!

暗闇を覗いていたつもりが、暗闇の方からも鋭い視線が余市を捕捉していた!そんな素直な解釈で充分!!!


響!響!響!!!嗚呼!なんて恐ろしい子!!!


嫌な汁がこめかみをつたう。

ぐ…偶然の可能性はある。たまたま響が余市の顔辺りを見ていた…という…そう信じたい。


否!信じるしかない!!!


ふたりはティッシュでカサコソとデリケートゾーンを拭いている。

響は結構丹念に拭いているようだが、マリカはパッパと拭いてすぐにショーツを上げてしまった。

響も拭き終わってショーツを引き上げた…が!一瞬…ほんの一瞬ではあったが、黒い翳りが確認できたのだ!!!


味付け海苔のようなキレイな長方形をしていた!!!


余市は身体を激しくビクつかせ、痙攣を繰り返しながらその場で後ろに倒れてしまいそうになったが、辛うじて踏みとどまった。

お…お相子さ!ピカソ仮面珍事件の時に、オレもアンタに見られちまってんだからな!

強烈に押し寄せてくる背徳感を鎮めるために、必死になって正当性を紡ぎ出そうともがく!



それにしても何という能力(アビリティ)!!!

オレのような悪魔超人が、果たしてこの世に生存を許されて良いのだろうか!?

そんな圧倒的な感覚、圧倒的な至福の悦楽に浸る余市だった!


ふたりは懐中電灯を点けると、足下を照らしながらゆっくりと戻って来た。


「お待たせー!超スッキリしたぁーーー!!てか博士!大人しくしてたっ!?」


ギクッ!!!


「お…大人しくしてた…さ」


声が震えてしまう余市。嘘は言っていない…大人しくはしていた。

響は何も言わない。気付かれていなかったようだ。身体中の神経が一気に緩むような、その場にへたり込んでしまいそうな感覚が押し寄せる。


とにもかくにも、こうして余市の、超刺激的な三次元イベントは幕を閉じたのだった。

二次元とは比較にならぬ緊張感&臨場感!一時停止や再読み込みなどの邪道は決して叶わぬ、脳内一発録画必須の真剣勝負のリアル体験なのであった!


めでたしめでたし!



…というワケにはいかなかったようだ。嫌な予感は最近、よく当たるのである。


歩き始めた響の背中に漠然と目を泳がせながら、恐る恐る、股間に手を這わせていく。


嗚呼…やっぱり…。


ねっちょりとした温かい感覚…100パーセント間違いはないようだ。


今宵のオカズは、味付け海苔であったといワケか…。


確かにあの時、味付け海苔を目撃した直後、脈打つギョニソーに連動して生真面目に前後してしまった腰の感覚はあった…そう、カラクリ人形のようにシステマティックな完璧な連動運動であった。

…冷静に思い返してみると、首というか顎も前後に連動していたようにも思う。そう考えると、意匠の凝らされた匠の逸品であったのやもしれぬ…。

だがしかし、余市は人形ではない!


汁を放つヒトである!


凛の時と同様に、今回またしても余市は手ぶら状態で逝ってしまったのだ!

厳密に分析するならば、凛の時はギョニソー近辺を軽く撫でられはしたのだが…。



子供の頃、自転車のハンドルから両手を離して運転したりしたものだが、その当時の自分のあどけない笑顔が瞼の裏に浮かんでくる。


手ぶら運転…か。あの時代は良かったなぁ…。


あどけない笑顔を今の余市も作ろうとしたが、できなかった。

ただでさえ卑屈な表情は、卑屈さの限界に挑むかの如く、更に卑屈な領域へと達していた。



履き換えたばかりの最後のブリーフは、こうして誰に気付かれるでもなく、人知れずこっそりと汚れてしまったのだった。

しかし、泣いても笑っても最後のブリーフである!

事前に、未知なるパンティライナーとやらをマリカに分けて貰っておくべきだったのやも知れぬが、それは色々な理由で叶わぬ願いでもある…。

いずれにせよ、もはやこの汚パンツを履いたまま異世界へと旅立つほかないようだ。


雨降って地固まる…汁放って生地固まる?…くっ!つまらん何だそれ。


やるせない気持ちが余市を支配していく。

しかし一方では、この天罰のお陰で強烈な背徳感を相殺し、罪悪感を払拭できたかのようにも感じていたのだった。



女性陣の放尿が終わり、1分もしない内に余市は男性陣の放尿を提案していた。


素晴らしいリアル体験の後だが、とにかく真っ先に処理しなければならなかったのだ!

泣いても笑っても最後となってしまったブリーフの汚れ部分を、迅速に拭うのが急務だったのである。


つまり戦後処理である。


角瓶は既に羞恥の岩で済ませていたので、竹鶴と余市が連れ立って立ちションをする運びとなった。


余市は放尿するフリをして、こっそりギョニソーと共にブリーフの内側を拭う計画だ。


だが、ティッシュを切らしたままである。

脱いだばかりの濡れたブリーフで拭おうとも考えたが、リュックからわざわざ出さねばならず、時間もかかる。何よりもアクションがデカ過ぎる。直ぐ隣で放物線を描いている竹鶴に不審な行動として見つかったが最後、面白可笑しく話を紡がれて女性陣に触れ回られても面倒だ。


結果的にその精なる汚れは、竹鶴より託されし貴重な諭吉でもって物理的に処理するほかなかったのである!


ポケットの財布から諭吉を取り出す方が、目立つことなくスマートに目的を遂行できるという苦渋の結論に至ったのだ。

異世界に渡ってしまえば、おそらく諭吉とて役には立たない筈である。そういう意味では大胆だが有効な活用方法だと言えなくもない…。

それに乾けばカピカピとはいえ再び使用できるに違いない。犠牲となる店と店員にはあまりにも気の毒だが…異世界から戻ったら使用するつもりだ。


ヌルヌルになった諭吉を憐みの心と共に神妙に折り畳んで財布に戻す。


それにしても、人生とは面白い。


昨日、笹の葉で菊座を拭っていた男が、今日は諭吉でもってギョニソーを拭って見せたのである!

そして、山道でスペ丸を諭吉で拭うなどという奇矯を極めし行為を、果たしてオレ以外に誰が成し得たであろうか?


将来、オレは大物になるのかもな。フフ…。


だが、ここで痛恨のミスに気付く!

諭吉を財布から抜き取る際には気付かなかったが、明らかに諭吉よりも不要な1枚の紙を発見したのだ!


それはテレクラの宣伝広告だった…。


境内で菊座を拭った際にティッシュを使い切っていたのは事実だが、ポケットティッシュの裏面に挟まっていた、この西川口にあるという某テレクラ店の広告は捨てずに財布に仕舞っておいたのである!

未練があったのではない。ゴミを捨てるのは悪いことだし、少しだけ広告のお姉ちゃんが可愛かったので、オニギリやサンドウィッチのビニールとは別に、財布に挟んでおいたというだけである…。


金銭的な面を度外視しても、オッサンである諭吉を凌辱するくらいなら、この受話器を耳にあてたお姉ちゃんをグチョグチョにした方が、何倍も正常かつ理にかなったスペ丸の処理方法だった筈だが、もう遅い!トゥー・レイトである!


ぐぬうぅ…諭吉よ!スマン!


そんなクレイジーな懺悔と悔悟の念を抱きながら山道を進む。

幾分か乾いたとはいえ、まだ歩く度にペタッペタッというひんやりとした嫌な感触がブリーフには残っていた…。



「おお!!!やったゼ!」


竹鶴の声に、皆が前方を見た。


アスファルトである!


山道がアスファルト道にぶつかり、Tの字のようになって途切れていた。

右に進めば下りであり、左に進めば登りである。

勿論、左を選択して進んで行く。

竹鶴の言っていた採掘跡地の施設は、おそらくこの道に沿って進めば辿り着くことができるであろう。


流石に手入れはされていないとあって、所々に大きく裂けたヒビや段差がある。それらの裂け目からは、背丈のある草が沢山、飛び出して生えていた。

ただ、山道に比べて道幅が更に広くなったため格段に歩きやすい。山道では傾斜が道にも影響して、ほとんどトラバース状態で進まなければならない箇所もあったのだ。


アスファルト道となってからは進行のペースも自然と速くなっていった。



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