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嗤うがいい…だがコレがオレの旋律(仮)  作者: ken
第一章 現世から異世界へ(仮)
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EP012 踏み躙られたブリーフ

ギコギコ…ギコギコ…


凛と別れ土手の上を進んでいると、ほどなくして十字路に到着した。

真っ直ぐに進めばそのまま土手だが、左に折れれば荒川に架かる治水橋である。200メートルほどで荒川に差し掛かるだろう。


武者震いをした後、決意を固める。

大蛇のような新大宮バイパスを攻略した今、幾ら龍のような荒川とて恐るるに足らず!

太さこそ違えど、どちらも同じ細長いモノに変わりはない。うどんのように喰らうまでっ!



周囲は大分明るくなり、治水橋に通じるこの県道56号にもそこそこ車が通っている。

土手の下には自動車教習所と思しき道路の密集した小規模なコースが見えていた。

歩道の設置された道の反対側に渡ると、こちら側も教習所の敷地とみえて練習用のコースが広がっていた。

ラジコンを走らせたら面白そうである。


余市は卑屈とはいえ気付けば笑顔になっていた。


強敵である荒川を目前に控え、このゆとりはどこから生まれて来たのだろう?


それは山崎凛との出会いである。

先ほどの彼女との触れあいと会話が旅の門出を明るく照らし、この先の不安で一杯の道程を、一時的とはいえ覆い隠してくれていたのである。



だが、そんな晴れやかな気持ちを消し飛ばすに十分な事件が勃発してしまう!


治水橋を目指し数回ペダリングしたところで、どこからともなく異臭が漂ってきたのである。


ん?この負の匂いは…?


最初は周囲を疑ったが、どうやら匂いの(ソース)は己の下半身から発せられているようだ。

だが、ゴルバチョフ君の糞の匂いではない…それとは明らかに異なる青臭い欲望臭が下半身から立ち昇ってきていたのだ!

それは、何故今まで気付かなかったのだろうか?と思えるほどの強烈な臭気であり、たとえ進化した嗅覚を差し置いたとしても、匂いの変化を示すCIAQ値で言うなら100近い数値をマークしていたとしても不思議ではない深刻なレベルだった。


ただ、余市にとっては全く得体の知れない匂いというワケではない。寧ろ嗅ぎ慣れた匂いである。

そのことが、強い臭気とはいえ意識を鈍らせ、認知を遅らせた可能性は否めない。


下半身に意識を集中させると、匂いだけでなく何やら粘ついた嫌な感触も…。


おいおいぃー勘弁してくれよぉ…。


ギコ…ギコ…ギギ…ギ…ィ


ゆっくりとママチャリを止める。


上着をたくし上げて腹を凹ますと、恐る恐るズボンの中のブリーフに手を差し込んでみる。指に纏わり付く新鮮で生温かいこのネバ付いたゾル状物体の正体は…。


ハイッ!確かに確認致しました!宮城伍長、確かに確認致しましたぁ!!!

此の度は我が部下の不注意な発砲により、隊全体に不安材料を生じさせただけでなく、士気までも大きく下げてしまいましたこと、誠に申し訳ありませんでした!!!


って!!!オイオイオイオイィーーー!!!何事っ!?

いったい何時?どうして?どのようにぃ!?

頭が混乱して整理がつかない…否!この場合、亀頭が暴走して精子がつ…ってマジで!!!


「何じゃこりゃぁあっ!!?!」


気付けば、ブリーフから抜き取った指を間近で見つめながら、懐かしの某刑事ドラマの名台詞を県道沿いで大声で叫んでしまっていた。

勿論、その震える指に纏わり付いていたのは、赤い血ではなく白いスペ丸君である!


一旦深呼吸をして記憶を遡る…。


この生温かい感触から察するに、そんなに時間は経っていないだろう。

もしや!さっき凛の刺激的な匂いを嗅いだ時か!?

うーん確かに猛烈に興奮こそしたものの、発砲…もとい!射精するような決定的な感覚はなかった筈だが…。


む…むむむ…!あっ!あの時か!?


巾着の珠を出して握った時、数回に亘って身体が激しく痙攣したような感覚があったが…老婆の珠が我が玉に作用して…!?


…ざわ…ざわ、ざわ…


中腰で糞の処理をしていたナース凛には目と鼻の先であったハズ!!!

そういえば、あの時の凛の妖しく潤った眼光…あの眼差しの意味する所は、鈍い光を放つ青い珠ではなく、臭い匂いを放つオレの玉であったとな!?

身体中に流れる熱い感覚で全く気付かなかったが…まさか!オレはあの時ギンギンに勃起(おっき)していたっていうのかい!?ハニー!!?


さすれば、凛はオレのことを…オレのことをそんな風に見て…獣姦と黄金プレイに恍惚と酔いしれながら、ティッシュで軽く撫でられたくらいで果てるようなボーイだと…そんな風にぃー!?!?!

そんなこととは露知らず、オレときたら得意げにライダーマン方式まで披露して…。


早漏男子で(そうろう)…ぬおっ!嫌過ぎるうぅぅーーーっ!!!



これは俗に言う『不本意なオーガズム』ってやつじゃないのか!?


それとも、凛の隠された能力(シャドウ・アビリティ)がこのタイミングで発動したっていうのか!?

触れた者を数秒で確実にオルガさせてしまうという一子相伝の桃色(ピンク)オーラを纏いし手『オルガ・マスター・グローブ』略して『OMG!』を受け継ぐ伝承者が、よもや同級生の中に潜んでいようとは!オーマイガッ!!!


いやいや、冷静になれ!確かオーガスムはドイツ語ではオルガスムスと言われ…じゃなくて!

何故オレは無意識の内に射精した?

起きているのに夢精したというのか?

そもそもオレは夢精した経験がないのに?


やはりどう考えても珠の仕業以外に思い当たらない。

珠から身体中に急激に流れ込んできたあの熱き波動のようなもので、身体中の筋肉が一瞬、もの凄い速さで弛緩と収縮を繰り返し痙攣した…理由はともかく脳を経由せずに勝手にオルガしたとしか思えない…。


かつて、エクスタシーを味わうことなく射精したことがあっただろうか?

これこそが正真正銘のタンパク質の無駄遣いの極みではあるまいか?


沢山の充実した会話でルンルン気分だった数分前の余市は、今や見る影もなく救いようのない漆黒の淵(アビス)へと転がり落ちていた。笑顔もゆとりも消え失せたのは言うまでもない。



とにかく、このままではマズイ!

ブリーフを履き替えなければ!


だが、どこで!?


こんな県道沿いの歩道で着替えるワケにはいかない!

通行車両から丸見えである!自転車だって来るかもしれない!


どん底の気分のまま周囲をキョロキョロと見渡していると、幸運なことに少し先に県道から降りる細い道を発見した。しかも、教習所の敷地が終わりを告げ、下界には長閑(のどか)な畑が広がっている。


ネバ付いていない方の左手で片手運転をしながら、その分岐ポイントまで進むと、ママチャリを降りて、着替えるに良さげな場所を探す。

本来ならチャリに乗って探すほうが効率的だが、こんなブリーフを履いたままこれ以上ペダルを漕ぎたくはなかったし、片手運転で坂を下るのは危険に思われた。今、転倒でもしたら、色んな液でグチョグチョになるのは免れない!


ガニ股の体勢のままウロウロと周囲を物色しつつ、土手と同じ高さの県道から畑へと下りていく。

すると少し先に、ヒメムカシヨモギやらブタクサなどと思われる比較的背丈の高い雑草が生えたポイントを捕捉した。


チャリからは結構遠ざかってしまうが、見晴らしの良い場所でブリーフなんぞを下ろしたところをタイミング悪く誰かに目撃され、野糞疑惑などかけられては面倒だし、畑の天然肥料にしようとしたなどという言い訳は現代日本に於いては非情に苦しい!

かと言って、正直に言い訳をしたところで、今度は素直に変態扱いされるのがオチだ。


下手をしたらヒステリックなオバサンなどに通報され『この若い男子が私の前でいきなりパンツを擦り下ろして、物欲しそうな表情で近寄って来たんですぅ!』などと事実を歪曲され、公然ワイセツ罪にまで発展する可能性まである。

一生懸命に否定したところで、動かぬ証拠としてこびり付いたスペ丸を指摘されれば何も言い返せそうにない!そんな展開は御免(こうむ)りたい!


悩む時間も気持ち的ゆとりもない中でガニ股競歩を敢行し、素早く移動を終え身を潜めた。

そしてズボンを脱ぎ丁寧に畳むと、土が付かないように草を折るようにして上から置く。


続いて純白のブリーフのゴム部に両親指を掛けると、焦らすように腰を左右にくねくねとくねらせながら、尻を突き出すようにして悩ましく擦り下げていく。そして白くて肌理(きめ)の細かい生尻|頬っぺをプリンッと露呈してみせた。

そこから更に、両脚をピンッと伸ばしたまま、背筋は反りながらも腰をくの字に上体を限界まで反り下げていき、足首からその小さな布を、照れくさそうにクルンッと抜き取ってみせたのだ。


流石にその後は、髪を億劫そうに振りながら上体を起こし、親指の爪を噛みつつ目を細めて振り返って魅せたり、脱ぎたてのパンティを投げたりまではしなかったとはいえ、客のニーズを知り尽くした罪深きストリッパーを彷彿とさせるに充分な身のこなしであったと言えよう…。


しかしながら、この状況下に於いては全くもって余りにも無意味かつ無駄な演出!!!


最後のティッシュ1枚で、その半乾きの指と汚れたギョニソー(魚肉ソーセージ)を拭う…惨めである。

ゴルバチョフ君のせいで圧倒的に紙が足りない…切符で尻穴を拭くレベルである。

そもそも旅に出るというのに、何故、オレはティッシュを多めに持参して来なかったのか!?

旅立ちがあまりにも突然かつドラマチック過ぎて、気が回らなかったからか?


ポロポロと落ちていくティッシュのカスは、散りゆく桜の花弁を彷彿とさせた。奇しくも今は花見真っ盛りの時期でもある。これが…これがオレの今年の花見だとでも言うのか!?


そんな余市の心を知ってか知らずか、意地悪な早朝河川敷の冷たい風は、からかうように無防備な生尻を撫でていく。そう、何度も何度も…。

今はただ、その散りゆくラスト1枚のティッシュのカスに人生の儚さを重ねて、己の惨めさや不甲斐なさを噛みしめることしかできない。


これは悪魔との取引の代償なのか?

青い珠によって得た素晴らしい能力と引き換えに、甘んじて受けねばならぬ、避けては通れぬ恥辱の儀式だとでも言うのかい?

例によって、これもまた羞星を司る者としての試練だというのか?



し!しまったっ!!!


そんな妄想を消し去る痛恨のミスが発覚!


替えのブリーフをママチャリの前カゴの鞄から持ってくるのを失念してしまっていた!

ママチャリを停止してある県道の歩道までは、目算でざっと往復50メートル強と言ったところか…!?


周囲を窺い誰もいないことを確認すると、前屈みの体勢を維持しながら猛ダッシュする!

ギョニソーを左右上下と不規則にブラブラさせながら斜面を軽快に駆け上がって行く!


そして何とか無事にチャリまで辿り着くことに成功。

だが、鞄を開いて替えのブリーフを漁っている猶予はない!


ここは車のびゅんびゅん通る県道なのだ!


周囲には障害物は何もなく背景も皆無なのだ!

これ以上に目立つシチュエーションもそうそうないであろう!

たとえ逆光から見たとしても、ブラつくギョニソーが影絵の如くクッキリと確認されてしまうのは必至!


カゴから鞄ごと取り出し小脇に抱えると、低い姿勢のまま、もと居たポイントへと一目散に帰還を試みる!

…その勇姿は、フルチンであることを除けば、(あたか)もトライ目前のアメフト選手のようである。タッチダウンまで残り20ヤード!鞄を奪おうとタックルしてくる敵選手などはいない。もはや独走態勢だ!


がっ!!!


視界に飛び込んで来たのはまさかの老人!な!な…何故居る!?


お…お前…何故居るううぅぅぅぅ!!!?


全景色がぐにゃりと曲がるような感覚に襲われる。


雑種と思しき犬を連れたニット帽のお洒落な老人が、左舷前方よりこちらに向かって呑気に歩いて来ているジャマイカ!

この時間帯の河川敷の畑道などでは、犬の散歩をする早起き老人が多いだろうことは、容易く推測できた筈なのに!


しかし、後悔しても始まらない!事態はアイ・エヌ・ジー!現在進行形なのだから!


ズボンとブリーフを残した着替えポイントまでは明らかに余市の方が近いとはいえ、鞄からブリーフを漁って履いている時間を考慮すれば危険な賭けと言わざるを得ない…。

かと言って、フルチンのまま県道に戻るのは愚の骨頂!まさに背水の陣…否!珍か!?つまらんっ!!!



ここは一旦、後ろの斜面まで引き返し、草むらにうつ伏せに寝そべった状態で、彼らが過ぎ去るのを息を潜めて待つのがベターだろう。

剥き出しのギョニソーを草の生い茂った地べたに直に接触させるのは気が引けるが、やむを得まい…くぬうぅ…。


朝露に濡れたチクチクとした草葉が、余市のデリケートゾーンを刺激する。ギョニソーが直に植物と触れ合うのは初体験であり、少しドキドキする未知との遭遇でもあった。

これまで箱入り息子ならぬ布の中のムスコとして皮保護もとい過保護に育ててきたのだから無理もない。


植物との接触といえば、よく畳などに擦りつけて自慰をするという話を耳にするが、あれは同じ植物でも職人によって端正に編み込まれた井草(イグサ)であり和室での行為。

ここは和室ではなく(イクサ)場も同様である。井草と戦では比べるまでもなく、余市の境遇の方が何倍も難易度の高いプレイなのだ。


その証拠に、既にギョニソーはミニマムサイズに縮み上がり、高性能小型ドリルのような形状へと素早く変化を遂げていた。

果たしてこの小型ドリルでもって、接触した斜面を掘り進もうなどというクリエイティブな発想が芽生えたのではない。回転機能もなく先端も鋭利とはほど遠い、脱皮直後のザリガニのように柔らかいイミテーションドリルに過ぎないのだから。

当たり前だが縮んだのは自然現象である。

季節はまだ3月それも早朝であり、冷たい草葉に押し付けているのだから仕方がない。


腰を浮かせたいのはやまやまだが、少しでも腰や頭を上げれば、ニット帽のお洒落な老人に勘付かれてしまうだろう。

ここは厳しいが、生尻を天に晒しながらジッと息を呑み老人が過ぎ去るのを待つしかない。



それにしても…。


射精してしまったことは凛のOMGによる不可避な事故だと認めよう。

だが何故、替えのブリーフを持ってから着替えポイントを探さなかったのか!?

しかもその失態に悔やんでおきながら、今度は何故、チャリまで戻る際にズボンを履いて移動するという考えに及ばなかったのか!?

直にズボンを履くのに抵抗があったからか?

確かにそれはあっただろう…だが、今のこのシチュエーションは何だ!?

ズボンどころか、ギョニソーを地球に直に接触させているではないか!!


ダァーメダメダメダメ人間!

全てが裏目ってしまっている!ことごとくダメ人間である!


そんなことを考えている内に、老人と犬が徐々に近付いて来たようだ。

草に頭を伏しているため、目視は叶わないが、進化した嗅覚と聴覚がその存在の場所を教えてくれていた。

そう、ここにきて視覚と嗅覚に続き、聴覚までもが進化していたことに気付いたのである!

だが、そんな感動は後回しである。


老人と犬の動きが、あの着替えポイントに差し掛かったところでピタリと止まってしまったのだ!


もたもたしてねーでサッサと行ってくれよ!頼みゅうぅー!


敵陣地に潜伏しているかのような苛酷なリアルを、冷え切った生尻に感じながら老人と犬に意識を集中する。

しかしどうしたことか、いつまで経っても老人があのポイントから動く気配がない!


いったい何故!?まさか見つかったのか!?

不審に思ってこちらをジッと見つめているのだろうか!?



だが、その恐ろしい懸念は杞憂だったようだ。

鼻息の荒い飼い犬に向かって老人が語りかけている声が聞こえてきたからだ。


「ばっちいからダメだ。早く行くぞ!」


どうやらあのポイントから犬の方がなかなか動こうとしないらしい…。

今になって気付いたのだが、直ぐ上の県道を自転車などが通過すれば、尻を剥き出しにして寝そべっている所が丸見えの筈である!!頭隠して尻隠さずとは、まさにこの状況を言うのではないか!?

老人に神経を全て持って行かれたがために、背後に気を配るのを失念してしまったのである!


数分に亘って老人は犬を説得していたが、その甲斐があったと見えて、駄々を捏ねて拒否っていた犬も漸く歩き始めたようだ。その鼻息や呻き声から、相当名残惜しそうではある。

老人と犬の気配が段々と薄らいでいく。


潜水艦の潜望鏡のように首を伸ばして静かに周囲を確認する。第二第三の老人が現れても不思議ではないのだ!


ヨシッ!


千載一遇のチャンスとばかりに余市は身を起こすと、素早く着替えポイントまで帰還した!



そして知る…。


脱いで草の葉に掛けておいたはずのブリーフが、無残にも泥だらけになって地面に伸び広げられてしまっているということに!!!


白地のブリーフには数か所、オレの物だと主張するかのように雑種犬の足跡が押印されていた…。

しかも、尿でもトッピングされたのか、ビチョビチョである。否!この臭い…間違いなく尿である。余市の目覚めし嗅覚が冷静かつ冷徹な判断を下す。


後でどこかの水道で、ゴルバチョフくんの糞の付着した上着と一緒にスペ丸ブリーフも洗おうと計画していた余市だったが…。


黄金(くそ)だけでなく黄金水(にょう)とスペ丸まで洗い落とせと申すかっ!?ええぃ!!!」


眉を吊り上げ、思わずひとりで叫んでしまった。

3つの有効成分のうち、己が過失と認められるのはスペ丸のみである。納得がいかないのも当然だった。こんなモノに再び足を通すなど、いち大和男児としての矜恃を踏み躙る行為以外の何物でもないわ!

ブリーフを踏み躙られたからといって、男の矜持までもを踏み躙られる謂われはないわ!!


捨て置くことにした。即決である。


ただでさえ青臭い汚パンツが、通りすがりの老人の飼う雑種犬に無残にもビショビショに凌辱されてしまったのだ!

とてもじゃないが、再び履こうなどという気にはなれなかった。触れたくもないわ!汚らわしい!!

こんなことならラスト1枚のティッシュなど使わずに、ブリーフでもって拭っていた方が、何倍も効率的だし有効活用できていたというものだ!

このブリーフとてそれが本望だったに違いない!


それに比べれば些か小さな問題ではあるが、そのギョニソーを拭って華々しく散った最後のティッシュは、何故かどこにも見当たらず消え失せていた。


どうやら敵に喰われてしまったようだ…。


オレの貴重な青きエナジーが、雑種犬のタンパク源として摂取されてしまったのだ。勿論こんなことも初体験である。



形容し難い喪失感と虚脱感を下半身の一点に感じつつボーッとしていたが、このままでは風邪をひいてしまう。ギョニソーに纏わり付いた草葉を払い落とし、新しいブリーフに足を通した。

そして、遥か遠くに聳える山々に目を向けると、今まさに朝陽が昇ろうとしていた。


遠い記憶の中から某熱血ラグビードラマのあの軽快なオープニングサウンドが、フェニックスのように鮮やかに蘇り鳴り響いてくる!そう、あの不良が更生して大活躍する実話を基にしたドラマだ。


ライジングサン!


その眩しい陽の光が、余市の冷えた心と尻を温めてくれているような気がした。

ズボンだけでも無事で良かったと…そんな風にポジティブに捕らえろとでも言うのかい?

やれやれといった表情で陽の光に応える余市。


ブリーフと共に気持ちも新たにし県道まで戻ると、朝日を浴びたサドルに再びライダーマン方式で颯爽と跨る。前回のように格好をつけるためではない。旅を仕切り直す決意のライダーマン方式だ!


かのアインシュタイン先生も言っていたではないか。

『人生とは自転車のようなものだ。倒れないようにするには走り続けねばならない』と。


後ろを振り向くな!剥くのは皮だけと誓うのだ余市!

さっきまでの情けない自分は、小便臭いブリーフと共に今ここで脱ぎ捨てて行け!



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