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オタクが消えた世界よりこんにちは  作者: 神山一起
第1章 オタクの消えた世界
7/15

06話 入山高校の伝統



空に一点の曇りもない、青く晴れた日。


本日は入山高校伝統の毎月1日にある全校集会の日である。

全校集会の日は、

通常1時間、60分授業のところをそれぞれ10分ずつ削り、

最後の時間に全校集会を行う。


全校集会はまず、校歌を歌う。

入山高校の校歌の特徴は、

歌の最後にある「い〜り〜ヤ〜ま高校。」と歌うときの

「いり、ま高校。」の部分は

非常に低く歌わなければいけないのだが、

「ヤ」の部分だけは非常に高く歌わなければいけない。


この「ヤ」の時たいていの人は声がかすれてしまう。

校歌の中で一番重要とされている

「入山高校」という学校名の部分が、一番歌いずらいのである。 本当に校歌ぐらい歌いやすくしてもらいたいものである。



全校集会では校歌を歌った後、次に行われるのは、

部活動やコンクールなど、頑張った生徒に送られる表彰式である。

この時間は生徒達がなしえた、素晴らしい栄光に対して、それを知らない生徒達にも賛辞を送らせようとする稀有な時間である。生で生徒達の頑張りを見たわけでわないのに、リア充達は結果という一点のフィルターによって賛辞を送り合う毒的な時間である。ーあの適当に拍手を送る感じも嫌いなのだが。



そして、全校集会による一番の問題というのが校長のお話である。本当にどういう神経をしているのか分からないが、我が入山高校の校長は、この時間の終わりを告げるチャイムが鳴るまで話を全くもって止めようとしない。

―さらに言えば、その校長の話が面白いのであればまだ救いようがあるのだが、面白みはない、糞の極みである。


校長は58歳にしてひたすらに自分の話ばかりをする。自分がこの間カフェに行って、始めてフラペチーノを飲んだ話や、遊園地に行った話とか、本当に勘弁して欲しい。ー周りのリア充たちでさえ全くもって聞いていないのだから。


生徒達は全校集会において一つの願望をもっている。そうそれは表彰の時間が長引くというものである。校長はあくまでも時間通りに、チャイム通りに話を止めるため表彰の時間が長引くことによって、校長の話の時間を削ることができるのである。


しかし、残念なことに今月は7月なのだ。

7月は全校集会が2回ある。

夏休み前の終業式の時にもう一度全校集会があるのだ。

今月はその時に表彰式というものがある。


だから、本日7月1日の全校集会というのは、

校歌を歌い終わったあとは、全て校長の話に時間が費やされる日なのである。


生徒達も先生達も集中力が散漫となるであろう日である。

そして、俺達にとっては最大のビッグチャンスと言える日らしいのである。ーー絢音乙葉曰く。



ーーーーーーーーーー


「一宮、あんたの右腕あたってるんだけど。

もっと奥に行きなさいよ!!」

「そんなこと言われても、こっちも狭いし。」


俺達は、今体育館の舞台裏に身を潜めている。


「そのまま、そっちに行かないのならセクハラの容疑で訴えるわよ。」


俺達は体育館の舞台裏の垂れ幕の中で一緒に隠れているのだが、


「そんな、むちゃくちゃな・・・」


「望くん。こっち側なら来てもいいですよ……」


そんな優しい言葉を投げかけてくれるのは俺の右側にいるヒナである。―ただ、ヒナもそうは言うものの、 俺が右側によるスペースなんて残されていない。


「別に、ヒナは望くんと触れていても大丈夫ですよ。」

聞こえるか、聞こえないかぐらいの小さな声で、 少しうつむき彼女は言う。ー可愛い。


「じゃあ、ヒナのお言葉に甘えさせてもらいまして。」

俺はヒナの方へと寄ろうとした。


しかし、逆側からの鋭い視線を感じてしまい、

俺の身体は硬直する。


「一宮。なんでヒナの方へ寄ろうとしているのよ。」

絢音は語気を強めに、俺に干渉してくる。


「いや、だってヒナは寄ってきてもいいって

許可してくれたから。」


「ヒナが許可しても、私が許さないわ。」


絢音は本当に己の中にある傲慢さを貫き通す。それに対してどんなに反c論しても彼女が折れることというのはないということが最近分かりだした。―遅すぎ。


「わかった、わかった、

じゃあ絢音が真ん中にいってくれよ。

俺がそっち側に行くからさ。」


「それもダメよ。一宮が真ん中。」


分けが分からないよ。




おそらく全校集会において先生達は舞台裏にはやってこない。

全校集会といっても特に準備するものというのはないし、

先生達も自分達のクラスというものがあるしね。

だから、隠れおいてもばれることというのはないわ。


そういうことで俺と絢音、ヒナは

今現在、体育館の舞台裏にいる。

そして、今しがた全校集会が始まろうとしているのだ。



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