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オタクが消えた世界よりこんにちは  作者: 神山一起
第1章 オタクの消えた世界
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05話 リア充の世界を壊し、オタクの世界をつくる。




「この、崩壊した日本を救うために。」

「たしかに、ヒナの言っていることは当たってるわ。日本はオタク禁止法令によって全く面白みのない、ただのリア充の世界になってしまったもの。」


「でも、なんで天使が、ここに来たの?」



そういうと、彼女は一瞬雰囲気が暗くなったように感じた。なにか物思いに顔を下に向けたような気がした。しかし、彼女はすぐに元気に戻った。なにか意図的に元気に見せるために明るくなったような、そんな気もしたのだが・・・・。



「アニメが大好きだからです!!」


と最大級の笑顔で、その一言だけで、本当に凄くアニメが好きなんだと伝わった。一まだ、少しだけ違和感は残るままだったが。


「私、天界で天使の仕事をしていたんですけど、天界を抜けてきました。天界でも日本のアニメ文化は非常に人気で多くの人が、アニメを視聴し、グッズとかを持ってる人も たくさんいました。」


「おいおい、ちょっと待てよ。天使だとか天界とか、そんなの本当にあるのかよ。」


呆然と聞いていた俺はとうとう我慢できなくなって話に割り込んだ。天使の輪があるとはいえ俺は信じることはできない。



「ほんと、一宮。そういうのいいから。天使、天界があると仮定して話を聞きなさい。」


絢音に直ぐに怒られてしまうのだけど


「絢音さん。一宮くんに怒るの止めてあげてください。一宮くんはなんにも悪いことしてません。全てわたしが悪いんです。」


純粋に素直に謝られるとひたすらに罪悪感を感じてしまう。




「ヒナ。別にいいわよ。こんなやつに謝る必要なんてないわ。 それと私はあんたのことをヒナって呼ぶから、私のことは絢音って呼びなさい。わかった。」


おいっ、俺の話をおいてけぼりにして、なに仲良くなろうとしてるんだよ。話題いきなり変えられると少し寂しく感じるだろうがよ。


「かしこまりました。絢音。」


いや、ちょっと従順すぎるでしょ。天使っぽさは全開だけどさ。

これに乗じて、俺も名前で呼んでくれないかな。


「じゃあ、ヒナ。俺のことも望って、呼び捨てで呼んでくれよ!」

「はっ、なに一宮。私に便乗しようとしてるのよ。」

必然的に絢音の横やりにあってしまう。


「いいじゃんか。俺もヒナと仲良くなりたいんだよ。」

「変態よ!変態!!こんなクソ人間ここにおいてたらヒナに被害が及ぶわ。」


「いや、待て待て。普通に友達として仲良くなりたいんだよ。

なぁ、いいだろ。ヒナ。望って呼んでくれよ。」

少しの間ができた後、俺の目を見つめながら


 「望と呼ぶのは恥ずかしいので・・・。望くんって呼んでいいですか?」


すごく照れくさそうに頬を赤くしながらヒナは尋ねてくる。その姿が可愛いくて可愛いくて仕方がない。抱き締めてあげたくなる。


「ヒナ、気を付けなさい。この男、今、狼の顔になってたわよ。」

その鋭い観察眼を褒め称えたくなるよ。


「狼の顔??」

ヒナはすごく訝しげな表情をする。


「いやいやしてないから。絢音、嘘言うの止めて。」

俺は絢音前と詰め寄り、それ以上なにも言わないように目で訴えかける。それを見ていたヒナが


「お二人は非常に仲がよろしいんですね。」とすごく微笑みを浮かべられている。


「仲良くない!!!」

断固拒否。っと思ったが...。絢音と発言がかぶってしまい、かなり恥ずかしい。



「ふふふっ、本当に面白い人達ですね。羨ましいです。」


「仲良くないから!!!」





その後、ヒナから聞かされた話ではヒナが住んでいる天界では、神様や天使、そして死んだ人達も魂の姿としてそこに存在するらしい。そこではみんな自由に暮らしているらしく、地球から輸入した娯楽を日々楽しんでいるらしいのだ。

 その中でも、特に人気なのが日本のアニメや漫画らしいのだ。日々、感動したり、キュンキュンしたり、熱くさせられたり、多くの人が楽しんでいるらしい。



「でも、5年前に、日本でオタク禁止法が発令されてから、当然のごとく天界にもアニメは供給されなくなりました。天界では日本のように既存のものに対する没収というありませんでした。ただ、当然のごとくその日以降アニメに関するものは入ってこなくなりました。みな悲しそうに悲壮感だけが天界を埋め尽くしていったのです。」


なんとなくその天界の状態というのは想像できる。


「ヒナもアニメが大好きだったので、本当に本当に、辛くて辛くてしかたがありませんでした。ヒナの愛してたアニメ「ツインボーイ」も途中の7話の、とても良いところで終わってしまったんです。ヒナはなんとも言えない悲しさ。なんとも言えない虚無感に襲われました。生きる糧がなくなってしまいました。」


すごくわかる。俺も辛くて辛くて仕方がなかった。


「死んじゃいけない。頑張って生きないといけないと、頑張って自分を鼓舞して生きてたんですけど。3年ぐらいたったある日。ふと、なんのために生きているんだろう、と思ってしまったんです。楽しいことなんて一つもないのに、辛いことばかりなのに、なんで生きてるんだろうと思ってしまったんです。」


わかるよ。本当によく分かる。俺も生きてても全く楽しくなかった。だけど、ルルのために。ルルのために生きてきたんだ。


「私は自殺しようとしました・・・・・・。でも、できませんでした。ツインボーイズのことが頭の中に浮かんできたんです。ツインボーイズはどんなに悲しいことがあっても、どんなに寂しいことがあってもけっして逃げることはありませんでした。いつも

彼らは勇敢に「逃げるな、戦え」という言葉を自らに刻み戦っていました。私はツインボーイズに教えられた意思を死ぬ間際になって思い出したのです。


「逃げるな、戦え。」


ツインボーイズに助けられた私が、今度は私がツインボーイズを助けたいと思ったんです。ーそして、私はこっそり天界を抜け、日本のアニメを、サブカルチャーを復活させるためにここにやってきたんです。」


ヒナの目には熱く燃える強い意志が宿っていた。普段の優しいヒナとは少し違う、絶対に救い出すんだという気持ちが凄くわかった。


「あんた、最高じゃない。」

と言いながら、絢音乙葉はヒナに抱きつきにいった。手を背中の後ろまで回し、強く抱き締めている。ヒナも最初は驚いたような表情を見せたが、絢音を受け入れ抱きしめかえす。ー端から見ている俺からしたら、2人とも美人であるためか、どうしてもイヤらしく見えてしまうのは仕方のないことだと思う。絶対的に仕方のないことだ・・・。


「あっ、ごめん。思わず抱きついちゃった。」


顔を赤くしながら 、ぼそりと呟く。


「わたしの方こそごめんなさい。自然と・・・」

あどけない2人に、可愛さを覚えてしまう。


「でも、私の目に狂いわなかったわ。これで実行できるじゃない。」

絢音は明るげな表情とは裏腹に、いかにもなにかありそうな表情を浮かべる。


 

 「えっ。なにを実行するって。」


そう俺が尋ねると、絢音は不敵な笑みを浮かべ


 「それは、もちろん。テロに決まってるじゃない。」

彼女はすごく元気の良い、歯切れの良い声で言った。びっくりするぐらいに、夢と希望に溢れた素晴らしくテンションが上がっているように俺の耳には聞こえた。



俺には恐怖を感じずにはいられなかった。この女の考えているところは全くもって理解ができない。ーただ、見た目絶対的美少女な彼女だが性格完璧ブスな絢音乙葉が高らかに笑っているにである。おそらく良くないことが起こるのだろう。


「リア充の世界を壊し、オタクの世界を作るわよ。」

たった、3人でどう考えたら、この世界を変えられると思うのかは分からないが、頭がおかしいとしか思えないが俺に拒否権は無さそうである。

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