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オタクが消えた世界よりこんにちは  作者: 神山一起
第1章 オタクの消えた世界
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01話 俺はオタクです。


政府がオタク禁止法令を成立させてから 10年後の日本は 確実に日本はリア充を基本とした世界となっていた。


漫画や小説、アニメが日本からすべて姿を消し。本屋さんにはファッション雑誌や旅行雑誌が基本的に置かれるようになり、漫画家小説家、映画制作、アニメグッズを作っていた人達はすべて仕事を辞めさせられたり、会社が倒産していった。アイドルの仕事をしていた人達も、大抵の人達が辞めさせられ、 解散していった。他にも、将棋や囲碁やゲームまでもオタクの名乗つくものはすべてこの世から消していったのだ。




―― しかし、皮肉なことにも政府は結果をだした。




学校教育でリア充を目指すための教育課程も取り入れられ、対人へのコミュニケーション術や、 恋愛術、ファッションの授業などが新たに設立された。


小学校~大学の間、様々な勉強をするのである。

従来、勉強得意=コミュ障という人達が多かったが、それぞれの授業にはテストがあるため、乗り気出なかった人達も、テストとなるとやる気をだす。 逆に勉強が得意でない人達=ヤンキーも、リア充になるための授業のテストはしっかりと点数をとることができたため授業を楽しめた。これらのリア充になるための授業はだれでも楽しめたため自然と受け入れられてしまった。

 

学校の教育課程でコミュニケーション術、 恋愛術を学ぶことによって、人と話すのが得意な人が増え、人と話すことに喜びを覚える人達が急増し、……より多くの人がリア充へとなっていった。



これは子供に限った話ではない。大人たちにも教育が義務づけられたのである。

会社で、子供達と同様に リア充のための勉強会を取る時間を設けるように政府が義務づけたり、

専業主婦たちには、お昼の時間帯のテレビ番組を見ることを義務づけた。

 もちろん、その時間帯はリア充になるための情報しか流してはいけないという規制のもとに。主婦達の勉強時間と言えよう。



 10年後、当然のごとく友好的にお話をする人が増えたり、 男女問わず多くの人がファッションに気を付かうようになったり、カフェや遊園地が日本に増えた 。


そして、カップルの数というのも急増し、 20代以上の男女の結婚率というのも飛躍的に上がり、


同時に日本の子供の出生率も政府の予定通り上がった。

オタクなんてどこにもいなかった。



サブカルチャーが消えて10年。みんな恋愛や友情にめざめてしまったのだ。すべての人達がリア充になろうとしているのだ。


たった10年で、世界が変わってしまった。



そんな世界に生きはじめて10年、俺は16歳になった。




――――――――――――――――――




俺のクラスでも完全に浸透していた。

クラス40人の、男子20人、女子20人のうち、クラス内で10組のカップルができているのだ。


残りの人達もだいたい 他のクラスの異性などと付き合っている。

 ほとんど全員に彼氏彼女がいる。もちろん恋関係の仲違いも頻繁に起こってしまうのだが。




 「おい、一宮。彼女とうまくやってるか!」

 

休憩時間。こんなたわいもない話しを俺にしてくるのは友達(仮)の 立花勇人だ。

常に意気揚々としている彼は イケメンでサッカー部に所属し、1年生にしてレギュラーを取っている。

また、当然のごとくきれいな彼女がいるのだが、立花の彼女はクラスの中で一番美人で、吹奏楽部でサックスを吹いている佐伯柚葉である。 ――2人はクラスの美男美女カップルとして、みんなからチヤホヤされている。


いわゆる王道的なリア充だ。そんな、立花と俺はなぜか友達なのである。


 「まぁ、まぁ、仲良くやってるかな……。」

 「しっかりと大事にしろよ。」

 


 ――俺、一宮望は、つい2週間前に クラスメイトの木森美津に告白された。


 

 「それにしても、一宮にはもったいないくらい可愛いよな。」

 


 俺は美津と付き合うことにした。

しかし、好きだから付き合ったのではない。あくまでも、みんなに合わせること

――リア充になりすます必要があった。

俺の大好きな人のために……。




―――――――――――――――――――



俺は今もある人をずっと好きでいる。

なぜなのだろう。

その人のことを今でも忘れることはできない。


その人と始めて出会ったのは、

俺が6歳のときだった。

始めて見たその時から

恋してしまっていた。



テレビに映るその人に夢中にされていた。

恋心がなにかということは

その時までは全くもってわかっていなかった。


でも、その人と出会った時に

自然と気づかされてしまった。

俺の初恋は今も続いている。


だけど、今は大好きなその人と会うことは叶わない・・・。





俺は愛している。


「銀河美少女ルル」に出てくるルルを愛している。


 


 しかし、10年前事件が起こった。

――オタク禁止法だ。


世の中から「ルル」が消えた。


警察が家にやってきて、

俺とルルとの愛の記憶をすべて奪い取っていったのだ。

 

「やめろ、やめてくれーーー。」

と叫んだり、暴力も振るった。


警察に対して必死に抵抗したが

鈍器で殴られ気絶させられてしまった。


ぼくが意識を取り戻した時には

この部屋から「ルル」に関する物は

すべてなくなっていた。

――泣いたよ。泣いた。そして、世界を憎んだ。



その後、僕は政府からサブカルチャーを守ろうとする

大規模なオタク団体にも入り、戦った。


 しかし、相手は国家。

強すぎた。一日一日、

仲間が僕の前から姿を消していった。


俺の命はなんとか助かったものの、

団体は消滅し、

俺には国家と戦う方法は残されてはいなかった。

 

自分への猜疑と悲しさ俺を包み込んでいた。

ルルを救うことができなかった哀れさや、

惨めさが毎日俺を襲った。


 

死にたかった。



ルルがいないこの世界にぼくの存在意義なんてなかった。

ぼくは崖から飛び降りて自殺しようとした。






でも、できなかった……。


ルルのことが頭に浮かんだ。

諦めることは簡単なのかもしれない、

だけど、諦めることが俺にはどうしてもできなかった。


また、会いたい。会って好きって言いたい。

――自然と涙がこぼれていた。



ルルをこの腐った世界から救ってみせる。




 


――――――――――――――



だから、木森美津とも付き合うことにした。 リア充が蔓延った世界で 僕の本当の姿が誰にもバレないように。リア充として普通の生活を過ごす。美津と付き合うことで、より周りを騙すために。


「うん、美津を大事にするよ。」

 「 このリア充がーーー!!」


立花は微笑みながら俺の顔面にパンチしてきた。

 

「痛いよー」

 立花とも仲のよいフリをしながら、

俺ははリア充ライフを演じる。








 


 


 

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