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オタクが消えた世界よりこんにちは  作者: 神山一起
第1章 オタクの消えた世界
12/15

11話 天塚ヒナ 過去編①

 


 

 時間がたつにつれ徐々に霧も晴れる。

 何かがこちらに近づいてくるというのもより鮮明にわかる。

 でも、なぜヒナの空間操作が効いてないんだ。


 

 「あんたら、何やっちゃってくれてんのよ。ほんと、なにが純粋な愛をオタクにそそげだよ。マジで意味わかんないんですけど。よくそれで今まで生きてこれたわね。」

  

 「・・・・・・まさか、その声・・・イトなの??」

 「あぁー、ヒナ。久しぶりじゃん。」


 ヒナは突如、身体が震えだした。身体全体が恐怖にさいなまれているような感じにとれる。


 


 「おいっ、ヒナ。大丈夫か。」

 「・・・ヒナ、大丈夫だよ。」

 「でも、お前、身体が・・・・・・。」

 「これくらい・・・大丈夫だよ。」


 身体の震えは止まっていなかった。声も震えつづけている。


煙は完全に晴れ、生徒達はが止まっている。ただ、一人そいつは、こちらに向かって歩いてくる。おそらく、あいつは天使だ。

煌びやかな雪原の世界に降る雪のような真っ白な羽を携えている。白く、どこまでも白く一点の曇りもない、純白。―きれいとしか言い様がない。そして、頭上には黄色く光る輪、天使の輪が浮かんでいる。




「イト・・・。ここに何しにきたの・・・。」

「いやーー、別段、用事があって来たとかではないのよ。」


 

  あきらかに嘘をついている。

 

 

「じゃあ、なんでヒナの方に近づいてくるの?」

「久しぶりにヒナに会えたことがうれしいからに決まってるじ ゃん。もっと近くに行っていいでしょ。」




「ヒナ、あいつは、あなたの友達??。」

 

 あの絢音でさえ、この状況は予測外のことなのだろう。

 

「イトは私と同様に天使です。」

「友達とかではないの?」


 ヒナは、絢音の問いに対して口をつぐむ。

 なにかがあったのだろうか。


 


「いいじゃん、ヒナ。こっちでゆっくり話そうよ。」

 

 イトは1秒たりとも、歩みを止めることなく、こちらへと近づいてくる。


「イトのところに行ってくる。」

「おいっ、ヒナ。」



 ヒナは人間の姿から、天使へと姿を変えた。天使であることは信じていたつもりだ。ただ、実際にヒナが天使に変身するところを目の当たりにすると、驚くしかない。イト同様に、純白の羽を携え、頭上には天使の輪が浮かんでいる。―いつも以上に美しい。

 


「おぉー、来てくれたか、ヒナ。久しぶりにお前の顔を見ることができて嬉しいよ。」


イトはそんな陽気な声を出している。明るい笑顔でヒナを出迎える。



 

 

 


 ――殺気――





 

 イトの純白の羽は黒く染まり、

 目は赤く黒く充血していく。

 天使の輪も赤く、

 その姿は悪魔だ。

 

 イトは瞬時に自分の懐の剣を取り出し、

 ヒナに切りかかる。





 「ヒナっーーーーーーーー!!」



 


 俺の目にヒナは確認できた・・・。

 

 「イト・・・。なんで・・・。」


 「なんでって、私がヒナのことを愛してるからに決まってるじゃない。」

 

「答えになってない!。なんで、ヒナのことを切るの?」 


 ヒナはイトが振りかざした剣の刃先を右手で強く掴って止めていた。ヒナの手からは赤い血がこぼれている。

 

 「それは、ヒナがオタクになったからじゃない。」

 「えっ・・・。」

 「私、嫌いなのよオタク。面白くないもの。時間の無駄よ。」

 

 「そんなことない。」


 「あんな仮想世界になんの意味があるの?私には意味わかんない。 それと、これは私の意思だけではないわ。ミカエル神様のご命令よ。」


 「・・・ミカエル神様?」

 ヒナは深刻な顔で問いかける。



「新しい神様よ。だから、シャル神様は死んだってこと。」

「・・・嘘。シャル様にそんなこと・・・。嘘よ、嘘に決まってるは!」


「事実よ。シャル様は死んだわ。」


「そんなこと・・・あるわけ・・・。」


「シャルは、死んだんだよ!!。」


 「嘘・・・嘘・・・

  嘘・・・嘘・・・

  嘘・・・嘘・・・

  嘘・・・嘘・・・

  嘘・・・嘘・・・

  嘘・・・嘘・・・

  嘘・・・嘘・・・

  嘘・・・嘘・・・

  嘘・・・嘘・・・

  嘘・・・嘘・・・嘘よーーーーー。」

 

ヒナの大きな声が体育館全体に響き渡る。

俺の視界には悪魔に変貌してしまった、ヒナが目に写る。


――――――――――



  私は小さい時から内気であんまり友達もできなかった。

 みんなが遊具で仲良く遊んでいる時もだいたい一人、隅の方の砂場で遊んでた。

 学校に行くようになると、自然といつも図書室に行くようになった。

 

 そこには私が今まで見たことのない

 キラキラした美しい世界やドキドキする世界や時に残酷な醜い世界、

 いろんな世界あらゆるところに広がっていて、

 毎日がわくわくでわくわくで楽しかった。

 ―1人でいることは少し寂しい気もしたけど、それ以上に本を読むことが楽しかった。



 天使の小学校、中学校では仲良くなった子もいた。

 それがイトだった。

 イトは、私のことを親友と呼んでくれるけれど、

 私は一度たりともイトからそんな純粋な気持ちを感じたことはなかった。

 自分が困っている時は私のことを頼ってくるくせに、

 私が困った時は全く助けてくれない。

 その時までは、私もなんとなく友達欲しいとか思っていたけど、

 なんかめんどくさいな。嫌だな。友達とかいらないって思った。

 本を読んでいる時が一番幸せで幸せで仕方がなかった。



 天使の高校に入ってからは、自発的に1人を選ぶようになった。

 愛想も悪いし、面白くもないし、可愛くないし、優しくないし、話すの苦手だし

 私なんかと仲良くしていたらその人の時間の無駄になるとおもった。


 だから高校でもいつも1人だった。

 そして私の居場所はいつも図書館だった。


 

 

 

 そんな日々を過ごしていたある日。


 私は図書館にで、「聖書心中」って本を探していたのですが

 私が聖書を探しているときに、たまたま同じ本を手に取った人がいたんです。

 思わず手が触れてしまい、ドキリとしてしまいました。


 「あわっ、あわっ、ごめんなさい。」

 私の目の前にいた人は大人びた、先生みたいな人でした。

 あまりにいきなりのことだったので、私は慌ててしまい、体制をくずす。


 「大丈夫??」

 私はその人に体重を預けたまま、その人の顔をみる。

 その人はクスリと私に微笑みかけながら、心配してくれた。

 

 「あわっ、あわっ、ごめんなさい。」

 再び慌てふためいてしまう。


 「フフフっ。君面白い子だね。」

 笑われた。私のことを見て笑ってくれている。

 そのことがなんだかすごくうれしくて仕方がなかった。


 「そうです?」

 「うん。面白いよ。普通{聖書心中}なんて誰も読まないもん。中々君変わってるよ。」

 「それを言うならば、あなたも変わってますよ。」

 「なるほど。たしかに、俺も変わってるな。」

 

 2人して思わず、笑いがこぼれてしまう。


 「君、名前はなんていうの?」

 「私、ヒナっていいます。」

 「いい名前。言いやすいよ。」

 「ほんとですか?そんなの生まれて初めて言われました。―あなたの名前は?」

 「俺の名前?。俺の名前はシャル。」

 

 私は思わず、顔が硬直してしまう。


 「シャル・・・。シャルってあの神様のシャルですか。」

 「そう、俺、神様なんだ。」




そのことをきっかけに私達は仲良くなった。

そして、私はシャル様のことが好きになっていった。

その気持ちはひたすらに隠さなくてはいけない。


「シャル様ーー。」

 「おおっ、ヒナ。久しぶりだな。」


 私はシャル様に出会うと自然と元気になってしまう。

 心の底から喜びが涌き出てくる。

 


会いたくなる。顔を見たくなる。

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