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三人の精霊と俺の契約事情  作者: 望月 まーゆ
三人の精霊と悪魔教団の書・魔法武道会編
87/217

アーサーと精霊対ベリアル①


本来、魔法武闘会は西最大の祭典。


国や他国の観客やみんなが一番楽しみにしているひと時だ。


人々は世界中の魔導士たちの真剣勝負に一喜一憂する。




しかしーー今はその時間は訪れないでいた。



観客の人々に映るのは魔法騎士団現役最高の実力者、団長リンスレットの傷つき尚も立ち上がり悪魔族に向かっていく哀れな姿だった。


誰もが予想してなかった展開、目を背けたくなる現実。


リンスレットが立ち上がる度に「もう良いから立ち上がらなくでくれ」と言わんばかりのなんとも言えない悲鳴にも似た声が聞こえてくる。


「ーー私は負けない。 花鳥風月お願いよ、私にチカラを貸して」


その問い答えるように刀は光り輝き出す。


(私の、残された体力と気力で反撃出来るのはもうこの一撃だけ・・・ならいっその事試してみる価値はあるかも)


「茶番は終わりだーー絶望せよ」


ベリアルは魔力を右手に集中させる。


その余りの魔力の凶々しさに恐怖すら感じる程だ。


「くっ、駄目だ。 今のリンちゃんでは防げない。 団長、リンちゃんを助けないとーー」


ランスロットに歩み寄るロビン。


「信じろ! 仮にも私に勝った人物だぞ。

そして、魔法騎士団の団長だ」


ランスロットも気が気ではない様子だ。


今はただ信じるだけだーーーー。



「行くよ花鳥風月! あなたの真のチカラを見せて」


刀を鞘に入れたまま柄を握って間合いをとっているリンスレット。


「消えろーー闇の衝撃波(ダークマター)


ベリアルの右手から闇の魔法が放たれたーーリンスレットはその瞬間を狙っていたように動き出す。


「花鳥風月ーー月、花二段・乱れ雪月花」


リンスレットが鞘から刀を抜いた瞬間に辺りは闇に包まれたーーベリアルの周りにヒラヒラと無数の桜の花びらが舞い落ちる。


「奴はとこだ!? 」


ベリアルの視界には闇だけが広がっている。


桜の花びらが止まったかと思うと桜吹雪がベリアルの視界を奪いその刹那、満月を描くようにリンスレットの円月切りがベリアルに炸裂する。


リンスレットの全ての剣術は相手の視界をつくカウンターだ。


小さな身体を重心を落とし相手の視界から消えるように動く。


死角から常に攻撃するように丹念してきた。


乱れ雪月花も闇に包まれてはいるものの、相手の攻撃に合わせて発動させる。


相手が魔法を放つ瞬間が一番油断していて隙が多いのを分かっているからこそ出来たのだ。


闇が晴れ会場に映し出されたのは倒れたベリアルの姿と仁王立ちで佇む魔法騎士団団長の姿だったーー。


大喝采が沸き起こるーーリンスレットコールが起きこの試合初めて笑顔を見せたリンスレットだった。


「リンちゃんやったな」


ロビンは涙ぐんで鼻水を垂らしている。


「リンスレット・ローエングラム見事だ」


ランスロットは腕を組み頷いていた。


リンスレットはステージを後にしようと歩き出した・・・




その時ーー、



「まだだ、リンスレット!!!」


青年の声が会場に響く。



リンスレットはその声に反応し振り返るとベリアルは無言で微動だにせず起き上がる。


手を天にかざすと白装束のゾロアスターの人間から精気を奪い取る。


奪われた人間は次々と倒れていく。


「やってくれたな小娘。 さすがにダメージを喰らったよ」


首をポキポキと鳴らしながら不敵な笑みを浮かべた。


リンスレットは後退りする。

自分で分かっている・・・現界だと。


「死ね」


ノーモーションからの闇魔法が放たれた。

リンスレットは意表を突かれ回避出来ない。


「しまった、殺られた。今度こそ終わった」


リンスレットは思わず目をつむった。



大地の障壁(アースウォール)


半透明の薄茶色の障壁が闇魔法を防ぐーー。



「何者だキサマ」


四人の光る精霊を従えた金色の瞳の青年がステージに立っていた。


「ーーアーサー・ペンドラゴン」


リンスレットは目の前に現れた青年の名を呼んだ。


「金色の瞳に・・・ペンドラゴン?」


ベリアルはかつて大戦の果てにデーモンズゲートを封鎖された相手の残像が頭を過ぎった。


「リンスレット、悪いけどここからは俺がアイツの相手をさせてもらうよ」


「金色の瞳に・・・複数の精霊、やはりあなたはシーサー様のーー」


リンスレットは目を丸くしてじっとアーサーを見つめていた。


「何者だろうが、私の邪魔をする者は排除する」


ベリアルは魔力を解放したーーその闇の魔力は一般の観客を飲み込んでいく。


観客席にいたミランダとリリスは観客を非難誘導させる。


「こんな邪悪な魔力は久しぶりよ。 この人数の観客を守りながら非難させるなんて不可能よ」


リリスは顔を怖ばせる。


「ーーアーサー何とかしなさいよ!」


観客席からステージ場のアーサーに視線を送ったミランダだった。



★ ★ ★



「やあ、久しぶりだね。 メイザース」


笑顔を見せて旧友に挨拶する青年。


「ずいぶんと余裕ですね。 コロッセオは大変な事態なのだよ」


余裕そうな笑みを見て苦笑いを浮かべている。


「私が手助けするのは簡単だよ。 だけどいつまでも私が健在とは限らない。 私もずいぶん歳をとり過ぎたんだよ。 見た目と体力は変わらないが、 中身は還暦を迎えたお爺さんなんだよ」


ロコッセオを窓から見渡せるアヴァロン城の踊り場にシーサーとメイザースは立っている。


そこから円卓の魔導士たちが必死に悪魔族と戦っているのが見える。


「どこまで計算していたんだ・・・」


その問いに対しシーサーは人聞きの悪いと言わんばかりに両肩をすくめてみせた。


「メイザース君には敵わないよ。 全て偶然だよ」


笑って誤魔化そうとするシーサー。


それを見透かすようにメイザースは続ける。


「ーーではなぜ私にアーサーきゅんを捜索させたのだよ。 こうなる事を最初から分かっていたんだろう。 アーサーきゅんの魔力を奪った時からーー嫌、金色の瞳の後継者と分かった日から・・・」


シーサーは参ったなと顔を歪めてため息を吐いた。


「どこまで知っている? 君は頭が相当キレるのは知っていた。 それは想像か、それとも何か根拠でもあるのか?」


「世界新聞社に知り合いがいて彼からの情報と私なりの憶測である程度調べたのだよ。シーサーあなたの事もアーサーきゅんの事も」


シーサーは笑っているのか、 怒っているのか何とも言えない表情を浮かべてメイザースを見つめた。


メイザースはその表情を見て体に今までに感じたことのない恐怖が走った。


ヤバイーー逃げないと。


しかしーー身体が恐怖で動かない。


「メイザース、何を知っている? どこまで情報を手に入れた」


シーサーはメイザースにゆっくりと顔を近づけてくる・・・


「・・・う、う、」


ガチガチと歯が鳴るーー身体が恐怖で震えて上手く喋れない。


「マーリン!!!」


シーサーが叫ぶと、何もない空間から浮かび上がるようにマーリンが現れた。


「あら? どうしたの。 メイザースが怯えているわよ、可哀想に」


マーリンがしゃがみ込んで哀れな捨て犬でも見つめるようにメイザースを見ている。


「コイツは知り過ぎた。 どこまで知っているか聞き出してくれ。 死なない程度に頼むよ。コイツの魔法の知識は役に立つからな」


「分かったわ。 ただし上手く動くかしら?」


マーリンはケタケタ笑いながら恐怖に震えるメイザースの頭の中に指を貫通させ入れている。


「あっーーあっーーやめて・・・う・・・」









「あなた残念よメイザース。 知り過ぎよ」










「シーサー、消すわ」









「さよなら、あなたに罪はないけどね」








「ーーーーーー」












その後メイザースの姿を見た者は居なかった。





ーー シーサーとマーリンの企みとは ーー


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