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三人の精霊と俺の契約事情  作者: 望月 まーゆ
三人の精霊と悪魔教団の書・魔法武道会編
86/217

限界の向こう側


コロッセオは騒然としているーー会場いっぱいに重苦しい緊張がはりつめる。



超満員の会場に白装束を着たゾロアスター教信者が会場の入り口を封鎖するように押し寄せている。


更に上空には悪魔族が包囲しているーー



そして、ステージ場には傷ついた国民の希望で魔法騎士団長のリンスレット。 その彼女を守ろうとステージに上がったロビン。


二人の前に立ちはだかるのは悪魔族ベリアル。


「リンちゃん俺に任せてよ! 」


ロビンはリンスレットに笑顔を見せて前に立つ。


リンスレットは素直に喜べないでいた。

確かにロビンがあの場面で助けてくれなければ重症もしくは命を落としていたかも知れなかった。


全ては自分のチカラの無さが招いたこと。


打たれ弱さはずっと指摘されてきた・・・


身体が小さい利点を生かした攻撃と瞬発力・攻撃回避能力は魔法騎士団トップだが、その反面の防御力の低さ。ーーリンスレット最大の欠点。


「小僧キサマは容赦せんぞ! 助太刀して手を出したこと後悔するなよ」


「ガキだと思ってナメるなよ」


ベリアルとロビンはステージ中央付近で睨み合い間合いを図っている。


その時二人の間に割って入るような叫び声が響いた。


「リンスレット・ローエングラム君はそれで良いのか? 気が済むように戦ったのか。私には君が満足いく戦いをしたように見えなかった。 後悔はしてないのか」


ランスロットがステージの袖からリンスレットに向け熱い想いを込めて叫ぶ。


その言葉はリンスレットの心のモヤモヤを消し去ったーー目の前のロビンに素直に喜べない理由・・・


それは、まだ戦えるーー全てを出し切れてないから。


リンスレットは立ち上がりロビンの肩を引っ張った。


「えっ? あ・・・リンちゃん」


後ろに押し戻されロビンは唖然として口開けたまま呆然としている。


「ごめんね。 私まだ戦える、今ここで限界を超えてみたいの」


振り返らず目の前の敵から目を逸らさないリンスレット、その目は先程とは違い覚悟が現れている。


「・・・カッコイイとこ見せたかったのにな」


ロビンは余計なことをしちゃったかな?と心の中で少し後悔していたーー。


「小娘、次は命はないと思え、 逃げ出すなら今のうちだ」


「私も本気よ。 今度は油断しないわ」


いつものように重心を落とし刀を構え心を落ち着かせ邪念を捨てる。


これは全て彼女の師匠の教えてだった・・・


魔力が一般の人よりも低く、体も小さい彼女が魔法騎士団になりたい一心で弟子入りして身に付けた剣術。


一年間耐え抜いた末に師匠から譲り受けた妖刀・花鳥風月。 ここで退いては今までの努力も師匠の剣術も負けたことになる。


ランスロットはその事を知っていたからこその激励の一言だったのだ。


周りからは急に現れた天才少女のように言われている彼女は決して天才ではない。


努力に努力を繰り返してやっと手に入れたチカラなのだ。


「余計な手出し、しちゃいましたかね?」


ロビンは苦笑いを浮かべて金色の夜明け団のみんなのところに頭を掻きながら戻って来た。


「そんなことはない。 お前の行動を誰も責めるつもりはないよ。そうでなきゃ銀の星団の誰が飛び出していたかも知れないよ」


ランスロットの言葉を聞き振り返ると反対側のステージ袖には銀の星団の騎士団員がいつでも飛び出せる準備をして待機していた。


「ーーったく、カッコつけやがって」


ポンと頭を先輩騎士団員に叩かれたロビンだった。


「ーーって」


★ ★ ★



薔薇の幻惑(テンプテーション)


コロッセオの周りの悪魔族は薔薇の魅力にメロメロになり倒れていく。


「えーっヤダヤダ、来ないでえ(自動発動魔法)(オートマチック)


ライラの意思とは関係無しに悪魔族を次々に倒して行く。


「ハハハハ! この天才魔導士の魔法で倒されるのだ、有り難いと思えよ」


箒に乗り空中で仰け反って笑っているキルケー。


「チョットお、仰け反らないでよ」


その後ろにメーディアが箒に跨って電撃魔法で空中の悪魔族を次々と倒している。


「ハハハハ! 喰らえ灼熱旋風魔法(ファイヤーストーム)


爆音と灼熱の熱風で悪魔族は次々に黒焦げになるーー


「それにしてもキリがないわねーー」





ーー今から約一時間前。



控え室前のほの暗い廊下に人影が集まっている。


「シーサーはあなた達を試しているのよ。この状況をどのように乗り越えるか・・・」


「ーー何もしなかったら? 」


ヴァニラが最初から手を貸すつもりはないわよという感じだ。



「さあ、会場の人々が悪魔族に襲われても良いかしら? 魔法騎士団だけで守りきれるらしらね?」


「ーー私には関係ないわ。 マーリンあなたのせいでしょ、責任とりなさいよ」


ヴァニラはマーリンに責任を突きつけた。


「私とシーサーなら余裕よ。 この程度の悪魔族なんて一瞬で終わらせられるわよ」


ヴァニラを鼻で笑って罵しるマーリン。


ヴァニラはムッと眉間にシワを寄せマーリンを睨んだ。


「ーー喧嘩売ってるの? あんた達が強いかどうかなんてどうだって良いのよ。 責任を取るかどうか聞いてるのよ」


一歩前に出てマーリンに詰め寄るヴァニラ。


「責任を取って倒しても良いわよ。 ただあなたには出来ないわよね? 大した魔力も魔法も使えずに面倒なことから逃げて、楽な方へ楽な方へ流されていってそんなに負けるのが嫌なの? 」


「ーー負ける? この私が・・・は?馬鹿にしないでよ」


胸を突き上げてくるものがあるのか、ムキになるヴァニラ。


「あら? あなたにこの騒動を止められるかしら落第ま・じょ・さ・ん」


マーリンは口に手を当てクスっと笑って見せた。


「くっ、マーリンあんたーーやってやるわよ! そこで見てなさいよ」


ヴァニラは顔を真っ赤にして目をギラギラさせながらマーリンに背を向けて廊下を奥へと歩き出した。


「ーー単純ねえ」


マーリンは肩をすくめてため息を吐いた。


「ヴァニラ一人では心配だわ、私たちも行くわよキルケー」


「ええ、 あいつの手助けするのかよ」


「大勢の人の命がかかってるのよ。人の好き嫌いなんてこの際関係ないわ」


「ーーまあ、 メーディアがそう言うなら」


ピンク色の髪の毛を人差し指にくるくる巻きながら口を尖らせるキルケー。


「アーサーさん、私たちは外の悪魔族を食い止めるわ。 中の方はあなた達に任せるわよ」


「分かった! 観客席とステージにいるベリアルを討つよ」


メーディアは逃げ出そうとしていたライラを無理矢理引っ張りながら先ほどヴァニラが歩いて行った方にキルケーと一緒に消えて行ったーー。


「アーサー、観客席は私とリリスで何とかするわ。 あなたは精霊たちと一緒に魔法騎士団たちとベリアルを討伐しなさい」


「ーー姉さん」


「ミランダが期待してるって」


「もう、リリスったら・・・」


顔を赤くして照れるミランダ。


「期待に応えられるかわからないけどやれるだけやってみるよ!」


アーサーは精霊たちの方を見ると四人の精霊たちは頷いた。



そして、外の会場へと歩き出したーー。





ーー 悪魔族 対 円卓の魔導士 激突 ーー

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