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三人の精霊と俺の契約事情  作者: 望月 まーゆ
三人の精霊と悪魔教団の書・魔法武道会編
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人間の限界


「あなたが誰だろうと魔法騎士団の団長としてここは勝たせてもらいます!! 」


リンスレットの刀が光輝く。


「ほう。ーーそれは楽しみだ」


ボロボロのローブから見える口元に笑みがこぼれる。


「花鳥風月ーー花の段・時雨桜」


リンスレットの周りを桜がひらひらと桜の花びらが舞い落ちる。


その鮮やかな桃色とリンスレットの美しさに観客やそれを観ている全ての人が息を呑んだ。


桜のゆったりと散りゆく動きに合わせるようにリンスレットは間合いを詰める。


そしてーー、


ゆったりとしたモーションからの急激な緩急をつけ桜吹雪がベイルを襲ったと思った瞬間ーーリンスレットの舞うような乱れ斬りが炸裂した。


「リンスレット選手の美しい連続攻撃にベイル選手立ち往生です」


観客は大喝采、拍手と歓声が湧き上がる。


「なかなかやるが一撃一撃が浅いな」


リンスレットの先ほどの攻撃によりローブが裂けそのベイルの素顔が晒された。


「ーーやはり悪魔族!! 」


リンスレットの顔が引き締まる。


観客からは悲鳴とざわめきが木霊する。


「安心しなさい! 私が倒すーー」


リンスレットが声を張って観客を静めた。


「威勢だけは大したモノだな。 このベリアル様を倒すだと? 笑わせるな小娘」


ベイルことベリアルは指を鳴らしながらリンスレットを睨む。


「大変な事になりました。 Nグループ予選、ベイル選手の正体は何と悪魔族でした! しかしーーリンスレット選手それに屈せず戦う姿勢を変えません!」


「花鳥風月ーー風の段・つむじ風」


リンスレットが一回転しながら無形の斬撃を放す。


ベリアルはその斬撃を簡単に耐えるーー瞬間リンスレットはすぐに次の攻撃態勢に入りベリアルの足元に低い姿勢で入り込む。


ベリアルは回避した態勢からリンスレットに向け闇の波動を打ち込む。


「花鳥風月ーー鳥の段・燕返し」


ベリアルの闇の波動を弾き飛ばしながらベリアルにカウンターの一撃を浴びせた。


「ーーーー!! 」


ベリアルもさすがに驚きの表情を浮かべた。


「さすがは騎士団長って言ったところか動きは確かに良いな。しかしーー剣の斬撃のダメージなど悪魔族の私には効かない・・・ん?」


ベリアルは傷口が塞がらないことに気づく・・・


悪魔族は魔法ダメージ以外ほとんどの傷等は自然にその場で回復するのだ。


しかし、リンスレットの攻撃を受けたベリアルの傷は癒えない。


それもそのはず、なぜならリンスレットの花鳥風月は魔剣ーー魔力を帯びた妖刀だからだ。


「魔剣!?ーー小娘許さんぞ!!」


ベリアルの魔力が高まる。

その凶々しいオーラが会場全体を包み込む。


「凄まじい魔力ですね・・・ですが、私もここで負ける訳にはいかないのです」


リンスレットが正体し刀を構える。


ベリアルが闇の波動をリンスレットに向けて放つ。

リンスレットは素早く避けながらベリアルに向かって行く。


「花鳥風月ーーぐっ、、」


リンスレットが攻撃しようとした瞬間にベリアルの拳がリンスレットの腹に直撃した。


悶絶するリンスレットに更に闇の魔法が追い討ちをかける。


「死ね小娘!!」


闇の魔法がリンスレットに直撃する。


「きゃああああ」


リンスレットの可愛い叫び声が会場に木霊する。


「リンスレット選手ダウーン!!」


観客席からも悲鳴とざわめきが飛び交う。


「リンちゃん!!」


金色の夜明け団のメンバーと試合を観ていたロビンが今にもステージに上がるんではないかと思うほどの勢いで飛び出す。


「ロビン落ち着けってーー」


金色の夜明け団のメンバー二人がかりで必死に抑える。


「離せ、離せ!リンちゃん」


振り切ってステージに上がろうとするロビン。


「ロビン、リンスレット・ローエングラムを負けにしたいのか? 」


ランスロットがロビンの前に立ちはだかった。


「くっ、 けど・・・けどよ」


「安心しろ。 この俺を倒した人物だぞ! 」


ランスロットの視線の先にはフラフラになりながらも立ち上がるリンスレットの姿があっ

た。


「ハア、ハア、負けるわけにはいかないんだ・・・私の負けは魔法騎士団の負けたことになる」


刀を杖のようにし必死に立ち上がるリンスレットの姿に場内からは必死に声援がおくられる。


「遊びも終わりだーーこの人数の人間の精気を集め、円卓の魔導士たちの魔力を頂けばデーモンズゲートを解放出来るだろう」


ベリアルの口元が緩む。

そして、実況席の方へ、ベリアルは視線を移した。


「メイザース、禁呪の情報を教えてもらうぞ! 散々逃げまわってアヴァロンなら安全だと思ったか?」


ベリアルは次は逃さないとばかりにメイザースを睨む。


「出来ればこのまま封印させておいてほしいのだよ。 それと私を捕らえるのは不可能なのだよ! それはあなたも分かっているはずだ」


メイザースは堂々と実況席に座ったまま、マイクをオンにして会場に聞こえるように答えた。


「デカイ口を叩けるのも今のうちだ! そこで待っていろ」


怒りに満ちた表情を浮かべ瀕死のリンスレットの元へと歩き出した。


(ハア、ハア、真面に受けたダメージが大き過ぎた・・・残りの体力で攻撃出来ても数回。

次に攻撃を受けたら即アウト)


リンスレットは立ち上がり刀を鞘に収めいつでも刀を抜けるように準備している。


小さな身体を更に低くしている。


(花鳥風月、花の段・百花繚乱)


リンスレットの身体の周りを虹色のオーラが包み込む。


「悪あがきもお終いだ! すでに我がゾロアスター教の面々も集まって来ているーー人間など容易い生き物そして脆い」


「その人間を見下しているから足元をすくわれるのだ」


リンスレットに攻撃しようとした瞬間にベリアルの足元から無数の光の剣が飛び出しおそいかかる。


そらにーー光速の光の一閃がベリアルを貫く。


「・・・・・・」


静まり返る会場ーー先ほどまでとは別の場所にいるように今は誰も声をあげない。


皆、ベリアルの敗北を期待していた。


「ーー魔力が減ってない」


リンスレットは悔しさを滲ませた。


「魔力が乏しい人間の攻撃など悪魔族には効かないんだよ」


ベリアルは平然としている。

そしてリンスレットに手の平を向け魔力を溜める。


「人間に絶望を与えるーー」


リンスレットに向けて闇の波動を放たれた。



目をつむり覚悟を決めたリンスレット。


頭の中には今までの記憶が走馬灯のように映し出される。


貧しい一般的な家庭で育てられ、借金をしてまで魔法学校に通わせてくれた両親。


そして、妖刀・花鳥風月との運命的な出会い。


魔法学校を卒業してからの花鳥風月を使いこなす為の血の滲むような努力の日々・・・


それ以降の今日までの夢のような毎日が今まさに終わろうとしているーー。


「頑張ったよ私。ーーゴメンねお父さん、お母さん」

























「終わるわけないじゃん! リンちゃんは俺が守っていつも言ってんじゃん」


男の人の声がする、聞き覚えのある声。


恐る恐る目を開けるとそこにはーー、



「リンちゃん。 ヤッホー」


リンスレットの前に立つ青い鎧を身にまとった少年が二本のダガーを持って立っていた。


「なんと、ロビン選手が乱入してしまいました。 リンスレット選手に手助けしてしまいましたのでこれで、リンスレット選手はしっーーーー」


ーー急に騒ぎ出す会場。


白装束をまとったゾロアスター教の信者たちがスタジアムになだれ込む。


会場の人々は更に空を指差す。


リンスレットとロビンも見上げるとそこには悪魔族が包囲していた。


「どうやら大会どころではなさそうですね」


メイザースは実況席から立ち上がり周りを見渡した。


「ハハハハ。 命拾いしたな騎士団長、だが少し寿命が延びただけだ。お前ら人間はここで精気を全て吸い尽くされゾロアスター教の信者になるのだ」



ロビンはリンスレットを守るように前に立つ。


「人間なめるなよ、俺は強いぜ!」


ロビンは笑みを浮かべた。



ーー 大会中止? ゾロアスター教包囲 ーー

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