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三人の精霊と俺の契約事情  作者: 望月 まーゆ
三人の精霊と悪魔教団の書・魔法武道会編
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マーリンの軌跡


マーリンーー天才・大魔導士・生きた伝説など数多くの噂を聞く。 年齢や出身地など知られていないことは多数ある。


シーサーの恋人や嫁、愛人説は囁かれたが本当のことは分からない。


有名な噂話としては「時の砂の魔法」を使い歳をとらずに百年以上生き続けていると言う話だ。


本当の真意は誰にも分からない。



「来るべき日第二次悪魔大戦に備えて作られたのが円卓の魔導士よ」


お馴染みの猫耳フードを着たマーリンがみんなの前に姿を現した。


「ーーマーリン」


ミランダが険しい顔で呟いた・・・


「何人か居ないけど久しぶりね、皆さん」


「あまり会いたくはなかったけどね」


ミランダが挑発するように言い返す。


「円卓の魔導士の件詳しく聞かせてもらえるかしら」


驚きと疑問。二つのスパイラルがリリスの頭の中を廻っている。


「このメンバーの人選はどうやって決められたの? 何で私が選ばれたのです」


ライラはうんざりした顔を浮かべてうなだれる。


「マーリンこのさえ知っていることを全部話してくれない?」


メーディアはつんっと口を尖らせた。


「私も是非聞かせてほしいわ」


控室からヴァニラが顔を出した。


その場に居る全員の視線がマーリンに集まった。

マーリンはひと息ついて観念した様に肩を落とした。


「ーー私とシーサーの出会いから話は始まるわ」


リンスレットの登場で盛り上がる会場の歓声が冷たい廊下に寂しく響いたーー。



★ ★ ★


私はソロモンの血筋を引く者を代々見守りお仕えする魔導士の家系に生まれずっと王家に支えてきた。


ソロモンの血筋や家系は一度滅びることになる。 理由はソロモンの実の息子の裏切りにより帝国に滅ぼされる。


その息子もまた帝国の裏切りにより抹殺される。


そして、ソロモンの血筋は途絶えたように見えたが私の家系が血筋の引く者を逃していたのだ。


それが、ペンドラゴン家でシーサーの父ユーサー・ペンドラゴンである。


ユーサーは魔力こそ並みの魔導士であったが精霊使いとしてはソロモン以上の使い手だった。


滅びかけたこの西の地方に再び国の建設を始めた。


北や南の地方に人を派遣し魔導士を見つけては国に集めクリスタルパレスの土台となる魔法研究の集い秘密結社アルファを設立させた。


ユーサーの死後それを受け継いだのがシーサーだった。


幼くしてシーサーは国の王となった。


この時まだ八歳だったーー。


私は幼いシーサーでは不安を抱いていたがそれはいらぬ不安だった。


ユーサー以上に頭はきれ、理想を現実に変えるチカラと皆をまとめる統率力はまさに王だった。


ソロモン以上の器だ。


秘密結社アルファを更に大きく二十年かけ魔法都市に変えた。


その更に十年後に壊滅した王国を再建設させアヴァロン王国を建国した。


種族や人種を問わない自由王国アヴァロンはいつの日からか西の帝国と呼ばれるようにまで発展した。



アヴァロン王国・クリスタルパレス建設時シーサー三十八歳の時だった。


私はその間ずっとシーサーの側にいながら彼の理想を現実に変える手伝いをしてきた。






しかしーー歴史は繰り返した・・・




その後はみんなも知っての通り、 帝国による悪魔祓いの依頼をシーサーが受諾する。


受諾の理由は今後の西の地方への支援を約束されたからだ。


コロッセオの運営資金等も他国の援助を受けているし魔法学校の運営も同じく支援を受けているのだ。


シーサーは国の未来の為に帝国の依頼を受諾した・・・


世界中より名の知れ渡った魔導士を集めて作ったのが円卓の魔導士だ。


シーサー率いる円卓の魔導士たちは悪魔族最強の使者アーリーマン討伐こそ出来なかったが封印しデーモンズゲートを封鎖に成功した。


しかしーーそのシーサーと円卓の魔導士不在の間にクリスタルパレスは帝国による悪魔狩りに襲われた。


裏切られたシーサーは帝国への戦争を考えていた。


クリスタルパレスの再建設と魔法学校設立、魔法騎士団とコロッセオを設立した。


全ては、帝国への復讐の為ーーーー。



そしてデーモンズゲートの封印が完璧でなくいつか破れてしまう事も分かっていたシーサーは円卓の魔導士意思疎通を図るために円卓の会議を定期的に行うことをした。



それぞれの個性を生かしその分野の卓越した人材を選んだーーそれが今の円卓の魔導士。


来るべき第二次悪魔大戦に備えて・・・



★ ★ ★


「マーリンあなたは一体・・・」


ミランダが困惑の表情を浮かべた。


「私は長く生き過ぎたみたい。 私の家系は私以外の人は皆亡くなったわ。当たり前よね、私はもう百年以上も前からずっと同じ姿で歳を巻き戻しているんだから・・・きっとそのうち罰がくだるわね」


「そこまでしてなぜソロモンの末裔を見届けなきゃならないんだ? 」


アーサーは気の毒、哀れといった暗い顔をした。


「ーー見てみたいのよ。 シーサーの絵描くアヴァロンを、過去に捕らわれている私にとっては決して見ることがない未来を」


アーサーは思った。 彼女は一体どれだけの出逢いと別れを繰り返して来たんだろう。その間に親しい友人や家族、恋人もいたはずだ。 それを見送りまた新しい友人が出来ても自分より先に亡くなってしまう。


幾度の悲しみを乗り越えて今の彼女がいる。


ただ、彼女が納得する未来の結末ってーー、


「シーサーが創る未来は本当にみんなが納得する結果なのか? 帝国への復讐や今の事態も本当に全て納得するモノなのか」


アーサーは疑問と不安しかなかった。


「だからそれを見届けるのよ。絶望しかないのかそれとも歓喜の未来が待っているのかそれを創るのも壊すのもシーサーだけじゃなくあなた達もその一人なのよ」


マーリンは蝋人形ように無表情で淡々と語った。

その無表情な瞳の奥に哀しさを感じたアーサーだった。


リサは何となくだけど嫌な予感がしてチラッとアーサーの顔を覗いた。


リサの予想は的中することになった。


アーサーは未来を俺の手で変えてやると言わんばかりに目をギラギラと輝かせていた。


リサはやれやれと大きく溜め息を吐いたーー。



ーー アヴァロンの明日を変えるのは ーー

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