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三人の精霊と俺の契約事情  作者: 望月 まーゆ
三人の精霊と悪魔教団の書・魔法武道会編
82/217

Iグループ予選


グループ予選もいよいよ大詰めとなってきた。


円卓の魔導士の圧倒的強さだけが際立つ大会となっているが楽しみなのが本戦である。


本戦では円卓の魔導士同士の対決になるので今か今かと待ち望んでいる魔法武道会ファンたち。



「Iグループの予選を開始します! 試合開始」


ドラの音が会場に響き渡った。


「リリスの戦ってるところ見たいことない」


ルナは思い出したかのように呟いた。


「リリスはホーエンハイム出身ではないと聞いたけど彼女はどうしてホーエンハイムに?」


アーサーはずっと気になっていたことを投げかけてみた。


アクセルと出会う以前の彼女の行動や出身地など不明の点が幾つかあったのだが聞いて良いのかどうか分からなかった。


一つ分かっていたのはクリスタルパレスの魔女の生き残りと言うことだけだ。


彼女は母を知っているのか?


「彼女はあまり自分の事を話たがらないけど、リリスはクリスタルパレスの姫よ」


「お姫さまなの」


エルザが目を輝かせ姫という言葉に食いついた。


「彼女の妹が魔女狩り以降行方不明になっているのよ。 彼女はその妹を捜す旅の途中にホーエンハイムに立ち寄ったのが事の始まりだったのよ」


メーディアはステージに立っているリリスを見ながら話を続けた。


「きっと一人では辛くなって幼馴染みのアクセルに相談しにホーエンハイムに立ち寄ったのかな。 その後を悪魔族に付けられていてあの騒動になってしまったのかもーー幼馴染みを失った悲しみ、帰る場所さえない彼女にとっては行方不明の妹が唯一の希望になっているの」


「リリス・・・」


アーサーはリリスのチカラになりたいと思った。


シルフィーがアーサーの側に寄って来て小さな声で囁いた。


「ーーまた面倒なこと考えてません? 俺が妹を捜してやるとか」


アーサーは目を丸くしてシルフィーを見つめた。


やっぱりと、肩を落とし眼鏡を拭きながらまたみんなの所へ戻って行った。



★ ★ ★


Iグループ予選は意外にも苦戦を強いられていた。


残り人数はリリスを含めて六人ーーしかし、五対一の関係だ。


その五人は同じ国出身の魔法騎士で素晴らしく連携が取れているので円卓の魔導士のリリスと言えども簡単には倒せないでいた。


「ーー隙がない。 一瞬だけいいから魔力を練ることが出来ればまとめて倒せるのに」


敵に囲まれて攻撃を避けながら隙を伺うリリス。


「障壁を貼っても良いのだけど、やはり演唱するのに時間がかかる」


五人に囲まれて中央でいろんな方向から魔法が飛び交ってきているのを必死に避けている状況だ。


「リリス選手思わぬ苦戦を強いられています。解説のメイザースさん現状いかがでしょう」


「アルスマグナ王国の魔法騎士の五人の連携が素晴らしいですね。相手に魔法の演唱する時間を与えていないのは良いと思います。しかしーーそれがいつまで続けられるのか?

決定打を考えているのか? がポイントではないのでしょうか」


メイザースは戦況を見つめながら真面目な解説をしたーーすっかり解説が馴染んでいる。


「あまり使わない手だけどーー」


疲労困憊な顔をしている、リリスの体力も消耗してきていた。


アルスマグナ王国の騎士たちの魔力も残り僅かになってきていた。


それでも攻撃の手を止めない。


リリスの攻撃の避け方が先ほどよりもぎこちなく感じる・・・。


実況席で観戦しているメイザースの口元が緩んだ。


「考えましたわね」


メーディアもそれに気づいたようだ。


「私なら空に逃げたんだけどね」


みんなそれが出来れば苦労しないとツッコミを入れたくなった。


リリスは手に地面から腰までの銀色の杖を取り出した。収縮可能の便利な杖のようでおもいっきり振ると伸びるようだ。


その杖を地面に擦りつけるように相手の攻撃を避けている。


「リリス、何か地面に描いているようなーー」


アーサーはリリスの不可解な動きと杖を引きずるような仕草に注目した。


「良く気づいたね。 魔法陣を描いているんだよ。私みたいな天才なら演唱なしで魔法を打てるけどね。普通の人は必ず呪文を唱えて魔力を練る一連の流れを作らないと魔法は発動しないのさ。この試合の様に演唱させてもらえない状態に陥ったら万事休すさ」


苦笑いを浮かべキルケーは両手を上げて見せた。


「ーーただね、唱えて練るだけが魔法じゃない。今からリリス(彼女)がお手本を見せてくれる。時と場合、状況に応じて対応する判断力が戦闘に大切なことだよ」


キルケーはアーサーを横目で見ながらニッコリと笑った。


リリスの体力もすでに限界にきていた。


攻撃を避けては魔法陣を描いての繰り返し、そしてやっと描いた魔法陣。


「ふうーーやっと出来たわよ。弱い者イジメ良くもやってくれたわね。 覚悟しなさいよ」


リリスは描いた魔法陣の中心に立ち地面に銀色の杖を突き刺すーー光輝く円陣と紋様。


たまらず攻撃を繰り出すアルスマグナの騎士達だが魔法陣の光の壁の前に消滅した。


「本物の魔法をお見せしてあげるわよ! 運動不足を解消さけてくれたお礼をさせてもらうわ」


七色に輝き出す光の壁ーーステージ場の空間が歪む。


「 永久凍土の裁きを受けよ 」



リリスが手を天空にかざしたと同時に魔法陣より女神が浮かび上がった。


透き通るような青白い美しい女神が現れたと同時にコロッセオの体感温度が尋常じゃない程に下がった。


ステージ場の床は凍り出した。


女神はゆっくりとアルスマグナ王国の騎士たちにフゥッと息を吹きかけるような仕草をすると五人の騎士たちは一瞬で凍りついた。


女神はその美しい姿とは対象敵に冷たい冷酷な笑みを浮かべて消え去った。


「ーーあ、あ、Iグループ勝者はリリス選手です。 アルスマグナ王国の騎士たちは大丈夫なのでしょうか」


実況のアルキュオネが慌てて心配していた。


「あれが本物の魔法さ。 純血魔女の血筋は女神や神すらも操る。さすがの私も真似は出来ないよ」


キルケーはピンクの髪を人差し指にくるくる巻いて笑っていた。


J、Kグループは順当にライラとミランダが勝利し予選最後はお待ちかねの今大会の主役は登場する。



会場のボルテージが最高潮に達した。


まだ、選手が見えていないのにも関わらずリンスレットコールが沸き起こる。


今までのどの試合よりも凄まじい熱気だ。


会場自体がまさに一つになりリンスレットを応援している。


アーサー達だけでなく他のメンバーもこの異様な盛り上がりに戸惑っているーー。


「何この異様な盛り上がり方は、今までの大会では考えられない」


呆気にとられるメーディア。


「完全アウェイな雰囲気ーー」


キルケーにとっての最大の敵は観客のようだ。


「お待たせしました本日予選最終組Nグループの選手はステージに集まって下さい」



ーー 大会の主役登場 ーー

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