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三人の精霊と俺の契約事情  作者: 望月 まーゆ
三人の精霊と悪魔教団の書・魔法武道会編
76/217

再開


ついに開幕した魔法武道会ーーフリーバトルトーナメントの本戦出場を懸けたバトルロワイアルによるグループ予選。


今まさにBグループの予選が始まろうとしている。


Bグループの注目選手は円卓の魔導士のピンク色の髪に黒いとんがり帽子、黒いローブの女の子ーーキルケーだ。


めったに見れない円卓の魔導士の登場に観客席は超満員ーー遂に立ち見客が出るほどになっている。


「会場ステージの修復の為、しばらくお待ちください」


アナウンスが流れた。ーーステージには複数の魔導士が魔法で壊れた部分を修復していた。


「Bグループ普通に考えればキルケーが圧倒的に有利な状況に見えるわね」


メーディアがBグループのメンバー名が映り出されている会場のビジョンに目をやった。


コロッセオには水晶と同じような原理で巨大なスクリーンのような物があり魔道具の一種で、試合の映像や参加者名簿などいろんな情報を映し出してくれているのだ。


コロッセオの中には食べ物屋さんや売店、グッズ売り場、休憩所などがあり、ありとあらゆる物がお客さんを楽しませている。


「グループ予選で円卓の魔導士同士が当たるようには出来てないのは意図的ですね」


シルフィーがビジョンに目をやりながら呟く。


「アーサー様はDグループでメーディアさんはFグループだね」


リサもビジョンに映し出された映像で確認する。


「円卓の魔導士って全員しらないの」


アーサーにしがみ付き、エルザが首を傾げた。


「円卓の魔導士 十二人のうち二人が消息不明になっている。 一人はクリスチャン・ローゼンクロイツ。もう一人がヨハン・ファウスト彼らの代わりにロビンとリンスレットが新たに円卓の魔導士に選出されたのです」


メーディアは、そう言いながらビジョンを見ながら説明し始めた。


メーディアにつられるようにアーサーと精霊たちもビジョンに映し出された画面を見た。


「先ほど登場したロビン・フット。彼はあの鎧姿から分かる通り金色の夜明け団であり円卓の魔導士です。特異能力の召喚をシーサー様が気に入ったようです。次は皆さんも知っているキルケーです。全属性魔法使いパーフェクトマイスターです。性格に難がありますが・・・」


苦笑いを全員で浮かべたーー。


「Cグループはランスロット。金色の夜明け団の団長でシーサー様の右腕とも言われています。魔法騎士団の象徴ですね。剣術も魔法も全てのレベルが高いです。Eグループは、ヴァニラ。幻惑の魔女という通り名です。魔法で攻撃ってよりも動きを止めると言った方が当てはまると思います。Gグループはマーリン。シーサー様の付き人世話役ね。全てを見透かす千里眼の持ち主と言われているわ。実際どうなのか分からないけど・・・」


「千里眼か・・・」


アーサーは顎に手を当て難しい顔をした。


「円卓の魔導士って凄い人ばかりなのね」


リサはおどおどキョロキョロしている。


「Hグループはアレイスター。あまり関わらない方が良いわよ。危ない術などを研究しているから」


「ーーーー」


唾を飲み込んだ精霊たち。


「Iグループは、彼女ねーー」


メーディアは笑顔でアーサー達の隣を指差した。


アーサー達が指差した方向を見ると綺麗な紫色の髪をした女性が微笑みかけていた。


「あなたたちよね? ホーエンハイムの時に助けてくれたのは」


「あなたは・・・ルナとメルルが言っていた魔女」


「そうよ。この人がリリスよ」


リリスの背後から光輝く精霊が飛び出して来た。


「「「 ルナああ 」」」


三人の精霊は大はしゃぎでルナに飛びついた。


「みんな久しぶり元気だった」


ルナは揉みくちゃにさらながらも笑顔だ。


「元気なの」


「ルナあ、会いたかったよお」


「ルナこそ元気でしたか? ホーエンハイムのその後はいかがです」


三人の精霊たちとルナは感動の再会を喜んでいた。


「アーサーさんにはあの時は大変お世話になりました。 こうしてホーエンハイムが無事なのもアーサーさんがチカラを貸して下さったおかげです。 ありがとうございました」


リリスは丁寧にお辞儀をした。


「いえ、俺なんて何にもーールナやメルル、キャットハンズのメンバーが頑張ってくれたからで・・・」


アーサーは否定しながらしどろもどろな様子だ。


「リリスお久しぶりね」


「メーディアお変わりない様子ね」


精霊たちとは対照的に大人の久しぶり再会の会話だ。


「妹には会えたの? 」


首を横に振るリリス、顔は寂しげだ。


「そお。ーー残念ね、心配よね」


メーディアも寂しげな顔を浮かべた。


対照的に精霊たちは笑顔で騒ぎ立てていた。


「ルナ凄く嬉しそう。 あんな笑顔最近じゃ見たことなかった。 ずっとお友達に会いたがっていたから」


リリスはルナの笑顔を見て胸を撫で下ろしていた。


「アーサーさんにお願いがあります。今日ここにルナを連れてきたのもその為です」


リリスは真剣な眼差しでアーサーを見つめるーーその美しい青い瞳に吸い込まれそうになるアーサー。


「お、俺に頼みってーーーー」


アーサーは視線を逸らした。


「ルナの事です・・・」


真剣な顔をし再び視線をリリスに戻したアーサー。


「ルナがパートナーを無くしてだいぶ経ちます。一年間パートナーと契約しない精霊は消えてしまいます。そうなる前にルナと契約してほしいのです」


リリスはすがるような表情でアーサーを見つめた。


「なぜ俺に? 他にも人間はいるだろ」


リリスは首を横に振った。


「あの子はアクセル以外の人間にはもう心を開くことはないわ。唯一アクセル以外の人間で心を開いたのはアーサーさんだけです」


「ーーけど俺はすでに他の精霊たちと契約を」


金色の瞳(エンペラー アイ)ね」


すかさずメーディアが口を挟んだ。ーー頷くリリス。


「精霊との契約を無視して精霊を支配出来る金色の瞳があれば彼女を助けられると思うんです。ルナを救ってあげて下さい」


アーサーはルナに視線をおくった。


眩しいくらい可愛い笑顔で精霊たちとの会話を楽しんでいた。


彼女たちの心の闇をアーサーは知っている。


ルナとアクセルの事も知っている。


だからこそ、救ってあげたい気持ちもある。


しかしーー彼女自身これからアーサーや精霊たちとずっと共に行動することにどう思っているのだろうか。


かつて愛したパートナーを失った闇を埋めてあげる事なんて出来るのか。


「アーサーさん? 」


リリスがルナを見たまま固まっていたアーサーを呼んだ。


「少し考えさせてほしい。 本人の気持ちもあるだろうから」


「そうですね。 ホーエンハイムで亡くなったパートナーの影をいつまでも追うよりもお友達と毎日楽しく過ごす方が彼女にとって良いと私は思います」


「それは俺も同じです。 この笑顔を守りたいとは思いますよ」


ルナの眩しい笑顔を見つめていると場内アナウンスが流れた。


「お待たせしました! Bグループ予選を開始ます。 選出の皆さんはステージにお集まり下さい」



ーー 予選Bグループ開始 ーー

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