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三人の精霊と俺の契約事情  作者: 望月 まーゆ
三人の精霊と悪魔教団の書・魔法武道会編
73/217

非公開練習


大会を一日前にした非公開の騎士団別の練習がコロッセオで行われていた。


先に練習を行ったのは前回勝利した銀の星団から真っ新しいまだ誰も使用してないステージで練習を行えるのも正騎士団の証なのだ。


与えられた一時間の練習を終えて入れ替えの時間になりコロッセオを後にする銀の星団の前に正面から金色の夜明け団が向かって来た。


「あっ! リンちゃあああん」


金色の夜明け団の中から一人馬鹿デカい声を出し手を振る若者がいる。


「ロビンさん」


顔に似合ったアニメ声を出し小さく手を振るリンスレット。


「相変わらず可愛いよお。 ねえ、今度一緒に食事でも一緒にどお? 」


馴れ馴れしく相手の団長をナンパするロビンと呼ばれた少年。


「え、、えっと嬉しいんですがーー、」


困り果てるリンスレット。

その前に銀の星の団員が立ち塞がる。


「ウチの団長を困らせないで頂きたいな。

それに明日対決する相手にデリカシーが欠けてないか」


ロビンを睨みつける。しかし、ロビンはーー、


「固いねえ。ああ、俺も銀の星団だったら良かったなあ、毎日リンちゃんと一緒にいれるもんな。

銀の星団は幸せだよなあ」


頭の後ろに両手をやって、舌打ちするロビン。


「ロビン悪かったな、むさ苦しい男が団長で」


ランスロットがロビンをチクリと刺すように嫌味を言う。


「嫌、そういう訳では・・・」


苦笑いを浮かべて後ろに退がるロビン。

そんなやり取りを見て微笑むリンスレット。


「ーー後で、アイツには良く言って聞かせるのですまない」


そういうと金色の夜明け団全員が左に避けて道を銀の星団に譲るーーそして尊敬の意を表す魔法騎士団の敬礼のポーズを取る。


魔法騎士団の敬礼は、左手を胸の中心に当て会釈をする。


相手騎士団にこのポーズで道を譲ることも屈辱である。


正騎士団の最後の人が見えなくなるまでこのポーズで会釈し続けなければならないのだ。


「リンちゃん、またね」


ロビンが再び、リンスレットに声をかけると隣に居た金色の夜明け団の先輩騎士に頭を殴られた。


ロビンは、ぺろっと舌を出して痛そうに頭を撫でていた。


銀の星団が立ち去るのを確認すると、敬礼を一斉に止めた。


すると、すかさずランスロットが叫んだ。


「良いか、この屈辱は明日必ず晴らすぞ! 良いな」


金色の夜明け団全員の雄叫びがコロッセオに響いた。当然、銀の星団の耳にも届いていた。


先頭を小さな女の子が率いてアヴァロン城へと歩いている。


リンスレットの耳に金色の夜明け団の雄叫びが届く。彼女の口元が緩む。


「みんな、今の金色の叫び聞こえたか」


足を止めて振り返るリンスレット。

全員が頷いた。


「負け犬の遠吠えだーー忘れろ」


再び正面を向いて歩き出すリンスレット。


「勝つのは私たち銀の星団よ、もう金色の夜明け団が正騎士団になることは今後ないわ。何故なら私が銀の星団にいるからよ」



激突する火花、刻一刻と近づいてくる魔法武道会の開幕ーーーー。


★ ★ ★



「おい! 誰か明日のフリートーナメントの出場選手の名簿を見せてくれ」


シーサーの元に分厚い選手名簿が届いた。


シーサーはしばらく眺めると、思いついたような顔をしてニヤけた。


「追加選手をサプライズでお願いする。すぐ手配を頼む」


「かしこまりました。ーーで、どちらの方を追加なされますか」


城のメイドがシーサーに尋ねる。


「それはーーーー、」



★ ★ ★


「凄い大きな建物だなあ」


アーサーは、コロッセオを見上げて改めてその存在の大きさを感じた。


「明日なのに人がいっぱいなの」


エルザは、本番ではないかという位コロッセオの外に溢れかえる人を不思議そうに見ていた。


「場所取りだよ! みんな少しでも近くの良い席で観戦したいのさ」


キルケーが得意げにドヤ顔で答えた。


「何か凄い騒ぎで人集りが出来てる」


リサが指差す先に確かに人集りが出来ている。


三人の精霊と一緒にアーサーは何となく行ってみる事にした。


人集りの真意を確かめる為に人を掻き分け少しでも前に近づいた。


「うう、痛いの」


「エルザ、潰されちゃうぞ。 みんなも空から前に行きな」


三人の精霊は空から前に移動、アーサーも何とか前の方に移動出来た。

見えた先には可愛い小さな女の子が鎧を着て手を振っている姿が見えた。


リンちゃん、リンスレットなど凄い声援と騒ぎになっていた。


「あんな小さな女の子が闘うのか? 」


アーサーが呟くと、


「何だい兄ちゃん知らないのかい?

リンスレット・ローエングラムって言えば銀の星団の団長で一昨年のフリートーナメント優勝者で怪物みたいに強いんだぜ」


「あんな小さな女の子が・・・」


「とてもそんな感じには見えないだろ? 何しろ可愛いのなんのって」


オッさんはリンスレットにメロメロの様だ。


集まった人達の声援に手を振ったりしてしばらく応対するとリンスレットはアヴァロン城内へと消えて行った。


「凄くかわいい子だったの」


「小さくて目が大きくて、色白でとても戦いなんて出来てるように見えなかった」


エルザとリサは二人で納得しながら喋っている。


「彼女は見た目に騙されてはダメですよ。

とんでもないチカラを持ってますわ」


シルフィーが眼鏡を拭きながら鋭い眼光をリンスレットに送っていた。


「そもそも魔法騎士団の団長に選出される位なんだから強くて当たり前だろ。 何か持ってるモノがあるから団長になれるんだよ」


アーサーの背後から声が聞こえ振り返るとキルケーがいつの間にか腕を組んでニヤついていた。


「見てろよ! チョット魔力を解放してみようか」


キルケーが悪戯っぽく笑いながら魔力を解放させた。

他の人々は平然としているが一部の人間はその禍々しい魔力の変化に気付いたらしい。


リンスレットが凄い勢いで振り返る!


銀の星団のメンバーもリンスレットを囲うように身構える。


「気付く奴は気付くが、リンスレットって奴の感の良さは異常だな。 相当の手練れだよ」


魔力を弱めてまたキルケーは人混みに消えて行った。


リンスレットは、アーサー達を怪しむように見ていたがしばらくして去って行った。


いつの間にか人集りもまばらになりアーサー達もアヴァロン城へと向かうのだったーーーー。



ーー 魔法武道会開催まで僅かーー


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